BOOK

バラエティ豊かな中国SFのショウケイス『月の光 現代中国SFアンソロジー』

■月の光 現代中国SFアンソロジー 国家のエネルギー政策に携わる男はある晩、奇妙な電話を受ける。彼のことを詳しく知る電話の男は、人類と地球の絶望的な未来について語り、彼にそれを防ぐ処方箋を提示するが……。『三体』著者である劉慈欣の真骨頂たる表題作…

今更ながらスティーヴン・キングの『ミザリー』を読んだ

■ミザリー/スティーヴン・キング 雪道の自動車事故で半身不随になった流行作家のポール・シェルダン。元看護師の愛読者、アニーに助けられて一安心と思いきや、彼女に監禁され、自分ひとりのために作品を書けと脅迫される―。キング自身の体験に根ざす“ファ…

この怪奇で、不思議に満ちた人生/エリック・マコーマックの『雲』を読んだ

■雲/エリック・マコーマック 出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私は…

最近読んだミステリ/『ブルーバード、ブルーバード』『流れは、いつか海へと』 

■ブルーバード、ブルーバード / アッティカ・ロック テキサス州のハイウェイ沿いの田舎町で、ふたつの死体があいついで発見された。都会から訪れていた黒人男性弁護士と、地元の白人女性の遺体だ。停職処分中の黒人テキサス・レンジャー、ダレンは、FBIに所…

最近読んだミステリ /『熊の皮』『カルカッタの殺人』

■熊の皮/ジェイムズ・A・マクラフリン アパラチア山脈の麓で自然保護管理の職を得たライスは、故郷から遠く離れ、穏やかな日々を送っていた。ところが、管理区域で胆嚢を切り取られた熊の死体が発見される。熊の内臓は闇市場で高値で取り引きされている。ラ…

非情なるグローバル社会と経済格差の行方を描く傑作サイバーパンクSF長編『荒潮』

■荒潮/陳 楸帆(チェン・チウファン) 彼女の名前は米米(ミーミー)。中国南東部のシリコン島で日々、電子ゴミから資源を探し出して暮らす最下層市民“ゴミ人"だ。彼女たちは昼夜なく厳しい労働を強いられ、稼ぎは何代にもわたって島を支配してきた羅、陳、林…

少年とヴァンパイア少女との禁じられた恋を描くホラー小説『MORSE モールス』

■MORSE モールス(上)(下)/ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 母親と二人暮らしのオスカルは、学校では同級生からいじめられ、親しい友達もいない12歳の孤独な少年。ある日、隣にエリという名の美しい少女が引っ越してきて、二人は次第に友情を育んでいく…

最近読んだSF/『となりのヨンヒさん』『茶匠と探偵』

■となりのヨンヒさん/チョン・ソヨン もしも隣人が異星人だったら? もしも並行世界を行き来できたら? もしも私の好きなあの子が、未知のウイルスに侵されてしまったら……? 切なさと温かさ、不可思議と宇宙への憧れを詰め込んだ、韓国SF短編集全15編。 同性愛…

最近読んだSF/『ビット・プレイヤー』『パラドックス・メン』

■ビット・プレイヤー/グレッグ・イーガン 彼女は洞穴の中で目ざめた。外に見えるのは空、下から照りつけるのは日光。この奇妙な世界は何なのか?――未知の世界のありようを考察する表題作、死んだ名脚本家の記憶を持つアンドロイドが自らのアイデンティティを…

倦み疲れた生の果ての不安と悲哀/ホラー短編集『ボーダー 二つの世界』

■ボーダー 二つの世界/ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト 罪や不安を嗅ぎ取る能力を活かしスウェーデンの税関で働くティーナはある日、虫の孵化器を持った不思議な男と出会う。彼の秘密が明らかになるとき、ティーナが出会う新しい世界とは……映画原作であ…

