BOOK

ミシェル・ウエルベックの『プラットフォーム』を読んだ

プラットフォーム / ミシェル・ウエルベック 男ミシェル、41歳独身。父が殺された。けれど不思議と悲しみが湧かない。女ヴァレリー、28歳。旅行会社のエリート社員。思春期に他人への関心を失ったまま成長した。南国タイで、二人は出逢う―何気ない運命のよ…

ミシェル・ウエルベックの『ランサローテ島』を読んだ

ランサローテ島/ミシェル・ウエルベック カナリア諸島のランサローテ島。地震と火山の噴火によって破壊された荒涼たる大地。赤、黒、薄紫の岩場に生える奇妙な形状のサボテン群。20世紀最後の年の1月、4人の男女がそこで出会う。自由とカルトをめぐる物語。…

ミシェル・ウエルベックの『ある島の可能性』を読んだ

ある島の可能性/ミシェル・ウエルベック 物語は世界の終わりから始まる。喜びも、恐れも、快楽も失った人類は、ネオ・ヒューマンと呼ばれる永遠に生まれ変われる肉体を得た。過去への手がかりは祖先たちが残した人生記。ここに一人の男のそれがある。成功を…

ええええッ!?なんとオレがライターデビュー、なのかッ!?/『ジョージ・A・ロメロの世界 映画史を変えたゾンビという発明』

ジョージ・A・ロメロの世界 映画史を変えたゾンビという発明 映画の歴史を変えた男、ジョージ・A・ロメロとは何者だったのか 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)、『ゾンビ』(1978年)、『死霊のえじき』(1985年)の「ゾンビ」三部作により、映画…

ミシェル・ウエルベックの『闘争領域の拡大』を読んだ

闘争領域の拡大/ミシェル・ウエルベック 闘争領域。それはこの世界、自由という名のもとに繰り広げられる資本主義世界。勝者にとっては快楽と喜びが生まれる天国、敗者にとってはすべて苦しみ、容赦ない攻撃が続くシビアな世界。日々、勝者か敗者かの人生が…

西欧文明の終焉を描くフランス文学の極北:ミシェル・ウエルベック『素粒子』

素粒子/ミシェル・ウエルベック 人類の孤独の極北に揺曳する絶望的な“愛”を描いて重層的なスケールで圧倒的な感銘をよぶ、衝撃の作家ウエルベックの最高傑作。文学青年くずれの国語教師ブリュノ、ノーベル賞クラスの分子生物学者ミシェル―捨てられた異父兄…

『短篇コレクション 2 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)』を読んだ

「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 短編コレクション」は以前第1集を読み、その想像力豊かな粒揃いの作品群に非常に感銘を覚えた。短編と言いつつどれも濃厚で重量級の作品ばかりで、いつもはSF小説ばかり読んでいるオレが「文学スゲエ……」と心打ちのめされ…

『不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選』を読んだ

不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選 / J・J・アダムズ(編)、佐田千織・他(訳) 広大無比の銀河に版図を広げた星間国家というコンセプトは、無数のSF作家の想像力をかき立ててきた。オースン・スコット・カード、ロイス・マクマスター・ビジョルド、G・R・R・マー…

『AKIRA』の世界観を支えたクリエイターの初作品集『高畑聡 アニメーション精密背景原画集』

アニメーション精密背景原画集/高畑聡 本書はアニメーション制作現場における「背景原図」という素材に着目した書籍である。 背景原図とは、背景美術を制作するために必要な前段階の作業にて生まれる素材であり、背景原図の出来の善し悪しがそのまま背景美…

最近読んだSF/『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』『量子魔術師』

こうしてあなたたちは時間戦争に負ける/アマル・エル=モータル&マックス・グラッドストン (著)、山田 和子 (訳) 〔ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/英国SF協会賞受賞〕時空の覇権を争う二大勢力〈エージェンシー〉と〈ガーデン〉の工作員レッドと…

