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長編SF小説『最終人類』はナントモカントモだった

最終人類 (上)(下) / ザック・ジョーダン(著)、中原 尚哉(訳) ありとあらゆる種族がひしめく広大なネットワーク宇宙。その片隅の軌道ステーションで、ウィドウ類の元殺し屋の母親と暮らすサーヤには秘密があった。宇宙種族にもっとも憎まれ、絶滅させられ…

二つの場所にいた一人の人間。そしてさらに衝撃的な事件が起こる /スティーブン・キング最新長編『アウトサイダー』を読んだ

アウトサイダー(上)(下) / スティーヴン・キング(著)、白石朗(訳) その1:ネタバレなし感想 スティーブン・キングの最新長編『アウトサイダー』を読了した。これは本国では2017年に刊行された『The Outsider』の翻訳版となる。 物語は11歳の少年の惨殺…

中国SF作家・郝景芳によるAIを主題としたSF短編集『人之彼岸』を読んだ

人之彼岸 / 郝 景芳 (著)、立原 透耶 (訳)、浅田 雅美 (訳) 重篤な病で瀕死状態だった母親を入院させた男は、自分の無力さに苛まれていた。だが母親はある日突然、何事もなかったかのように退院してきた。母はまだ病院にいるはず。では今ここにいるのは一体…

ケン・リュウ最新短編集『宇宙の春』を読んだ

宇宙の春 / ケン リュウ (著)、古沢 嘉通 (訳) わたしは秋に生まれた。いま、宇宙は真冬だ――死に絶え、そしてまた生まれ変わる宇宙の変遷を四季の変化に見立てて描いた表題作、3人の女性が力を合わせて悪に立ち向かう、『三国志』を大胆に換骨奪胎したシス…

『この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選』を読んだ

この地獄の片隅に パワードスーツSF傑作選 / J・J・アダムズ (著), 中原 尚哉 (翻訳) 異星種族との戦いの最前線で、いつ果てるともしれない激戦を続けている小隊。そこへ司令官のマクドゥーガル将軍が前線視察にやってきて……(この地獄の片隅に)偵察任務中…

日本でアステカ暗黒神の幻影が跋扈する強烈な犯罪小説『テスカトリポカ』

テスカトリポカ / 佐藤 究 メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向か…

マルク・デュガンの近未来SF『透明性』を読んだ。

透明性/マルク・デュガン (著)、中島 さおり (翻訳) 自国第一主義による地球温暖化は終局を迎え、人類の生存域が北欧地域に限られた2060年代。グーグルによる個人データの完全な可視化は、人間から共感という能力を失わせていた。そんななか、アイスランド…

アンドロイドSF『マーダーボット・ダイアリー』がなかなかに面白かったぞ!!

マーダーボット・ダイアリー/マーサ・ウェルズ (著), 中原 尚哉 (翻訳) かつて重大事件を起こし、その記憶を消されている人型警備ユニットの“弊機”は、ひそかに自らをハックして自由になったが、連続ドラマの視聴を趣味としつつ、保険会社の所有物として業…

『ニュー・ダーク・エイジ テクノロジーと未来についての10の考察』を読んだ

ニュー・ダーク・エイジ テクノロジーと未来についての10の考察 / ジェームズ・ブライドル (著), 久保田晃弘 (翻訳) 情報テクノロジーはますます進化し、経済・政治・社会の変化を加速している。しかし今、人々は溢れかえる情報の中で、単純化された物語や…

それは謎のSFだったッ!?/『中国・アメリカ 謎SF』

中国・アメリカ 謎SF /柴田 元幸 (編集, 翻訳), 小島 敬太 (編集, 翻訳) 謎マシン、謎世界コンタクト、謎の眠り―。朗読劇『銀河鉄道の夜』で10年にわたって共演し、文学的感性が共鳴しあう柴田元幸と小島敬太が贈る魅惑の〈謎SF〉アンソロジー。 中国・広州…

