北欧ミステリの人気シリーズ第1弾『特捜部Q―檻の中の女―』を読んだ

特捜部Q―檻の中の女― / ユッシ・エーズラ・オールスン (著), 吉田奈保子 (翻訳)

特捜部Q―檻の中の女― (ハヤカワ・ミステリ文庫)

捜査への情熱をすっかり失っていたコペンハーゲン警察のはみ出し刑事カール・マークは新設部署の統率を命じられた。とはいっても、オフィスは窓もない地下室、部下はシリア系の変人アサドの一人だけだったが。未解決の重大事件を専門に扱う「特捜部Q」は、こうして誕生した。まずは自殺と片付けられていた女性議員失踪事件の再調査に着手したが、次々と驚きの新事実が明らかに!

以前北欧ミステリを何作か読み、その独特な空気感と人間描写の面白さから、このジャンルを少々開拓してみたくなった。既に10数冊読んでおり、その全ての感想文を書き溜めているので、これから数週間に渡ってポツポツ更新していく予定である。

そんな訳でまず第1弾として紹介するのはデンマークの作家ユッシ・エーズラ・オールスンによる「特捜部Q」シリーズ第1弾『特捜部Q―檻の中の女―』。この「特捜部Q」は相当に人気の高いシリーズ作なのらしく、2007年に出版された1作目から現在まで9作が書かれており、日本でも全て翻訳出版されている。またその中からさらに4作が映画化もされている。

物語は未解決事件を再捜査する特殊部署「特捜部Q」が新設される部分から始まる。とはいっても特に映え抜きが配属されるわけでもなく、なんだか草臥れたおっさん刑事カールと出自の不明なシリア系の青年アサド(警察官でもないらしい)のたった二人だけの部署で、要するに警察署内で持て余された人材の掃き溜めとして新設されたらしいのだ。そして物語の面白さはまずこの二人のキャラにある。

おっさん刑事カールは一言多いせいで署内で煙たがられるはみだし者で、私生活はごたついており、なおかつ分かりやすいぐらい女好き。なんだかアナクロなのだ。そしてアサド、これがなにしろ正体不明で、物語内でもなぜ彼がここにいるのかがはっきり書かれない。普段は呑気でお気楽な性格なのだが、いざ捜査となると切れ者ぶりを発揮し、さらに警察を通さない裏ルートも熟知、この落差に大いに興味を惹かれてしまうのだ。

そんな二人が「特捜部Q」で最初に捜査するのが数年前失踪し死亡扱いされている女性議員ミレーデの事件をもう一度洗いだすというもの。ここで少々ネタバレするが、実はミレーデは何者かに拉致され不可思議な施設に幽閉されていたのだ。物語では物語内の現在である2007年と、ミレーデが拉致された2002年からの日々が並行して描かれ、何年もの間地獄の苦しみを味わい続けるミレーデの姿を克明に描いているという構成が独特だろう。

この謎の施設での猟奇的な虐待がこの物語のもうひとつの見所となる。北欧ミステリには韓国映画にも通じる残虐さをどことなく感じるのだが、その残虐さに想像も付かない趣向が凝らしてあり、よくもまあこんなイヤラシイ事を考えつくな、と変な感心をしてしまうのだ。現実的には少々突飛過ぎるかもしれないが、フィクションの舞台設定としては出色だった。

さらにもうひとつ書くなら、主人公カールがいよいよの時になって爆発させる正義感だろう。クライマックスに向かって疾走し続けるカールの姿にはアナクロ男なりのリリシズムさえ感じさせた。これは人気シリーズになるわけだな。続くシリーズ作も読みたくなってしまった。

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