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怪奇幻想SF短編集『最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』を読んだ

最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選 / ジェフリー・フォード(著)、谷垣暁美 (編集, 翻訳) 魔法は破られるようにできているの。 でも、約束はそうじゃない。 世界幻想文学大賞に7回、 シャーリイ・ジャクスン賞に4回、 MWA賞、ネビュラ賞など数多の…

一族という名の血の呪縛を描く怪奇小説『メキシカン・ゴシック』

メキシカン・ゴシック /シルヴィア・モレノ=ガルシア (著)、青木純子 (訳) 1950年メキシコ。若き女性ノエミは、郊外の屋敷に嫁いだいとこのカタリーナから手紙を受け取る。それには亡霊に苛まれ、助けを求める異様な内容が書かれており……。英国幻想文学大賞…

京極夏彦17年ぶりの百鬼夜行シリーズ最新作『鵺の碑』を読んだ!

鵺の碑 / 京極夏彦 殺人の記憶を持つ娘に惑わされる作家。 消えた三つの他殺体を追う刑事。 妖光に翻弄される学僧。 失踪者を追い求める探偵。 死者の声を聞くために訪れた女。 そして見え隠れする公安の影。 発掘された古文書の鑑定に駆り出された古書肆は…

「アルゼンチンのホラー・プリンセス」ことマリアーナ・エンリケスのホラー短編集『寝煙草の危険』を読んだ

寝煙草の危険 / マリアーナ・エンリケス (著)、宮﨑真紀 (訳) 寝煙草の火で老婆が焼け死ぬ臭いで目覚める夜更け、 庭から現れどこまでも付き纏う腐った赤ん坊の幽霊、 愛するロック・スターの屍肉を貪る少女たち、 死んだはずの虚ろな子供が大量に溢れ返る街…

ゴシック小説を語るならまずこれを読め!/『ゴシック文学神髄』

ゴシック文学神髄/東雅夫(編集) ミステリー小説や怪奇小説や幻想小説の源流となった……それらがまだ未分化だった当時のゴシック文学の代表作の中から、戦前の日夏耿之介訳によるポオの『大鴉』と『アッシャア屋形崩るるの記(アッシャー家の崩壊)』の冒頭部…

ミシェル・ウエルベックの最新長編『滅ぼす』を読んだ

滅ぼす(上)(下) / ミシェル・ウエルベック(著)、野崎歓(訳)、齋藤可津子(訳)、木内尭(訳) 謎の国際テロが多発するなか、2027年フランス大統領選が行われ、経済大臣ブリュノと秘書官ポールはテレビタレントを擁立する。社会の分断と家族の再生。絶望的な世界…

しがないバイト生活してたら「キツイけどいい仕事あるからしてみない?」と誘われて行ってみると異世界で怪獣の世話をする仕事だった!?/SF長編小説『怪獣保護協会』

怪獣保護協会 / ジョン・スコルジー (著), 内田 昌之 (訳) 映画のゴジラは、並行宇宙の地球〈怪獣惑星〉からこちらの地球にやってきた巨大怪獣がモデルだった! ジェイミーはひょんなことから〈怪獣保護協会〉の一員となり、もうひとつの地球でこの怪獣たち…

マヌルネコ本2冊:『マヌルネコ15の秘密』『わたしはかわいいマヌルネコ』

オレは「世界最古の猫」と呼ばれるマヌルネコのことが大好きで、日本国内では数か所しかないマヌルネコの飼われている動物園を回ったり、部屋のカレンダーはマヌルネコだし冷蔵庫のマグネットはマヌルネコだしガラスケースに入っているフィギュアもマヌルネ…

子供たちだけが生き残った地球/劉慈欣のデビュー作『超新星紀元』を読んだ

超新星紀元 /劉慈欣(著)、大森望(訳)、光吉さくら(訳)、ワン チャイ(訳) 1999年末、超新星爆発によって発生した放射線バーストが地球に降り注ぎ、人類に壊滅的な被害をもたらす。一年後に十三歳以上の大人すべてが死にいたることが判明したのだ。“超新星紀…

最近読んだ怪奇幻想不条理小説/『現代の地獄への旅』『青い蛇 (十六の不気味な物語) 』『モーリス・ルヴェル作品集』

現代の地獄への旅/ディーノ・ブッツァーティ (著)、長野 徹 (訳) 現代の地獄への旅 (ブッツァーティ短篇集) 作者:ブッツァーティ,ディーノ 東宣出版 Amazon ミラノ地下鉄の工事現場で見つかった地獄への扉。地獄界の調査に訪れたジャーナリストが見たものは…

