2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

脱北を企てる男とそれを阻止しようとする男の交錯した感情 /映画『脱走』

脱走 (監督:イ・ジョンピル 2024年韓国映画) 北朝鮮と韓国を隔てる軍事境界線は、両国の厳重な監視下にあるため、人々が自由に行き来することは決してできない。しかし、北朝鮮の社会主義国家体制に不満を抱き、命懸けで韓国への脱北を試みる者は少なくな…

最近読んだコミックあれこれ /『波よ聞いてくれ (12)』『#DRCL midnight children (6)』『APPLE PARADISE』『童夢』

波よ聞いてくれ (12) / 沙村 広明 波よ聞いてくれ(12) (アフタヌーンコミックス) 作者:沙村広明 講談社 Amazon 沙村広明の『波よ聞いてくれ』は 「北海道のラジオ局に突然スカウトされた破天荒娘が主人公」というありそうでないニッチな設定が本当に優…

人種差別と文化盗用、そして搾取構造の「罪」についてのホラー映画『罪人たち』

罪人たち (監督:ライアン・クーグラー 2025年アメリカ映画) 映画『罪人たち』は人種差別が未だ厳しい20世紀初頭のアメリカ南部を舞台に、双子のチンピラ兄弟が新たに立ち上げたダンスホールに吸血鬼集団が襲い掛かるといったホラー作品だ。しかしこの作品…

自伝的要素、古代ローマの現代への投影、そしてコッポラの理想が謳いあげられた問題作『メガロポリス』

メガロポリス (監督:フランシス・フォード・コッポラ 2024年アメリカ映画) 『ゴッドファーザー』シリーズ、『地獄の黙示録』のフランシス・フォード・コッポラ監督が40年の構想と莫大な私費を投じ完成させた映画『メガロポリス』。物語は古代ローマに着想…

ルキノ・ビスコンティ監督の『家族の肖像』を観た

家族の肖像(監督:ルキノ・ビスコンティ 1974年イタリア・フランス映画) ルキノ・ヴィスコンティというと『ベニスに死す』や『地獄に堕ちた勇者ども』など、どうも頽廃趣味の貴族監督というイメージが強くて取っ付き難く、なんとなく敬遠していたのだが、…

『麺の歴史 ラーメンはどこから来たか』『ソース焼きそばの謎』を読んだ

麺の歴史 ラーメンはどこから来たか / 奥村 彪生 (著), 安藤 百福 (読み手) 麺の歴史 ラーメンはどこから来たか (角川ソフィア文庫) 作者:奥村 彪生 KADOKAWA Amazon 「チキンラーメン」生みの親の安藤百福と、日本の食文化研究家の奥村彪生がラーメンのル…

高級洋食が大衆化してゆく経緯を追った『串かつの戦前史〈東京ワンニラ史 後編〉』を読んだ

串かつの戦前史/ 近代食文化研究会 (著) 上流階級向けの高級フルコース料理として始まった明治初期の西洋料理は、次第に大衆化し、庶民の日常へと溶け込んでいった。 その大衆化が行き着いた究極の姿が、屋台でコップ酒片手に立ち食いする串かつであり、肉…

『ザ・スタジオ』『マンジャーレ!ノンナのレストランへようこそ』『ラ・ドルチェ・ヴィッラ』など最近ダラ観した配信あれこれ

『ザ・スタジオ』 ザ・スタジオ シーズン1(Apple TV+)(監督:エヴァン・ゴールドバーグ/セス・ローゲン 2025年アメリカ製作) セス・ローゲンが新任の映画スタジオ代表役となり、次々と襲い掛かる難問題に大わらわしてしまうというコメディ・ドラマ『ザ・ス…

『ザ・コンサルタント2』『深い谷の間に』『ハボック』など最近ダラ観した配信あれこれ

『ザ・コンサルタント2』 ザ・コンサルタント2 (Amazon Prime Video) (監督:ギャビン・オコナー 2025年アメリカ映画) 一見地味目の会計士は実は命中率100%のスナイパーだったッ!?という「舐めてたヤツは凄腕のXX」ジャンルの変形版、『ザ・コンサルタン…

【ネタバレあり】従順なカノジョは実はXXXXXXだったッ!?/SFサスペンスホラー『コンパニオン』

コンパニオン (監督:ドリュー・ハンコック 2025年アメリカ映画) 相思相愛のカップル、アイリスとジョシュは、ある日友人たちの誘いで人里離れた別荘を訪れる。そこでアイリスは別荘所有者に暴行されかけ、その男を刺し殺してしまう。血塗れで取り乱すアイ…

海辺に建つ鳥居を拝んできた:沼津市戸田 諸口神社

この間の日曜、ゆっくりと起きてまだ寝ぼけ眼のオレに、突然相方が「これからちょっと遠出するから付き合いなさい」と宣言したのである。なにやら伊豆半島の向こうっ側にある”海辺に建つ鳥居”を見に行くのと、途中の「道の駅」にある温泉に入りたいのらしい…

インド製アクションスリラー映画『ヴィクラム』を観た

ヴィクラム (監督:ローケーシュ・カナガラージ 2022年インド映画) 消えた麻薬を巡り麻薬組織のボス、秘密捜査官、そして「無職のおっさん」が三つ巴の戦いを繰り広げるというインドのアクションスリラー映画です。主演はインドの国民的スター俳優カマル・…

豚モツの串焼きを”焼き鳥”と呼ぶのはなぜ?/『焼き鳥の戦前史〈東京ワンニラ史 中編〉』を読んだ

焼鳥の戦前史 第二版 / 近代食文化研究会 (著) なぜ女たちは「豚の子宮の焼鳥」を食べたのか?意外な事実だらけの焼鳥の歴史! (日本初のクリスマスチキン/クリスマスケーキの歴史解説も付録) 「豚の臓物の串焼き(いわゆる”ヤキトン”)を”焼き鳥”って呼…