全長1マイルに渡る死せる竜の物語/『タボリンの鱗』

■タボリンの鱗/ルーシャス・シェパード 数千年前に魔法使いとの戦いに敗れた巨竜グリオール。彼の全長1マイルにおよぶ巨体は、草木と土におおわれ川が流れ、その上には村までもができていた。周囲に住むひとびとは、時が経ち観光地化した彼の恩恵を受けてい…

今年面白かった本とかコミックとか音楽とか

unsplash-logo Loverna Journey 今年も順調に押し迫ってきやがりました!と言う訳で今日は「今年面白かった本とか音楽とかコミックとか」と題し、今年オレのブログで取りあげたそれぞれのモノについてつらつらと羅列していこうかと思います。 目次 ■今年面白…

殺戮と詩情に満ち溢れた傑作SFアジアン・ノワール小説『翡翠城市』

■翡翠城市/フォンダ・リー ケコン島――それは選ばれし者〈グリーンボーン〉たちの島。彼らは、島の貴重な天然資源である翡翠からエネルギーを引き出すことによって、怪力、敏捷、医療、感知など、人知を超えた能力を手に入れることができた。島の中心地であ…

最近読んだSF/『巨星 ピーター・ワッツ傑作選』『星間帝国の皇女-ラスト・エンペロー-』

■巨星 ピーター・ワッツ傑作選/ピーター・ワッツ 地球を発って十億年以上、もはや故郷の存続も定かでないまま銀河系にワームホール網を構築し続けている恒星船と、宇宙空間に生息する直径2億kmの巨大生命体との数奇な邂逅を描くヒューゴー賞受賞作「島」、…

池澤夏樹個人編集による『短篇コレクション I』は凄まじく素晴らしい文学短篇集だった。

■短篇コレクションI (池澤夏樹個人編集:世界文学全集 第3集) ■濃厚で重量級の世界文学短篇コレクション ドスッ!ボカッ!ザスッ!・・・・・・これらは池澤夏樹個人編集:世界文学全集第3集『短篇コレクション I』を読んでいたオレの、心が打ちのめされていた時の…

最近読んだ本あれこれ

■里山奇談 あわいの歳時記 /coco、日高トモキチ、玉川数 里山奇談 あわいの歳時記 作者: coco,日高トモキチ,玉川数 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/10/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 桜祭りの帰り道に見た宙に浮く柔らかな光、…

ラテンアメリカ文学短編集を3冊読んだ

■ラテンアメリカ短編集:モデルニズモから魔術的レアリズモまで/野々山真輝帆 編 ラテンアメリカ短編集―モデルニズモから魔術的レアリズモまで 作者: 野々山真輝帆,日比野和幸 出版社/メーカー: 彩流社 発売日: 2001/07 メディア: 単行本 この商品を含むブ…

ラテンアメリカ文学アンソロジーを4冊(+1冊)読んだ

思うところあって「ラテンアメリカ文学短編アンソロジー」ばかり集中して読んでいた。思うところ、というか実はただ単に積読が溜まりまくってしまいここは一気呵成に読まにゃ消化できんな、という事情があっただけなのである。 読んだアンソロジーのタイトル…

人類滅亡5000万年後、2億年後、そして恐竜が進化し続けた世界。

この間Twitterで『アフターマン』のことを呟いていた方がいて、「うおお~~懐かしい!」と盛り上がってしまい、関連書籍と併せて古本を逆上気味に購入してしまった。 アフターマン――人類滅亡後の地球を支配する動物世界 作者: ドゥーガル・ディクソン 出版…

『犬の力』3部作堂々の完結編、『ザ・ボーダー』

■ザ・ボーダー(上)(下)/ドン・ウィンズロウ グアテマラの殺戮から1年。メキシコの麻薬王アダン・バレーラの死は、麻薬戦争の終結をもたらすどころか、新たな混沌と破壊を解き放っただけだった。後継者を指名する遺言が火種となり、カルテルの玉座をかけた血…