ピーター・ワッツのSF中編『6600万年の革命』を読んだ

6600万年の革命/ピーター・ワッツ (著)、緒賀 岳志 (イラスト)、渡邊 利道 (その他)、嶋田 洋一 (翻訳) 地球を出発してから6500万年。恒星船〈エリオフォラ〉はもはや故郷の存続も定かではないまま、銀河系にワームホールゲート網を構築する任務を続けてい…

カレル・チャペックの『山椒魚戦争』を読んだ

山椒魚戦争/カレル・チャペック(著)、樹下節(翻訳) 一商船の船長が、インドネシア方面の海中で、山椒魚に似た奇妙な動物を発見する。彼は、この動物が人になれるうえに利口なことを知って、真珠採取に利用することを思いつく。そして、この仕事の企業化を、…

『‟もしも″絶滅した生物が進化し続けたなら ifの地球生命史』を読んだ

‟もしも″絶滅した生物が進化し続けたなら ifの地球生命史/土屋 健 (著), 藤原 慎一 (監修), 椎野 勇太 (監修), 服部 雅人 (イラスト) 古生物は、すでに絶滅しています。 しかし、もしも古生物が“何らかの理由で"絶滅を回避し、子孫を残したとしたら、いった…

ふしぎな星を舞台にした絵本『スモンスモン』は異世界異種生命体SF絵本だった!

スモンスモン/ソーニャ・ダノウスキ (著), 新本 史斉 (翻訳) スモンスモンはゴンゴンせいにすんでいます。あるあさ、スモンスモンはトントンにのってロンロンをもぎにでかけました。ところが、とちゅうでゾンゾンにおちてしまい…出会い、助けあい、分かちあ…

デニス・E・テイラーのSF長編『シンギュラリティ・トラップ』を読んだのだ。

シンギュラリティ・トラップ/デニス・E・テイラー (著), 金子 浩 (翻訳) 温暖化が進行し環境悪化に苦しむ22世紀の地球。貧しいコンピュータ技術者アイヴァン・プリチャードは、一攫千金を夢見て、小惑星帯へと向かう探鉱船“マッド・アストラ”に乗り組む。だ…

廃疾と汚濁の島サハリンを道行く異形のSF長編『サハリン島』

サハリン島/エドゥアルド・ヴェルキン (著), 北川和美 (翻訳), 毛利公美 (翻訳) キム・ウン・ユンが発射した弾道ミサイルをきっかけに、核戦争が勃発。二か月に渡る熱戦のすえ、欧州の主要工業国は壊滅する。ユーラシア大陸では人間をゾンビ化する伝染病MOB…

テッド・チャンの『息吹』読んどいた。

息吹/テッド チャン(著)、大森 望 (翻訳) 「あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で、世界的にブレイクしたテッド・チャン。第一短篇集『あなたの人生の物語』から17年ぶりの刊行となる最新作品集。人間がひとりも出てこない世界、その世界の秘…

不気味な物語。/『パラダイス・モーテル』エリック・マコーマック

パラダイス・モーテル / エリック・マコーマック (著)、増田 まもる (翻訳) ある町で、外科医が妻を殺しバラバラにしたその体の一部を4人の子供の体内に埋めこんだ。幼いころ、そんな奇怪な事件の話をしてくれたのは、30年間の失踪から戻って死の床に伏して…

『2010年代海外SF傑作選』は結構な粒揃いだったぞ

2010年代海外SF傑作選/橋本輝幸=編 “不在”の生物を論じたミエヴィルの奇想天外なホラ話「“ザ・”」、映像化も話題のケン・リュウによる歴史×スチームパンク「良い狩りを」、グーグル社員を殴った男の肉体に起きていた変化を描くワッツ「内臓感覚」、仮想空…

