動物農場 / ジョージ・オーウェル (著), 佐山栄太郎 (翻訳)
英国の農場で虐げられた動物たちが革命を起こして人間たちを追い払う。その首謀者となったのは豚たちだ。希望に満ちた新しい社会の建設が一歩一歩はじまる……そして。奇才オーウェルの未来ファンタジーの代表作。
ディストピアSF小説『1984年』で有名なジョージ・オーウェルのもう一つの傑作として名高い作品がこの『動物農場』だ。発表は『1984年』刊行の4年前、1945年。そしてこの物語もまた『1984年』と同様、全体主義への警鐘となっている作品なのだ。
物語は農場主に虐げられ続けてきた動物たちの蜂起と革命、動物コミュニズム政権の樹立、平等を掲げたスローガンによる労働と利益の再分配、忍び寄る全体主義の腐敗、警察国家による独裁、圧政、弾圧、そして虐げられたものの新たな反乱が描かれることになる。
この内容から明らかなように、『動物農場』は当時のソビエト連邦の全体主義体制を揶揄した寓話となっている。作品が出版された1945年は第2次世界大戦終結直後であり、ジョージ・オーウェルの暮らすイギリスにとってソ連は同じ戦勝国である連合国側であったが、オーウェルは当時からソ連の社会主義体制に危険性を感じ、その警鐘としてこの物語が書かれたのだという。
「動物農場」の指導者らが「豚」というのも分かり易い皮肉だが、彼らの独裁政権の醜さはもとより、為政者の都合により玉虫色に変わり続けるスローガン、行き過ぎた労働目標を愚直に信じ続け奴隷のように働かされた挙げ句疲弊し廃物となる労働者たち、権力者の走狗である獰猛な犬たちによる恐怖と暴力に満ちた制裁行為、これらが非情な語り口で描かれてゆくのだ。
さらにこの物語では不平分子の粛清と処刑は言うに及ばず、障害を持った動物を死の工場へ売買するさままで描かれ慄然とさせられた。このように、ソ連のみならず人間の歴史の中に幾らでもその例を見出すことが出来る歪んだ社会体制を、動物たちになぞらえた風刺小説がこの作品なのだ。
オーウェルはもともと強烈な社会主義者だったが、スターリン政権下のソ連共産党の欺瞞を目の当たりにし、こうしたスターリニズムや全体主義への反発が、『1984年』やこの『動物農場』のような反ソ・反共的な物語を書かせたのだという。しかしその根底には、政治的党派性にこだわらない、人間性と人間的生き方への強い思いがあったからこそ、これらの物語が生み出されたともいえるのだ。
なおこの作品には同タイトルのアニメ作品が存在しており、そのレヴューも以前書いたことがあったが、今回はそのレビューの文章を一部転用した。




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