椎名誠『おなかがすいたハラペコだ。』と『おなかがすいたハラペコだ。②―おかわりもういっぱい』を読んだ

■おなかがすいたハラペコだ。/椎名誠 ■おなかがすいたハラペコだ。②―おかわりもういっぱい/椎名誠 例によって取っ付きにくいハードカバー小説を読み疲労してしまったので、口直しという事で軽めの読み物を読むことにした。オレにとって軽めの読み物と言っ…

ウラジーミル・ソローキンの『テルリア』を読んだ

■テルリア/ウラジーミル・ソローキン 21世紀中葉、世界は分裂し、“新しい中世”が到来する。怪物ソローキンによる予言的書物。“タリバン”襲来後、世界の大国は消滅し、数十もの小国に分裂する。そこに現れたのは、巨人や小人、獣の頭を持つ人間が生活する新…

今度は中生代だッ!/『リアルサイズ古生物図鑑 中生代編』

■リアルサイズ古生物図鑑 中生代編/土屋健 大昔の地球には今は絶滅して見る事の出来ない膨大な種類の生物が生きていましたが、それらの大きさってどんなものだったんでしょうか。それらを図鑑で見るときに、10センチだとか1メートルだとか10メートルだとか…

話題の長編中華SF小説『三体』は本当に面白かったのか?

■三体/劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン) 今SF小説界で話題沸騰中の作品といえば中国作家・劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)の長編SF『三体』 だろう。なんというか化け物級の話題作なのだ。 2008年に中国で出版され人気が爆発、《三体》3…

京極夏彦の『今昔百鬼拾遺 天狗』を読んだ

■今昔百鬼拾遺 天狗/京極夏彦 昭和29年8月、是枝美智栄は天狗伝説の残る高尾山中で消息を絶った。約2か月後、遠く離れた群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服を身にまとっていた。この謎に、旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子…

橋本治の『父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない』を読んだ

■父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない/橋本治 今年1月に亡くなった橋本治さんの本はこの間出た『思いつきで世界は進む――「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと』が最後なのかと思ったらまだあるのらしい。この『父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来…

ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』を読んだ(ラテンアメリカ文学)

■夜のみだらな鳥/ホセ・ドノソ 望まれない畸形児“ボーイ”の養育を託された名家の秘書ウンベルトは、宿痾の胃病で病み衰え、使用人たちが余生を過ごす修道院へと送られる。尼僧、老婆、そして孤児たちとともに暮しながら、ウンベルトは聾唖の“ムディート”の…

ヤマザキマリの『パスタぎらい』を読んだ

■パスタぎらい/ヤマザキマリ イタリアに暮らし始めて三十五年。断言しよう。パスタよりもっと美味しいものが世界にはある!フィレンツェの絶品「貧乏料理」、シチリア島で頬張った餃子、死ぬ間際に食べたいポルチーニ茸、狂うほど愛しい日本食、忘れ難いおに…

クトゥルー神!陰陽師!蘇った超絶剣士!明治天皇暗殺計画!伝奇小説『大東亜忍法帖【完全版】』がとてつもなく面白かった!

■大東亜忍法帖【完全版】/荒山 徹 幕末維新の騒乱期。命を落とした超絶剣士達が次々と蘇った。千葉周作、男谷精一郎、伊庭軍兵衛、近藤勇、土方歳三、沖田総司など総勢十二人! そして彼らを率いるのは、山田一風斎と名乗る謎の陰陽師。邪神“くとぅるー”の…

崩壊したアメリカの大地を少女とロボットが往くグラフィック・ノベル『エレクトリック・ステイト』

■エレクトリック・ステイト/シモン・ストーレンハーグ 1997年、無人機ドローンによる戦争で荒廃し、ニューロキャスターで接続された人びとの脳間意識によって未知なる段階に到達した世界が広がるアメリカ。10代の少女ミシェルと、おもちゃの黄色いロボット…