北欧ミステリ『スノーマン』を読んだ

スノーマン(上・下) / ジョー・ネスボ (著), 戸田 裕之 (翻訳)

スノーマン 上 (集英社文庫) スノーマン 下 (集英社文庫)

オスロに初雪が降った日、一人の女性が姿を消し、彼女のスカーフを首に巻いた雪だるまが残されていた。捜査を担当するハリー・ホーレ警部は未解決の女性失踪事件が多すぎることに気づく。その後〈雪だるま〉事件は連続殺人の様相を呈し、真犯人は捜査班をあざ笑うかのように先回りしながら、やがて魔手はハリーの身辺にも迫ってくる。アルコール依存症と闘いながら捜査に挑む主人公、癖のある同僚たち。警察小説の傑作。

「スノーマン」と言ってもショッカーの怪人とか雪だるまが主人公のファンタジー絵本とか男性アイドルグループのことではない(しかし「雪だるま」って名前のアイドルグループってどうなのよ)。

今回紹介する北欧ミステリ『スノーマン』はノルウェーの推理作家ジョー・ネスボによる2007年の小説で、ハリー・ホールシリーズの第7作目となる。ジョー・ネスポは以前読んだ『その雪と血を』が面白かったので、もう1作読んでみようと思い手にしてみた。ちなみにこの小説はマイケル・ファスベンダー主演、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』のトーマス・アルフレッドソン監督により2017年に『スノーマン 雪闇の殺人鬼』というタイトルで映画化されている。

それにしてもミステリ小説のタイトルが「スノーマン=雪だるま」とは一体どういうことなのか。血に飢えた雪だるまが夜な夜な善男善女を血だるまにしてしまうという猟奇ホラーミステリなのか(だるまにだるまをかけてる。ここポイント)。実はそうではなく、連続誘拐殺人事件の現場には「雪だるま」が残されていたというお話なのである。うーんなんだかやっぱり真剣に受け取っていいのかここは笑うところなのかよく分からない気分にさせるな……。

「連続誘拐殺人事件」とは書いたが、実際は女性の失踪事件が幾つか続き、死体で発見される場合もあるが失踪したまま見つからない場合もあり、この辺りが読んでいてモヤモヤさせられる。惨殺死体をこれ見よがしに残したりこっそり隠したり、雪だるまも事件現場にあったりなかったりと一貫性がなく、犯人のやりたいことがよく分からないのである。そして段々「別に雪だるまいらなかったんじゃないのか」と思ってしまうのである。

あと「こいつが真犯人だ!」とブラフを連発するのも少々白けさせられた。確かに吃驚はさせられるが、紙の本で読んでいると「いやまだ半分(または3分の2)ぐらいしか読んでないのにここで真犯人は有り得ないよなあ」とすぐ分かってしまうので効果を上げていないのだ。こういった部分も含め事件の展開が今一つダラケ気味で、読んでいてちょっと飽きてきてしまった。ただし人間ドラマはとても丁寧に描かれていて、「犯罪捜査パートは面白いが人間ドラマがグダグダ」という北欧ミステリの定番の逆を行っている部分が面白かった。

事件にはノルウェーでは顕著なのらしい婚外子の多さが関わってくるのだが、性的に開放的(要するに浮気が多い)なのはとりあえず勝手にしてくれとは思いつつ、なんで避妊しないのみんな?と物申したくなってしまう。それと性的に開放的であることが自明となっている社会であっても、婚外子であることが心の傷になってしまう人間がいるということは、それはそれで歪んだ社会ということなんじゃないのか、と物語とは関係ない部分で思ってしまった。

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