BOOK

『2010年代海外SF傑作選』は結構な粒揃いだったぞ

2010年代海外SF傑作選/橋本輝幸=編 “不在”の生物を論じたミエヴィルの奇想天外なホラ話「“ザ・”」、映像化も話題のケン・リュウによる歴史×スチームパンク「良い狩りを」、グーグル社員を殴った男の肉体に起きていた変化を描くワッツ「内臓感覚」、仮想空…

彼女は復讐の旅に出る/ミステリ『ローン・ガール・ハードボイルド』

ローン・ガール・ハードボイルド / コートニー・サマーズ (著), 高山真由美 (訳) NYのラジオDJマクレイに、ある女性が電話をかけてくる。トレーラーハウスを貸し、祖母代わりとして気にかけていた19歳のセイディが姿を消したというのだ。そのドキュメンタリ…

2020年:今年面白かった本やらコミックやら

今年はたくさん本を読んだのだ 今年はなにしろたくさん本を読んだ。実のところ数で言うと50冊ぐらいで、一日一冊は読んでいる読書家の方から見れば「それで沢山?」と思われるかもしれないが、これまで月2,3冊程度しか読んでいなかったオレにしては相当な数…

追悼 ジョン・ル・カレ/遺作となった『スパイはいまも謀略の地に』を読んだ

スパイはいまも謀略の地に/ジョン・ル・カレ(著)、加賀山 卓朗(訳) 追悼 ジョン・ル・カレ イギリスのスパイ小説作家、ジョン・ル・カレについては、オレはそれほど熱心な読者というほどではないが、一時は大いに心酔し、スマイリー・シリーズを始めとした…

駄菓子みたいなスリラー小説、ディーン・クーンツの『闇の眼』

■闇の眼 / ディーン・クーンツ 雪のシエラ山中でバス転落。搭乗のボーイスカウト全員死亡…ラスベカスの舞台プロデューサー、ティナが一人息子のダニーを亡くしたのは1年前。が、ティナはまだその死を信じられずにいた。それて、傷心の彼女の身辺に次々と不…

第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作『ヴィンダウス・エンジン』を読んだ。

ヴィンダウス・エンジン/十三不塔 ヴィンダウス症――動かないもの一切が見えなくなる未知の疾患。韓国の青年、キム・テフンはこの難病から苦心の末に寛解状態へと持ち直したことで、中国・成都の四川生化学総合研究所から協力を要請される。それはヴィンダウ…

キング親子の放つ超ド級のパニック+ダークファンタジー巨編『眠れる美女たち』

眠れる美女たち(上)(下) / スティーヴン&オーウェン・キング 女子刑務所のある小さな町、ドゥーリング。平穏な田舎町で凶悪事件が発生した。 山間部の麻薬密売所を謎の女が襲撃、殺人を犯したのちに火を放ったのだ。 女はほどなくして逮捕され、拘置のため…

ザミャーチンの書いた古典ディストピア小説『われら』を読んだ

われら /エヴゲーニイ・ザミャーチン いまから約1000年後、地球全土を支配下に収めた“単一国”では、食事から性行為まで、各人の行動はすべて“時間タブレット”により合理的に管理されている。その国家的偉業となる宇宙船“インテグラル”の建造技師д‐503は、古…

屹立する異様なモニュメント『スポメニック 旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物』

■スポメニック 旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物 / ドナルド・ニービル セルビア・クロアチア語やスロヴェニア語で「記念碑」という意味を持つ“スポメニック”。第2次世界大戦中の枢軸国軍による占領の恐怖と、占領軍から勝ち取った勝利を示すため、1960年代…

過ぎ去りし懐かしの未来『真鍋博の世界』

■真鍋博の世界 (愛媛県美術館 監修) この『真鍋博の世界』は愛媛県美術館で2020年10月1日~11月29日まで開催される「真鍋博2020」公式図録兼書籍となる。オレは真鍋氏の物凄いファン、というわけでは全然ないのだが、その表紙絵のどうにも懐かしい感触が気…

スティーヴン・キングの最新短編集『マイル81』『夏の雷鳴』を読んだ

■マイル81 (わるい夢たちのバザールI) 、夏の雷鳴 (わるい夢たちのバザールII) / スティーヴン・キング 廃墟となったパーキングエリアに駐まる1台の車。不審に思って近づいた者たちは――キング流の奇想炸裂の表題作。この世に存在しない作品が読める謎の電…

アントニイ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』を読んだ

■時計じかけのオレンジ / アントニイ・バージェス 近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく…

『古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 新生代編』を読んだ

■古生物のサイズが実感できる! リアルサイズ古生物図鑑 新生代編 / 土屋健 (著)、群馬県立自然史博物館 (監修) 「もしも既に絶滅してしまった古生物が現代に生きていたらどのぐらいのサイズ感なのだろう?」をコンセプトに、親しみやすい図説で好評を博した…

イスラエルSFの芳醇なる収穫、『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』を読んだ。

■シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選 イスラエルと聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。驚くなかれ、「イスラエルという国家は、本質的にサイエンス・フィクションの国」(「イスラエルSFの歴史について」)なのだ。豊穣なるイスラエルSFの世…

「愛」という名の強迫観念/ウラジミール・ナボコフの『ロリータ』を読んだ

■ロリータ / ウラジミール・ナボコフ 「ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ・リー・タ。…」世界文学の最高傑作と呼ばれながら、ここまで誤解多き作品も数少ない。中年男の少女への倒錯した恋を描く恋愛小説であると同時に、ミステリであ…

