
バーバレラ(監督:ロジェ・ヴァディム 1968年フランス・イタリア映画)
ジェーン・フォンダ主演の60年代SFお色気スペースオペラ映画『バーバレラ』、実はちゃんと観たことがなかったのでやっと鑑賞。実のところ映画の体を成さないどうにもダラダラとした内容で、物語的にはあのお下劣パロディ映画『フレッシュ・ゴードン』がまともに見える程の駄作ではあった。とはいえジェーン・フォンダの類稀な美貌とエッチなシーンにはオジサン大いに鼻の下を伸ばしてしまったし、着せ替え人形の如く次々と登場する奇抜な衣装デザインは高く評価していい。また、一周回ってキッチュでビザールなレトロSF世界描写はそれなりに楽しい。あの『2001年宇宙の旅』と同じ公開年というギャップがある意味また可笑しい。
プライベート・ライアン (監督:スティーヴン・スピルバーグ 1998年アメリカ映画)
『プライベート・ライアン』を4KUHDで鑑賞した。映画史に残る、冒頭20分の酸鼻極まるオマハビーチ上陸作戦の印象があまりに強烈なため、その後の展開がどうにも散漫だと以前は感じていた。しかし、今回見返してみて、その評価は一変した。これはむしろ、4話ほどのテレビドラマを1本にまとめたような作品ではないかと思えたのだ。そう思いながら、自分の中で映画に区切りをつけて観てみると、個々のエピソードがそれぞれにエモーショナルで、深く印象に残ることに気づかされる。クライマックスの戦闘シーンも、冒頭に引けを取らないほどの凄まじさだ。
一人の命を救うために小隊の隊員が次々と命を落とすという不条理さも、そもそも戦争そのものが不条理なのだと気づけば腑に落ちる。ライアン救出作戦に駆り出されていなくとも、彼らの無事が保証されていたわけではない。どちらにしたって、戦争とは、悲惨なものなのだということだ。公開後、ソフトで何度も観てきた作品だが、その度に新たな発見がある。そして今回の4KUHDの映像は、驚くほど素晴らしかった。
鶴は翔んでゆく(監督:ミハイル・カラトーゾフ 1957年ソヴィエト映画)
第1次世界大戦に出征した男性と国に残された女性との悲痛なすれ違いを描くロシア映画だ。本作の最大の特徴はセルゲイ・ウルセフスキーによる驚異的な撮影技術だ。手持ちカメラを多用し、登場人物の感情に寄り添うような縦横無尽なカメラワークは、当時としては極めて斬新だったという。オレもネットの切り抜き動画で観たショットからこの映画に興味を持ったほどなのだ。また戦争を英雄的なプロパガンダとしてではなく、一人の女性の個人的な悲劇として描いている点も特筆すべきだろう。ただしすれ違いの物語は今観るとありふれていて退屈に感じてしまったことは否めない。1958年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞、これはソ連映画としては史上初の快挙だったのだとか。
ざつ旅 -That's Journey- (監督:渡邊政治 2025年日本製作)
アニメなど全く観ないオレなのだが、相方さんの勧めで『ざつ旅 -That's Journey-』を一緒に観た。するとこれが実に面白くて、全12話一気に観てしまった。漫画家の卵である女性主人公が、息抜きのつもりで日本全国を適当に・雑に旅するというのがこのお話。なにしろ「雑な旅」なのであらかじめ旅先の見どころやスポットを徹底的に調べるなんてことは全くせず、駅で降りたらなんとなく気ままに歩いてその気ままさを楽しむのだ。
きちんと下調べをしていないから時間や行き先を間違えたり、間に合わなかったりというアクシデントも多発するが、アクシデントそれ自体も旅なんだと楽しむことがこの物語の良さだ。とかくコスパやらタイパやらと喧しいこのご時世に、徹底的に無駄の多いこの旅はなんと贅沢なのだろうと逆に思えてしまう。いや、無駄なのではなく、ただただ予定をこなそうとする旅へのアンチテーゼであり、現地での偶然の発見こそが旅なのではないかとこの物語は教えてくれる。案外旅ってそんなもんだよな。あー旅がしたいな。
レベッカ (監督:アルフレッド・ヒッチコック 1940年アメリカ映画)
主人公は妻を事故で亡くした富豪の後妻として迎え入れられるが、新居となる屋敷は死んだ前妻レベッカの影に覆われ、主人公を次第に追い詰めてゆく……というサイコスリラー。アルフレッド・ヒッチコックが渡米第1作として監督した作品である。原作はイギリス作家ダフネ・デュ・モーリアの同名小説。すでに死んでいるレベッカの”見えない存在感”でじわじわと不気味さを醸し出してゆく映画だが、一番怖いのはレベッカを崇拝していた使用人のダンヴァース婦人だ。聞いてもいないのに死んだレベッカについてあれこれと語り、いつも無表情なうえにいつの間にか後ろに立っているとか存在自体がホラーな女で、タイトルは『レベッカ』ではなくて『ダンヴァース婦人』でもいいぐらいのイヤな存在感を誇示してる。やはり本当に怖いのは生きている人間である(小並感)。
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