《未来の文学》最終巻『海の鎖』は粒揃いのSF短編集だった

海の鎖/ガードナー・R・ドゾワ他 (著)、伊藤典夫 (訳) 最後の危険なアンソロジーがついに登場! 〈異邦の宇宙船が舞い降りた……何かが起こる、 誰も逃げられない……少年トミーだけは気づいていた〉 破滅SFの傑作として名高い表題作のほか、 日本を代表するSF翻…

京極夏彦の『遠巷説百物語』を読んだ

遠巷説百物語 / 京極夏彦 「遠野は化け物が集まんだ。咄だって、なんぼでも来る」 盛岡藩筆頭家老にして遠野南部家当主の密命を受けた宇夫方祥五郎は、巷に流れる噂話を調べていた。 郷が活気づく一方で、市場に流れる銭が不足し困窮する藩の財政に、祥五郎…

ドン・ウィンズロウ中編集『壊れた世界の者たちよ』 を読んだ

壊れた世界の者たちよ / ドン ウィンズロウ (著)、田口俊樹 (訳) ニューオーリンズ市警最強の麻薬班を率いるジミーは、ある手入れの報復に弟を惨殺され復讐の鬼と化す―。壊れた魂の暴走を描く表題作をはじめ、チンパンジーが銃を手に脱走する「サンディエゴ…

中国SFアンソロジー『中国史SF短篇集-移動迷宮』を読んだ

中国史SF短篇集-移動迷宮 / 大恵 和実 (編・訳)、上原 かおり (訳)、大久保 洋子 (訳)、立原 透耶 (訳)、林 久之 (訳) 孔子は時空を越え、諸葛亮孔明はコーヒーの栽培に成功し、マカートニー伯爵は乾隆帝の迷宮に閉じ込められ、魯迅は故郷でH・G・ウェルズ…

風間賢二の『スティーヴン・キング論集成: アメリカの悪夢と超現実的光景』を読んだ

スティーヴン・キング論集成: アメリカの悪夢と超現実的光景/風間賢二 スティーヴン・キング研究の第一人者、風間賢二によるキング論の集大成! 「関心のあるパートから読んでいただいて一向にかまわないが、冒頭から順番に読み進めることで、キングの作家…

ジョー・R・ランズデールの魔界西部劇『死人街道』を読んだ

死人街道 / ジョー・R・ランズデール (著)、牧原勝志(編集)、植草 昌実 (訳) 神を疑い、呪い、畏れながらも、神の命ずるまま、邪悪なるものを滅ぼすために荒野を旅する無頼の牧師、ジェビダイア・メーサー。彼の行く手を阻むものはその最期に、聖句ではなく…

『三体Ⅲ 死神永生』はやりたい放題の超絶SFだったッ!?

三体Ⅲ 死神永生(上)(下) / 劉 慈欣 (著)、大森 望・ワン チャイ・光吉 さくら・泊 功(訳) 三体文明の太陽系侵略に対抗する切り札「面壁計画」の裏で、極秘の仰天プランが進んでいた。三体艦隊の懐に、人類のスパイを送る――奇想天外なこの「階梯計画」の発…

パンデミックにより滅亡した世界を彷徨う子供たち/長編SF小説『マザーコード』

マザーコード /キャロル・スタイヴァース (著)、金子 浩 (訳) 2049年。アフガニスタンで使用されたバイオ兵器が暴走し、致死的病原体となって世界じゅうに広まった。人類滅亡を目前にして、遺伝子操作により病原体に免疫を持つ子供たちが作りだされ、〈マザ…

静謐なる”無” / 佐藤健寿の『奇界遺産 3』

奇界遺産 3 / 佐藤健寿 『奇界遺産』七年ぶりの集大成・奇妙な世界をめぐる、狂気の旅 2010年に刊行され、現在も版を重ねるヒット作『奇界遺産』シリーズ、7年ぶりの続編。今作では北朝鮮のマスゲーム、アメリカのバーニング・マン、北極の少数民族ネネツ、…