『韓国ノワール その激情と成熟』を読んだ

韓国ノワール その激情と成熟 / 西森 路代 (著) 容赦なき暴力と社会への批判的な視点――韓国ノワールの熱い世界! いまや世界で評価される韓国映画、そのなかでも大きな一角を締めているのが「韓国ノワール」とよばれる犯罪映画の一群です。 「香港ノワール…

生きている潜水艦、そして海賊たちのドタバタ物語『恋する潜水艦』

恋する潜水艦 / ピエール・マッコルラン(著)、大野 多加志・他(訳) 陶器製のチューリップ、学のある豚ソーセージ、人工飼料で飼育された大砲、深海でハンマースリコギ魚を写生する画家―奇妙奇天烈な多数のオブジェが登場するなか、超人カール大佐が艦長を務…

スティーヴン・キングの最新長編ホラー『異能機関』を読んだ

異能機関(上)(下) / スティーヴン・キング(作)、白石朗(訳) 異能の少年少女を拉致する謎の機関〈研究所〉。彼らは子供たちの超能力を利用して何を企図しているのか。抜群の頭脳を持つ12歳の少年ルークは知恵をめぐらせ、不穏な施設からの逃亡計画を温めは…

難儀な二人がバディとなって事件解決する北欧ミステリ『闇の牢獄』

闇の牢獄 /ダヴィド・ラーゲルクランツ(著)、吉井智津(訳) ストックホルムで起きた、サッカー審判員撲殺事件。地域警官のミカエラは捜査に参加、尋問のスペシャリストで心理学者のハンス・レッケと出会う。彼は鎮痛剤の依存症だった。独特の心理分析で捜査…

しゃらくせえ意識高い連中が原人に貪り食われる愉快な地獄絵巻小説『モンスター・パニック!』

モンスター・パニック! /マックス・ブルックス(著)、浜野アキオ(訳) 作家マックス・ブルックスのもとに届いた手記。それはレーニア山噴火後、廃墟となって発見されたエココミュニティの住人が残したものだった。未だ原因が明かされていない集落全滅の真相…

映画をさらに超える興奮!映画『ヒート』の続編小説『ヒート2』!

ヒート2 /マイケル・マン(著)、メグ・ガーディナー(著)、熊谷千寿(訳) 1988年シカゴ。 クリスは切れ者のニール率いる強盗団の仲間とメキシコの麻薬カルテルの現金貯蔵庫を狙っている。 一方、殺人課の刑事ハナは高級住宅地を襲う残忍な連続強盗殺人を追って…

サグいぜサグいぜサグくて死ぬぜ!トレホ兄ィの自伝が発売だぜ!/『世界でいちばん殺された男 ダニー・トレホ自伝』

世界でいちばん殺された男 ダニー・トレホ自伝/ ダニー・トレホ(著)、ドナル・ローグ(著)、倉科顕司(訳)、柳下毅一郎(監修) 死ぬ役か悪役では彼の右に出る者はいないと言われる俳優ダニー・トレホ。10代の頃から薬物中毒であった彼はいかにして立ち直り、映…

SF/ファンタジー映画に貢献したコンセプト・アーチストのアートワーク集『The Art Of Ron Cobb コンセプト・アーティスト ロン・コップの仕事』

The Art Of Ron Cobb コンセプト・アーティスト ロン・コップの仕事/ジェイコブ・ジョンストン(著)、高橋ヨシキ(訳) 本書はロン・コッブの仕事を作品(未製作を含む)ごとに紹介するアートワーク集です。初期〜最終デザイン画や設計図、スケッチ、ロゴなど、…

クエンティン・タランティーノ自身による『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ノベライズ小説『その昔、ハリウッドで』

その昔、ハリウッドで /クエンティン・タランティーノ(著)、田口俊樹(訳) 1969年、ハリウッド。 俳優リック・ダルトンは人生の岐路に立っていた。 キャリアが下り坂の彼に大物エージェントがイタリア製作のウェスタン映画に出ないかという話を持ちかけてき…

中国産幽霊屋敷ミステリー小説『幽霊ホテルからの手紙』

幽霊ホテルからの手紙 / 蔡駿(著)、舩山むつみ(訳) ある雨の夜、若い警察官・葉シャオ(イエシャオ)の家を、幼馴染の作家の周旋(ジョウシュエン)が訪ねてくる。 周旋は思いつめた様子で、木の小箱を取り出す。ある夜、バスで隣り合わせた血だらけの美し…

