今年は中東料理

先日は相方さんのお誕生日ということで、ささやかながら食事会を開きました。本当は相方さんの誕生日は数週間前だったのですが、例によって彼女の仕事が忙しすぎてなかなか時間がとれず、遅れに遅れて今回やっと開催することが出来たんです。というか実は去年も多忙すぎて都合が付かず、お誕生日会をちゃんとやってなかったんですよ。

毎年いろんなお店でいろんな料理を食べていましたが、今年は「中東料理」ということにしてみました。特に相方さんからリクエストがあったわけではないんですが、オレが食べてみたかったという理由からなんですが(スマン)。いや実はオレと相方さん、「フムス」というひよこまめペーストの料理が好きでしてね、これを出すお店に行ってみたかったんですよ。

そんな訳で選んだお店は銀座にある「ミシュミシュ」という中東料理のお店。コースで予約しました。

まずはチュニジアやトルコの珍しいビールで乾杯。お誕生日おめでとうございます!

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そして前菜からフムス含めいろんなペースト、サラダってのが嬉しいですね。他にファラフェル、チーズサモサ、ピタパンなどなど。

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海老とムール貝のタジン。この辺りからワイン頼んで飲んでました。中東料理、ワインと合いますね。

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メインはケバブ料理、お肉の下にあるのは長粒種のお米を炊いたものかな?

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髑髏のラベルが気になってズックムというトルコのビールを注文したらグラスまで髑髏でした!

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中東な置物が可愛らしかった。

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というわけで料理とお酒を楽しみながら2時間半ぐらいお店で過ごしていたオレと相方さんでした。出てきた料理もお酒もどれもとても美味しくて、相方さんも喜んでくれたようです。二人で銀座に出かけるのも久しぶりだった。たまに行く銀座はいいですね。相方さん、また一年よろしくお願いします。 

縦横に広がる異様な脳内世界の光景/映画『アンチグラビティ』

■アンチグラビティ (監督:ニキータ・アルグノフ 2019年ロシア映画

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ちょっと前に「ロシアのSF映画には意外と拾い物がある!」とこのブログで書いたばかりだが*1、またまたロシア製SF映画の登場である。こうして立て続けにロシア製SFをロードショー劇場で観られるというのも結構珍しい事かもしれない。タイトルは『アンチグラビティ』、本国では2019年に公開されたばかりの作品である。

物語は謎めいたシーンの連続で始まる。壮麗な超未来的建造物群が画面に現れたと思ったらそれは次第に腐食してゆき、次にその建造物が何者かの部屋に作られたミニチュアであることが分かる。その部屋である男が目覚めるが、その男の目の前で様々なものが腐食し形を失ってゆく。恐怖に囚われ表に飛び出した男が見たのは、やはり腐食した街並みと重力を無視し縦横に浮遊する建造物の群れだった。呆然とする男を黒く忌まわしい形をした怪物が襲うが、そんな彼を武装した男女の一団が救い出すのだ。

こうして異様なビジュアルとミステリアスな展開が畳みかけられた後に明らかになるのは、この世界が「現実世界で昏睡した人々の記憶の情景が混じり合った脳内世界」であり、「黒い怪物」は「脳死した人間の残存思念が他人の昏睡記憶に襲い掛かり現実の死をもたらすリーパー(死神)」であるということだった。主人公はこの世界に囚われた人々と協力し合い、リーパーが襲い掛かってこない安全な土地を探し出すため危険なミッションに挑むのだ。

なんと言ってもこの作品の最大の見所は「様々な街並みが重力を無視して上下左右に浮遊し細い通路で繋げられた世界のビジュアル」だろう。それはエッシャーの騙し絵のようにも見えるが、むしろ脳内神経細胞の構造に似ているように思う。「脳内世界」を描くこの物語の情景は、脳内神経細胞を模したものだったのだ。

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『アンチグラビティ』の脳内世界

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脳内神経細胞

描かれる世界は複数の人間の脳内記憶が繋がったものであり、それを「ヴァーチャル世界」ととらえるなら映画『マトリックス』であるし「夢」であるととらえるなら映画『インセプション』だということができる。いずれにせよ現実世界の決まり事が無視された世界であるということだ。しかしその世界はなにもかも登場人物の思いのままのことが出来るわけではなく、あくまでこの脳内世界の法則の中で生きるしかない。しかもこの世界は記憶の欠落の如くそれぞれの情景が腐食し痘痕だらけになっている。これら「退行してゆく記憶の情景」からは『ブレードランナー』原作でも知られるSF作家、P・K・ディックの問題作『ユービック』を彷彿させるものがある。