華文ミステリ『死亡通知書 暗黒者』を読んだ

■死亡通知書 暗黒者 / 周 浩暉 死すべき罪人の名をネットで募り、予告殺人を繰り返す劇場型シリアルキラー〈エウメニデス〉。挑戦状を受け取った刑事・羅飛は事件を食い止めようと奔走するが……果たして命を懸けたゲームの行方は? 本国でシリーズ累計120万…

アシモフの『ファウンデーション』シリーズを読んだ

〔銀河帝国興亡史1〕第一銀河帝国は崩壊しつつあった。だが、その事実を完全に理解している人間は、帝国の生んだ最後の天才科学者のハリ・セルダンただ一人であった! 彼は来たるべき暗黒時代にそなえ、第二帝国樹立のためのファウンデーションを設立したの…

今頃ではあるが小松左京の『日本沈没』を読んだ。

■日本沈没 / 小松左京 鳥島の南東にある無人島が、一夜にして海中に沈んだ。深海潜水艇の操艇責任者の小野寺は、地球物理学の田所博士とともに、近辺の海溝を調査し、海底の異変に気づく。以降、日本各地で地震や火山の噴火が頻発。自殺した友人を京都で弔…

ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』を読んだ

■蠅の王 / ウィリアム・ゴールディング 未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった生活を送るが、しだいに、心に巣食…

アンソロジー『中国・SF・革命』はなんだかなあって感じだったなあ

■中国・SF・革命 / ケン・リュウ他 完売店続出の「文藝」春季号特集を大幅増補の上単行本化。新たにケン・リュウ、郝景芳 (ハオ・ジンファン)の初邦訳作品と柞刈湯葉の書き下ろし「改暦」を収録。 劉慈欣『三体』の世界的大ヒットに代表される 中国SFの現…

久しぶりに村上春樹を読んでオレはモニョッてしまった

■蛍・納屋を焼く・その他の短編 / 村上春樹 先日、韓国映画『バーニング』を観てその冷え冷えとした不気味さに感銘を受け、原作である村上春樹の短編『納屋を焼く』を読んでみることにした。『納屋を焼く』は短編集『蛍・納屋を焼く・その他の短編』に収録…

F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を読んだ。

■グレート・ギャツビー / F・スコット・フィッツジェラルド ニューヨーク郊外の豪壮な邸宅で夜毎開かれる絢爛たるパーティ。シャンパンの泡がきらめき、楽団の演奏に合わせて、着飾った紳士淑女が歌い踊る。主催者のギャツビーは経歴も謎の大富豪で、その心…

中華SF小説の新たなる収穫・『時のきざはし 現代中華SF傑作選』を読んだ

■時のきざはし 現代中華SF傑作選 / 立原透耶・編 本邦における中華SF紹介の第一人者たる立原透耶氏が、数多ある短編作品から十七篇の傑作を厳選。 劉慈欣と並び「中国SF四天王」と称される王晋康、韓松、何夕の三大家をはじめ、台湾SF界の長老・黄海…

天下の奇書と評される夢野久作の『ドグラ・マグラ』を読んだ

■ドグラ・マグラ / 夢野久作 精神医学の未開の領域に挑んで、久作一流のドグマをほしいままに駆使しながら、遺伝と夢中遊行病、唯物化学と精神科学の対峙、ライバル学者の闘争、千年前の伝承など、あまりにもりだくさんの趣向で、かえって読者を五里霧中に…

山尾悠子の幻想小説『飛ぶ孔雀』はオレには向いていなかったらしい

■飛ぶ孔雀 / 山尾悠子 庭園で火を運ぶ娘たちに孔雀は襲いかかり、大蛇うごめく地下世界を男は遍歴する。伝説の幻想作家、待望の連作長編小説。 最近「自分の好きな小説ジャンルはSFでも文学でもなく幻想小説なのではないか」と思ったのである。それはニール…

幻想小説短編集『言葉人形 (ジェフリー・フォード短篇傑作選)』を読んだ

■言葉人形 (ジェフリー・フォード短篇傑作選) / ジェフリー・フォード かつて、野良仕事に駆り出される子どもたちのために用意された架空の友人、言葉人形。それはある恐ろしい出来事から廃れ、今ではこの小さな博物館にのみ名残を留めている―表題作ほか、…

地球侵略SF『三体』シリーズ第2弾『三体Ⅱ 黒暗森林』がモノスゲエ面白かったぞお!

■三体Ⅱ 黒暗森林 (上)(下) / 劉 慈欣 人類に絶望した天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)が宇宙に向けて発信したメッセージは、三つの太陽を持つ異星文明・三体世界に届いた。新天地を求める三体文明は、千隻を超える侵略艦隊を組織し、地球へと送り…

オルダス・ハクスリ―のディストピア小説『すばらしい新世界』は実はユートピア小説だった?

■すばらしい新世界 / オルダス・ハクスリ― すべてを破壊した“九年戦争”の終結後、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別されていた…

今更ながらジョージ・オーウェルの『一九八四年』を読んだ

■一九八四年 / ジョージ・オーウェル “ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美…

バルテュスの画集を購入した

「ああ、この絵、なんだろう、変だなあ、でも好きだなあ」と思っていた画家がいて、でも名前をずっと思い出せなくて、何年間も「あれって誰なんだろう?」と頭の片隅で気にしていた。その名前がこの間、何かの拍子で判明し、また忘れないうちに画集を買って…