C・J・ボックスの冒険ミステリ『発火点』を読んだ

発火点 / C・J・ボックス (著)、野口 百合子 (翻訳) 猟区管理官ジョー・ピケットの知人、ブッチが失踪。彼の所有地からは2人の男の射殺体が発見されていた。殺害されたのは連邦政府環境保護局の特別捜査官で、ブッチは同局から不可解かつ冷酷な仕打ちを受け…

ウンベルト・エーコの『プラハの墓地』を読んだ

プラハの墓地 / ウンベルト・エーコ (著)、橋本 勝雄 (訳) 知の巨人、ウンベルト・エーコ待望の最新刊。ナチスのホロコーストを招いたと言われている、現在では「偽書」とされる『シオン賢者の議定書』。この文書をめぐる、文書偽造家にして稀代の美食家シ…

『ドクトル・ジバコ』出版の陰に隠された二つの女の物語/『あの本は読まれているか』

あの本は読まれているか / ラーラ・プレスコット(著)、吉澤 康子 (翻訳) 冷戦下のアメリカ。ロシア移民の娘であるイリーナは、CIAにタイピストとして雇われるが、実はスパイの才能を見こまれており、訓練を受けてある特殊作戦に抜擢される。その作戦の目的…

長編SF小説『最終人類』はナントモカントモだった

最終人類 (上)(下) / ザック・ジョーダン(著)、中原 尚哉(訳) ありとあらゆる種族がひしめく広大なネットワーク宇宙。その片隅の軌道ステーションで、ウィドウ類の元殺し屋の母親と暮らすサーヤには秘密があった。宇宙種族にもっとも憎まれ、絶滅させられ…

二つの場所にいた一人の人間。そしてさらに衝撃的な事件が起こる /スティーブン・キング最新長編『アウトサイダー』を読んだ

アウトサイダー(上)(下) / スティーヴン・キング(著)、白石朗(訳) その1:ネタバレなし感想 スティーブン・キングの最新長編『アウトサイダー』を読了した。これは本国では2017年に刊行された『The Outsider』の翻訳版となる。 物語は11歳の少年の惨殺…

中国SF作家・郝景芳によるAIを主題としたSF短編集『人之彼岸』を読んだ

人之彼岸 / 郝 景芳 (著)、立原 透耶 (訳)、浅田 雅美 (訳) 重篤な病で瀕死状態だった母親を入院させた男は、自分の無力さに苛まれていた。だが母親はある日突然、何事もなかったかのように退院してきた。母はまだ病院にいるはず。では今ここにいるのは一体…

ケン・リュウ最新短編集『宇宙の春』を読んだ

宇宙の春 / ケン リュウ (著)、古沢 嘉通 (訳) わたしは秋に生まれた。いま、宇宙は真冬だ――死に絶え、そしてまた生まれ変わる宇宙の変遷を四季の変化に見立てて描いた表題作、3人の女性が力を合わせて悪に立ち向かう、『三国志』を大胆に換骨奪胎したシス…

『この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選』を読んだ

この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選 / J・J・アダムズ (著), 中原 尚哉 (翻訳) 異星種族との戦いの最前線で、いつ果てるともしれない激戦を続けている小隊。そこへ司令官のマクドゥーガル将軍が前線視察にやってきて……(この地獄の片隅に)偵察任務中…

日本でアステカ暗黒神の幻影が跋扈する強烈な犯罪小説『テスカトリポカ』

テスカトリポカ / 佐藤 究 メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向か…

マルク・デュガンの近未来SF『透明性』を読んだ。

透明性/マルク・デュガン (著)、中島 さおり (翻訳) 自国第一主義による地球温暖化は終局を迎え、人類の生存域が北欧地域に限られた2060年代。グーグルによる個人データの完全な可視化は、人間から共感という能力を失わせていた。そんななか、アイスランド…

アンドロイドSF『マーダーボット・ダイアリー』がなかなかに面白かったぞ!!

マーダーボット・ダイアリー/マーサ・ウェルズ (著), 中原 尚哉 (翻訳) かつて重大事件を起こし、その記憶を消されている人型警備ユニットの“弊機”は、ひそかに自らをハックして自由になったが、連続ドラマの視聴を趣味としつつ、保険会社の所有物として業…