彼女は復讐の旅に出る/ミステリ『ローン・ガール・ハードボイルド』

ローン・ガール・ハードボイルド / コートニー・サマーズ (著), 高山真由美 (訳) NYのラジオDJマクレイに、ある女性が電話をかけてくる。トレーラーハウスを貸し、祖母代わりとして気にかけていた19歳のセイディが姿を消したというのだ。そのドキュメンタリ…

2020年:今年面白かった本やらコミックやら

今年はたくさん本を読んだのだ 今年はなにしろたくさん本を読んだ。実のところ数で言うと50冊ぐらいで、一日一冊は読んでいる読書家の方から見れば「それで沢山?」と思われるかもしれないが、これまで月2,3冊程度しか読んでいなかったオレにしては相当な数…

追悼 ジョン・ル・カレ/遺作となった『スパイはいまも謀略の地に』を読んだ

スパイはいまも謀略の地に/ジョン・ル・カレ(著)、加賀山 卓朗(訳) 追悼 ジョン・ル・カレ イギリスのスパイ小説作家、ジョン・ル・カレについては、オレはそれほど熱心な読者というほどではないが、一時は大いに心酔し、スマイリー・シリーズを始めとした…

駄菓子みたいなスリラー小説、ディーン・クーンツの『闇の眼』

■闇の眼 / ディーン・クーンツ 雪のシエラ山中でバス転落。搭乗のボーイスカウト全員死亡…ラスベカスの舞台プロデューサー、ティナが一人息子のダニーを亡くしたのは1年前。が、ティナはまだその死を信じられずにいた。それて、傷心の彼女の身辺に次々と不…

第8回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作『ヴィンダウス・エンジン』を読んだ。

ヴィンダウス・エンジン/十三不塔 ヴィンダウス症――動かないもの一切が見えなくなる未知の疾患。韓国の青年、キム・テフンはこの難病から苦心の末に寛解状態へと持ち直したことで、中国・成都の四川生化学総合研究所から協力を要請される。それはヴィンダウ…

キング親子の放つ超ド級のパニック+ダークファンタジー巨編『眠れる美女たち』

眠れる美女たち(上)(下) / スティーヴン&オーウェン・キング 女子刑務所のある小さな町、ドゥーリング。平穏な田舎町で凶悪事件が発生した。 山間部の麻薬密売所を謎の女が襲撃、殺人を犯したのちに火を放ったのだ。 女はほどなくして逮捕され、拘置のため…

ザミャーチンの書いた古典ディストピア小説『われら』を読んだ

われら /エヴゲーニイ・ザミャーチン いまから約1000年後、地球全土を支配下に収めた“単一国”では、食事から性行為まで、各人の行動はすべて“時間タブレット”により合理的に管理されている。その国家的偉業となる宇宙船“インテグラル”の建造技師д‐503は、古…

屹立する異様なモニュメント『スポメニック 旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物』

■スポメニック 旧ユーゴスラヴィアの巨大建造物 / ドナルド・ニービル セルビア・クロアチア語やスロヴェニア語で「記念碑」という意味を持つ“スポメニック”。第2次世界大戦中の枢軸国軍による占領の恐怖と、占領軍から勝ち取った勝利を示すため、1960年代…

過ぎ去りし懐かしの未来『真鍋博の世界』

■真鍋博の世界 (愛媛県美術館 監修) この『真鍋博の世界』は愛媛県美術館で2020年10月1日~11月29日まで開催される「真鍋博2020」公式図録兼書籍となる。オレは真鍋氏の物凄いファン、というわけでは全然ないのだが、その表紙絵のどうにも懐かしい感触が気…

スティーヴン・キングの最新短編集『マイル81』『夏の雷鳴』を読んだ

■マイル81 (わるい夢たちのバザールI) 、夏の雷鳴 (わるい夢たちのバザールII) / スティーヴン・キング 廃墟となったパーキングエリアに駐まる1台の車。不審に思って近づいた者たちは――キング流の奇想炸裂の表題作。この世に存在しない作品が読める謎の電…

アントニイ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』を読んだ

■時計じかけのオレンジ / アントニイ・バージェス 近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく…