BOOK

山尾悠子の幻想小説『飛ぶ孔雀』はオレには向いていなかったらしい

■飛ぶ孔雀 / 山尾悠子 庭園で火を運ぶ娘たちに孔雀は襲いかかり、大蛇うごめく地下世界を男は遍歴する。伝説の幻想作家、待望の連作長編小説。 最近「自分の好きな小説ジャンルはSFでも文学でもなく幻想小説なのではないか」と思ったのである。それはニール…

幻想小説短編集『言葉人形 (ジェフリー・フォード短篇傑作選)』を読んだ

■言葉人形 (ジェフリー・フォード短篇傑作選) / ジェフリー・フォード かつて、野良仕事に駆り出される子どもたちのために用意された架空の友人、言葉人形。それはある恐ろしい出来事から廃れ、今ではこの小さな博物館にのみ名残を留めている―表題作ほか、…

地球侵略SF『三体』シリーズ第2弾『三体Ⅱ 黒暗森林』がモノスゲエ面白かったぞお!

■三体Ⅱ 黒暗森林 (上)(下) / 劉 慈欣 人類に絶望した天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)が宇宙に向けて発信したメッセージは、三つの太陽を持つ異星文明・三体世界に届いた。新天地を求める三体文明は、千隻を超える侵略艦隊を組織し、地球へと送り…

オルダス・ハクスリ―のディストピア小説『すばらしい新世界』は実はユートピア小説だった?

■すばらしい新世界 / オルダス・ハクスリ― すべてを破壊した“九年戦争”の終結後、暴力を排除し、共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成された。人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に管理・区別されていた…

今更ながらジョージ・オーウェルの『一九八四年』を読んだ

■一九八四年 / ジョージ・オーウェル “ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美…

バルテュスの画集を購入した

「ああ、この絵、なんだろう、変だなあ、でも好きだなあ」と思っていた画家がいて、でも名前をずっと思い出せなくて、何年間も「あれって誰なんだろう?」と頭の片隅で気にしていた。その名前がこの間、何かの拍子で判明し、また忘れないうちに画集を買って…

映画『地獄の黙示録』の原案にもなったジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』を読んだ

■闇の奥 / ジョゼフ・コンラッド 船乗りマーロウはかつて、象牙交易で絶大な権力を握る人物クルツを救出するため、アフリカの奥地へ河を遡る旅に出た。募るクルツへの興味、森に潜む黒人たちとの遭遇、底知れぬ力を秘め沈黙する密林。ついに対面したクルツ…

ジョン・ル・カレ・スパイ小説の総括ともいえる長編『スパイたちの遺産』

■スパイたちの遺産/ジョン・ル・カレ スマイリーの愛弟子として幾多の諜報戦を戦ってきたピーター・ギラムは、老齢となり、フランスの片田舎で引退生活を送っていた。ある日、彼は英国情報部から呼び出され、警くべきことを知らされる。冷戦のさなか、“ウィ…

旧い神々と新しい神々との戦い/ニール・ゲイマンの『アメリカン・ゴッズ』が凄まじく素晴らしかった

■アメリカン・ゴッズ(上)(下)/ニール・ゲイマン 出所まであと五日。三年の服役を終え、残りの日数を数えるシャドウ。あと、四日。あと、三日。そして…。その日まで四十八時間と迫ったとき、看守に呼び出されたシャドウはこう告げられた。今朝、愛する妻が自…

ニール・ゲイマンによるダーク・ファンタジー短編集『壊れやすいもの』を読んだ

■壊れやすいもの/ニール・ゲイマン 緑の液体が飛び散る惨殺死体にベイカー街の名探偵が挑む「翠色の習作」、女性が忽然と失踪した、いかがわしく謎めいたサーカスへと誘われる「ミス・フィンチ失踪事件の真相」、ナルニア国物語に登場する美少女のその後に…

筒井康隆短編集『堕地獄仏法/公共伏魔殿』を読んだ

■堕地獄仏法/公共伏魔殿 / 筒井康隆 巨大な権力を握った某国営放送の腐敗と恐怖を描き、一読すれば受信料を払わずにはいられない「公共伏魔殿」、諸事情によりここにはあらすじを書けないもうひとつの表題作「堕地獄仏法」、ロボット記者たちに理路整然と問…

小川哲のSF小説『ゲームの王国』を読んだ。

■ゲームの王国(上)(下) / 小川哲 サロト・サル―後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子、ソリヤ。貧村ロベーブレソンに生まれた、天賦の「識」を持つ神童のムイタック。運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジ…

アンソロジー『どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集』を読んだ

■どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集/柴田元幸=編訳 「奇妙な味」の物語が好きである。江戸川乱歩が作ったと言うこの言葉は、ミステリともホラーともSFともつかない、当然主流文学にも当てはめることの出来ない、どこか不可思議で不条理な物語に与えら…

『カウントダウン・シティ』は世界の終りとハードボイルドなワンダーランドを描くSFミステリだった

■カウントダウン・シティ/ベン・H・ウィンタース 失踪した夫を捜してくれないか―元刑事のパレスは、知人女性にそう頼まれる。小惑星が地球に衝突して人類が壊滅すると予測されている日まで、あと七十七日。社会が崩壊していくなか、人ひとりを捜し出せる可…

冥府魔道を突き進む父娘を描くバイオレンスアクション小説『拳銃使いの娘』

■拳銃使いの娘/ジョーダン・ハーパー 11歳のポリーの前に、刑務所帰りの実の父親ネイトが突然現われた。獄中で凶悪なギャング組織を敵に回したネイトには、妻子ともども処刑命令が出ており、家族を救うため釈放されるや駆けつけたのだった。だが時すでに遅…