『姫君を喰う話』と『味な旅 舌の旅』/宇能鴻一郎の著作を2冊読んだ

宇能鴻一郎の著作を2冊読んだ 宇能鴻一郎といえばいわゆる「官能小説家」という認識をしていたし、官能小説に興味が無いオレにとってはこの先読むことの無い作家だろうと思っていた。正直に言えば、今からすれば大変失礼だけれども、「単なるエロ小説家」程…

『シン・仮面ライダー デザインワークス』がとても充実していた

シン・仮面ライダー デザインワークス/企画:庵野秀明 監修:石森プロ、東映 本書は、『シン・仮面ライダー』に登場する、仮面ライダーやオーグ等のキャラクター、サイクロン号をはじめ、小道具、衣装、美術セット、タイトルロゴ等主要アイテムのデザイン画…

スタ二スワフ・レム初期作品集『火星からの来訪者』を読んだ

火星からの来訪者:知られざるレム初期作品集 (スタニスワフ・レム・コレクション) /スタニスワフ・レム (著)、沼野充義 (訳)、芝田文乃 (訳)、木原槙子 (訳) 第二次世界大戦でドイツが降伏した頃、アメリカのノースダコタ州とサウスダコタ州の境に隕石らし…

『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』を読んだ。

ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス / フランチェスコ・ヴァルソ(著)、フランチェスカ・T・バルビニ(編)、中村融他 (訳) 隆起するギリシャSFの世界へようこそ。 あなたは生活のために水没した都市に潜り働くひとびとを見る(「ローズウィード」)。風光明媚な…

ジェフ・マコーマックによるボウイ写真集『David Bowie: Rock 'N' Roll With Me』

David Bowie: Rock 'N' Roll With Me / Geoff MacCormack 『David Bowie: Rock 'N' Roll With Me』はデヴィッド・ボウイと終生に渡って親交を続けたジェフ・マコーマックによる写真回顧録だ。それはボウイとマコーマックとの友情の記録と言っていい。二人の…

最近読んだ怪奇幻想不条理小説/『もっと厭な物語』

もっと厭な物語 /文藝春秋 (編集) 最悪の結末、不安な幕切れ、絶望の最終行。文豪・夏目漱石の不吉きわまりない掌編で幕を開ける「後味の悪い小説」アンソロジー。人間の恐布を追究する実験がもたらした凄惨な事件を描くC・バーカー「恐怖の探究」、寝室に…

『チェコSF短編小説集 2 』はビックリするほど奇想に満ちた作品の並ぶアンソロジーだったぞ

チェコSF短編小説集 2 / ヤロスラフ・オルシャ・jr. (編集)、ズデニェク・ランパス (編集)、平野 清美 (訳) ペレストロイカの自由な風のもと、ファンの熱い想いから創設された「カレル・チャペック賞」。アシモフもディックも知らぬまま書かれた、その応募…

村上春樹原作映画『ドライブ・マイ・カー』を観て原作短編集『女のいない男たち』とチェーホフの『ワーニャ伯父さん』を読んだ

ドライブ・マイ・カー (監督:濱口竜介 2021年日本映画) 村上春樹短編小説原作の映画『ドライブ・マイ・カー』を観た。これが思いのほかよくできていて、なおかつ心に刺さるものを感じたので少々駄文を書き散らかしてみたい。また、映画作品を観終わった後…

暗黒の18世紀スウェーデン3部作完結編『1795』

1795 / ニクラス・ナット・オ・ダーグ (著)、ヘレンハルメ美穂(訳) フランス革命の影響は未だ色濃く残り、暴力と奸計が常態化していた1795年のストックホルム。事件を捜索することで立ち直りつつあった戦場帰りの引っ立て屋カルデルと心を病んでいた学生エ…

汚濁と悪逆に満ちた18世紀スウェーデンを駆け抜ける正義/『1794』

1794/ニクラス・ナット・オ・ダーグ (著)、ヘレンハルメ美穂 (訳) フランス革命の影響を受け、陰謀と暴力、貧困と死に満ちた1794年のストックホルム。その前年、カリブ海に浮かぶ植民地サン・バルテルミー島での過酷な日々を終えて故国に帰還した若者エリッ…