『風の谷のナウシカ (宮﨑駿イメージボード全集 1) 』と『天空の城ラピュタ (宮﨑駿イメージボード全集 2)』

風の谷のナウシカ (宮﨑駿イメージボード全集 1) / 宮﨑 駿 (著), スタジオジブリ (編集)

風の谷のナウシカ (宮﨑駿イメージボード全集 1)

「宮さん(宮﨑駿)にとって大事なのはやはり「ナウシカ」なんです。これが歴史です」(本書巻末掲載、鈴木敏夫インタビューより)。雑誌『アニメージュ』の漫画連載として始まり、その後に映画化された「風の谷のナウシカ」(1984年公開)。映画のために描かれたイメージボードやストーリーボード全131枚を、鮮やかに掲載。

この度角川書店から「宮﨑駿イメージボード全集」と名付けられた全集が刊行されることとなった。宮﨑駿が監督・製作に関わったジブリアニメ作品の宮崎自身による全ての手描きイメージボード・ストーリーボードを、作品毎にまとめた全集となる。なにより魅力的なのはその大判の判型(350ミリ×257ミリ)で、原画と同じ大きさ、ないしはそれに近いサイズで掲載されており、原画の美しさと迫力を存分に楽しめるのだ。また、巻末には鈴木敏夫プロデューサーによる作品毎のインタビューが掲載される。第1回配本は『風の谷のナウシカ』と『天空の城ラピュタ』。

風の谷のナウシカ』は高校生の頃、コミックから入ったクチだ。連載していた雑誌アニメージュ自体は購読していなかったが、単行本で出ていた『風の谷のナウシカ』を読んで非常に衝撃を受けた。当時まだジブリは存在しておらず宮﨑駿の名前もきちんと認知していなかったが、後からアニメ『ルパン3世 カリオストロの城』『未来少年コナン』の監督であり、『長靴をはいた猫』や『太陽の王子 ホルスの大冒険』の製作に関わった人物だと知り驚いた。それらのアニメが大のお気に入りだったからである。その後『風の谷のナウシカ』はアニメ化され初公開時に劇場で観たが、コミックの持つ宮崎的な情念の発露が希薄に思えたものの十分な力作であり、今でもお気に入りの1作である。

このイメージボード全集では、冒頭から主人公ナウシカの凛とした立ち姿が惚れ惚れするほど美しく描かれていて目を楽しませる。コミックを読んでいた時から思っていたが、宮崎の絵は一般的な少年漫画グラフィックのセオリーとは別個の部分で描かれており、そこが大きな魅力の一つだった。続いてオープニングタイトル、冒頭のシークエンス、風の谷や腐海、工房都市ベジテなどがイメージボードが掲載される。『ナウシカ』ほどの作品だと見たことのある絵もあったりするが、本書の大きなサイズで見るとまた違った印象を覚える。なにより全体的に美術的クオリティが高く、アニメの設定資料集に留まらない高品質のグラフィックアート作品として楽しむことができる一冊だ。

天空の城ラピュタ (宮﨑駿イメージボード全集 2) / 宮﨑 駿 (著), スタジオジブリ (編集)

天空の城ラピュタ (宮﨑駿イメージボード全集 2)

「やることが決まっていたので迷いがないんです……イメージボード即ストーリーボードでした」(本書巻末掲載、鈴木敏夫インタビューより)。宮﨑駿の小学生の頃の構想が映画に結実した、「天空の城ラピュタ」(1986年公開)。キャラクターや風景、物語を想起させる小道具等、制作に先立ちその世界を描いた全142枚の絵を掲載。

宮﨑駿イメージボード全集第2巻は『天空の城ラピュタ』。第1巻の『風の谷のナウシカ』より若干お値段が高いのは、『ナウシカ』以上のイメージボード数とそれによるページ数の増加があるからだろう。

天空の城ラピュタ』は『ナウシカ』よりも視聴対象年齢を下げ、「子供が十分に楽しめる冒険活劇」を念頭に製作された作品だ。後年先鋭化してゆく宮崎作品の中では気張らずに楽しめるアニメ作品の一つであり、シンプルで分かり易い娯楽作だといえるだろう。宮崎ならではの世界観と大空への夢が描かれ、このあたりも非常に親しみやすい。崩壊した文明の伝説や凶悪な敵の登場は物語に十分な陰影をもたらし、単なる「子供向け」に仕上がっていない部分も特筆に値する。

このイメージボード集では主人公であるバズーとシータを始めとするキャラ設定、世界観を説明するオープニングタイトル、数々の奇怪な航空機、最初の舞台となるスラッグ渓谷やムスカ大佐の城塞、そしてラピュタ城入城までの空の旅が描かれたイメージボードを見ることができる。こちらも『ナウシカ・イメージボード集』同様、豊かなイメージに溢れた美しいグラフィックを楽しむことができる一冊だ。そしてこのイメージボード集を眺めた後に『ラピュタ』が観たくて堪らなくなること必至である。

「宮﨑駿イメージボード全集」はこの後第3巻として『となりのトトロ』が2025年3月に刊行され、以下順次宮崎作品のイメージボード集が刊行されてゆく予定である。