バラエティ豊かな中国SFのショウケイス『月の光 現代中国SFアンソロジー』

■月の光 現代中国SFアンソロジー 国家のエネルギー政策に携わる男はある晩、奇妙な電話を受ける。彼のことを詳しく知る電話の男は、人類と地球の絶望的な未来について語り、彼にそれを防ぐ処方箋を提示するが……。『三体』著者である劉慈欣の真骨頂たる表題作…

航空ミステリ『座席ナンバー7Aの恐怖』を読んだ

■座席ナンバー7Aの恐怖/セバスチャン・フィツェック 上空数千メートルを飛ぶ旅客機。そこに乗り込んだ飛行機恐怖症の精神科医クリューガー。彼を見舞ったのは想像を絶する悪夢だった。誘拐された娘を救いたければ、この飛行機を墜落させろ。それが犯人の要…

18世紀末スウェーデンを舞台にした歴史ミステリ『1793』

■1793 / ニクラス ナット・オ・ダーグ 1793年――フランスでは革命の混乱が続き、その年、王妃マリー・アントワネットが処刑された。スウェーデンにもその空気は広がっており、前年1792年には国王グスタフ3世が仮面舞踏会の最中に暗殺されている。無意味な戦…

ヴァラエティに富んだミステリ短編集『ディオゲネス変奏曲』

■ディオゲネス変奏曲 / 陳 浩基 今、新たな潮流として注目を浴びている華文(中国語)ミステリ。その第一人者・陳浩基が持てる才能を遺憾なく発揮したのが、この自選短篇集である。大学生たちが講義室にまぎれこんだ謎の人物「X」の正体を暴くために推理を競…

冷戦下の東ベルリンを舞台にした傑作ミステリ『影の子』

■影の子 / デイヴィッド・ヤング 1975年2月、東ベルリン。東西を隔てる“壁”に接した墓地で少女の死体が発見された。現場に呼び出された刑事警察の女性班長ミュラー中尉は衝撃を受ける。少女の顔面は破壊され、歯もすべて失われていたのだ。これでは身元の調…

今更ながらスティーヴン・キングの『ミザリー』を読んだ

■ミザリー/スティーヴン・キング 雪道の自動車事故で半身不随になった流行作家のポール・シェルダン。元看護師の愛読者、アニーに助けられて一安心と思いきや、彼女に監禁され、自分ひとりのために作品を書けと脅迫される―。キング自身の体験に根ざす“ファ…

この怪奇で、不思議に満ちた人生/エリック・マコーマックの『雲』を読んだ

■雲/エリック・マコーマック 出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私は…

最近読んだミステリ/『ブルーバード、ブルーバード』『流れは、いつか海へと』 

■ブルーバード、ブルーバード / アッティカ・ロック テキサス州のハイウェイ沿いの田舎町で、ふたつの死体があいついで発見された。都会から訪れていた黒人男性弁護士と、地元の白人女性の遺体だ。停職処分中の黒人テキサス・レンジャー、ダレンは、FBIに所…

最近読んだミステリ /『熊の皮』『カルカッタの殺人』

■熊の皮/ジェイムズ・A・マクラフリン アパラチア山脈の麓で自然保護管理の職を得たライスは、故郷から遠く離れ、穏やかな日々を送っていた。ところが、管理区域で胆嚢を切り取られた熊の死体が発見される。熊の内臓は闇市場で高値で取り引きされている。ラ…

非情なるグローバル社会と経済格差の行方を描く傑作サイバーパンクSF長編『荒潮』

■荒潮/陳 楸帆(チェン・チウファン) 彼女の名前は米米(ミーミー)。中国南東部のシリコン島で日々、電子ゴミから資源を探し出して暮らす最下層市民“ゴミ人"だ。彼女たちは昼夜なく厳しい労働を強いられ、稼ぎは何代にもわたって島を支配してきた羅、陳、林…

少年とヴァンパイア少女との禁じられた恋を描くホラー小説『MORSE モールス』

■MORSE モールス(上)(下)/ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 母親と二人暮らしのオスカルは、学校では同級生からいじめられ、親しい友達もいない12歳の孤独な少年。ある日、隣にエリという名の美しい少女が引っ越してきて、二人は次第に友情を育んでいく…

最近読んだSF/『となりのヨンヒさん』『茶匠と探偵』

■となりのヨンヒさん/チョン・ソヨン もしも隣人が異星人だったら? もしも並行世界を行き来できたら? もしも私の好きなあの子が、未知のウイルスに侵されてしまったら……? 切なさと温かさ、不可思議と宇宙への憧れを詰め込んだ、韓国SF短編集全15編。 同性愛…

最近読んだSF/『ビット・プレイヤー』『パラドックス・メン』

■ビット・プレイヤー/グレッグ・イーガン 彼女は洞穴の中で目ざめた。外に見えるのは空、下から照りつけるのは日光。この奇妙な世界は何なのか?――未知の世界のありようを考察する表題作、死んだ名脚本家の記憶を持つアンドロイドが自らのアイデンティティを…

倦み疲れた生の果ての不安と悲哀/ホラー短編集『ボーダー 二つの世界』

■ボーダー 二つの世界/ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 罪や不安を嗅ぎ取る能力を活かしスウェーデンの税関で働くティーナはある日、虫の孵化器を持った不思議な男と出会う。彼の秘密が明らかになるとき、ティーナが出会う新しい世界とは……映画原作であ…

全長1マイルに渡る死せる竜の物語/『タボリンの鱗』

■タボリンの鱗/ルーシャス・シェパード 数千年前に魔法使いとの戦いに敗れた巨竜グリオール。彼の全長1マイルにおよぶ巨体は、草木と土におおわれ川が流れ、その上には村までもができていた。周囲に住むひとびとは、時が経ち観光地化した彼の恩恵を受けてい…