物語の登場人物たちは皆サイバーパンクテイストのコスチュームをまとい朽ちかけ赤錆びた建造物に立て籠もり、リーパー粉砕のための特殊武器を身に着けている。この辺の小道具の扱いもまたカッコいいのだ。さらにそれぞれが超能力めいた特殊能力を持っており、探索や戦闘のおいて発動させる。脳内世界だからなんでもアリ、ということなのだろうが、「異様な異世界を探索しながら敵と戦う超能力者たち」という物語からはどこかコンピューターゲームっぽい世界観を感じたりする。天地や前後左右で重力が異なりそれを利用しながらの行動、なんて部分はゲーム『GRAVITY DAZE』そのままじゃないか。

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GRAVITY DAZE

そう、この作品、脳内神経細胞構造の如き世界を舞台に『マトリックス』『インセプション』『ユービック』『GRAVITY DAZE』を悪魔合体させたさせたような実にユニークな作品として完成しているのだ。

ただしビジュアルイメージ先行型の作品によくあることなのだが、この『アンチグラビティ』はストーリーの膨らませ方に難があり、中盤若干退屈になる部分があるのは否めない。異様なビジュアルも最初こそ驚かされるが、物語が進行してゆくにつれ慣れてしまい、その後は最初の驚き以上のものが存在しなくなってしまう。言ってみれば10分程度のイメージムービーやゲームのムービーシーンを無理矢理2時間余りの物語に水増ししたように見えてしまうのだ。

しかしそういったマイナス面は後半、「この世界が存在する真相」が明らかにされることで新たなサスペンスを生み出し、ようやく物語らしい輪郭を獲得することになる。こういった点で、全体的には物足りない面もある、必ずしも完成度の高い作品とは言えないのだが、様々な既存作品をミックスしながら特殊な映像表現で一点突破した、気概のある作品だという事は出来るだろう。少なくともオレは嫌いじゃないし、これからも記憶に残るであろうSF作品だった。


インセプションのような世界観!ロシア発のSFアクション『アンチグラビティ』予告編

ユービック

ユービック

 

*1:

山尾悠子の幻想小説『飛ぶ孔雀』はオレには向いていなかったらしい

■飛ぶ孔雀 / 山尾悠子

飛ぶ孔雀

庭園で火を運ぶ娘たちに孔雀は襲いかかり、大蛇うごめく地下世界を男は遍歴する。伝説の幻想作家、待望の連作長編小説。

 最近「自分の好きな小説ジャンルはSFでも文学でもなく幻想小説なのではないか」と思ったのである。それはニール・ゲイマンエリック・マコーマックジェフリー・フォードらの幻想小説諸作を読んで感じた事だったのだが、これら作家の作品を読んでいるとある日本人作家の名前が言及されることに気付いた。それが山尾悠子である。なにやら日本幻想文学界におけるボスキャラ級の方なのらしく、これは読んでみなくてはと思って手にしたのがこの『飛ぶ孔雀』である。

この本では「飛ぶ孔雀」と「不燃性について」という二つの中編が収められているのだが、この二つは世界観が微妙に被ったものになっている。「飛ぶ孔雀」はどことも知れぬ日本の古都を舞台に超現実的な日常が進行する。「不燃性について」はやはりどことも知れぬ山頂のラボを舞台にした不可解な毎日を描くが、こちらは割とコミカルなテイストを感じる。全体的に泉鏡花を思わす古風な美文と万華鏡を覗くが如き無機的で幻惑的なイメージが展開してゆく。

ただ個人的には相当苦手な作風だったことは否めない。物語らしい物語は殆ど無く、主人公と目される人物も存在せず、作者の提示するイメージを細心の注意を払って丁寧にトレースすることで作品世界の情景を味わう、といった形態の作品であるため、物語さえ分りゃあいいと雑に小説を読み飛ばすようなオレには読み進めるのが面倒でたまらなかった。要するに向いていないらしいのだ。ううむ、どうやらまだまだ修行が足りないようである。

飛ぶ孔雀

飛ぶ孔雀

  • 作者:山尾悠子
  • 発売日: 2018/05/10
  • メディア: 単行本