ヴィクラム (監督:ローケーシュ・カナガラージ 2022年インド映画)

消えた麻薬を巡り麻薬組織のボス、秘密捜査官、そして「無職のおっさん」が三つ巴の戦いを繰り広げるというインドのアクションスリラー映画です。主演はインドの国民的スター俳優カマル・ハーサン、『JAWAN ジャワーン』のビジャイ・セードゥパティと『プシュパ 覚醒』のファハド・ファーシル。監督・脚本は『マスター 先生が来る!』『囚人ディリ』のローケーシュ・カナガラージ。今回はネタバレありで書くのでご注意。
【STORY】チェンナイで覆面姿の集団による3件の連続テロ事件が発生。特殊工作員アマルは、街のギャングを牛耳る麻薬王サンダナムが事件に関与していると考える。一方、サンダナムは縄張り内で消えた2トンものコカイン原料を探していた。捜査を進めていくうちに、アマルは2番目に殺害された無職の男カルナンのことが妙に気になりはじめる。カルナンには警察官である義理の息子がいたが、彼も同じテロリストたちに殺されていた。
最初にネタバレから書いちゃいますが、「無職のおっさん」カルナンってェのは実は、かつてインド政府に尽くしながら後に闇に葬り去られた特殊工作部隊のボス、ヴィクラムだったんですよね。このカルナン、最初にテロ組織に殺されるシーンがあるんですが、そもそもこのカルナンを演じるのが大スターのカマル・ハーサンですから、最初で殺されてお仕舞のわけはないでしょう。さらに大スターの役柄が単なる「無職のおっさん」であるはずもないだろうし、こりゃ何か隠されてるね、ぐらいのことはすぐ気付くわけなんですよ。これ、現地のインド人観客だったらとっくに了解済みなんじゃないですかね。なにしろ大スターなんですから。
で、映画前半は消えた麻薬の行方を巡り麻薬組織のボスが大騒ぎし、秘密捜査官が眉間に皺寄せて謎を解いてゆくという展開が続くんですが、同時に、このカルナンとは何者なのか?というミステリーで引っ張ってゆくんですよ。いやでもミステリーって言ったって、観ている人間はうすうす正体に気付いてるわけだし、どうせ後半に登場して派手に存在感見せつけてくることはバレバレなんですから、このミステリー仕立てがどうにもかったるく感じてくるんですよ。確かに、こつこつと物語の下地を作り上げてゆく前半とそれが大爆発を起こす後半とでインド映画的なメリハリをつけたかったのでしょうが、こねくり回し過ぎて感心しなかったなあ。
というわけでやっとお待ちかね、三つ巴となった連中が遂に血で血を洗う大抗争へと雪崩れ込んでゆく後半へと続きます。この後半で遂に正体が明らかになり、鬼神のごとく大暴れするカマル・ハーサンには圧倒されること必至、一方ビジャイ・セードゥパティは『JAWAN ジャワーン』で見せた不気味極まりない演技でゴリゴリと攻めてきます。逆にファハド・ファーシルはなんだか中途半端な立ち位置で、あまり存在感を発揮できていません。アクションは見ているこっちまで痛くなってくるスーパーバイオレンスの連続、物語はドス黒い情念が暗くメラメラと燃え上がる南インドアクション映画お馴染みの暗黒展開を見せてゆきます。
ただしこの辺り、安定の南インドアクション展開と見るか、いつもと変わり映えしない南インドアクション展開と見るかで評価が変わってくるでしょう。オレとしては後者だったなあ。この間観た『ディーヴァラ』もそうだったけど、南インドアクション映画って「伝説の○○」とか「カリスマ○○」とかが主人公として登場し、不死身の強さで敵を粉砕してゆくってパターンが多すぎて、だんだん飽きてきちゃうんだよなあ。まあそんなこと言ったらオレの好きな「舐めてたヤツは特殊工作員だった!」ジャンルも似たようなもんなんですが、南インドアクションの場合主人公がほぼ「黒くて脂っこくてぶっといオッサン」ばかりなのでより似通って見えてしまうですよ。それだけならまだしもどの映画も必要以上に長くて、ちょっとインド映画遠慮したくなっちゃったなあ……でも『プシュパ 2』の日本公開があったら是非観たい(どっちなんだよ)。
参考:ローケーシュ・カナガラージ監督作品
カマル・ハーサン主演作品
![JAWAN/ジャワーン [Blu-ray] JAWAN/ジャワーン [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51sEk+LYPDL._SL500_.jpg)
![プシュパ 覚醒 [Blu-ray] プシュパ 覚醒 [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41X7yt8RGNL._SL500_.jpg)