アフリカでヒトラーと東條英機が大暴れ!?/映画『アフリカン・カンフー・ナチス』

アフリカン・カンフー・ナチス (監督:セバスチャン・スタイン、サミュエル・K・ンカンサ(ニンジャマン) 2019年ガーナ・ドイツ映画)

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ヒトラー東條英機は生きていた!?彼らはガーナへ逃亡、”カラテ”で現地人を洗脳しようとしていた!しかーし!一人のカンフーマンが彼らの前に立ちはだかるのだ!」という映画、『アフリカン・カンフー・ナチス』を観たのである(現在アマプラで¥200で視聴できる)。

いやー、アフリカでカンフーでナチス、もうタイトルからトンチキなスメルが濃厚に漂ってくる映画ではないか。ナチスでトンチキな映画というと『アイアン・スカイ』なんかを思い出すが、あれもなかなかに芳醇な香りを醸した作品で、実は結構好きだったりする。ただし続編の『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』はオフザケが過ぎてノレなかったけどな!さてこの『アフリカン・カンフー・ナチス』、なんとガーナとドイツの合作だというではないか。監督はドイツ人であるセバスチャン・スタインという方らしいんだが、それにしたって「ガーナ映画」を観るのは初めて。実はアフリカは結構な映画大国らしく、例えばナイジェリアあたりでは年間2000本の映画が作られ、「ノリウッド」なんて呼ばれていたりするらしい。

なにしろお話はヒトラー東条英機、さらにヘルマン・ゲーリングが生き残っていて、カラテを武器にいたいけなガーナ人の皆さんを支配しようと企む、というもの。二人はカラテのパワーのみならず、「血染めの党旗」なるオカルティックなアイテムを利用し、ガーナ人の皆さんを洗脳してゆく!ちなみにこの「血染めの党旗」日章旗の真ん中に鉤十字が描かれているという多方面においてヤバイシロモノなんだが、諸般の事情で「卍」になっている!どういう事情かは察してくれ!そして洗脳されたガーナ人はなぜか白塗りの顔になっちゃうだが、これは「ガーナアーリア人に化身したということらしい。ガーナアーリア人……ダメだ、深く考えちゃダメなんだ!

一応ヒトラーは監督自身が演じているが、あんまり似てない!あんな似せやすいキャラに似ないってどうなんだ!?東条英機は日本人俳優が演じていて、これは雰囲気掴んでいるけど、どっちかというと単なるスケベ親父かな!?ちなみに東条英機、日本語で喋ってるぞ!当たり前だけど!そしてヘルマン・ゲーリングを演じるのはなぜか黒人俳優だ!現地では人気の悪役俳優らしいんだが、それにしてもゲーリング、実は黒人だったのか!?

こんな悪党どもに対抗するのが我らがヒーロー、アデー!カンフー修行中の彼は愛する彼女をガーナアーリア人に洗脳され、怒りの鉄拳を振るうことになるのだ!とはいえまだまだ修行中の彼は悪の軍団に歯が立たない!そんな彼の前に現れた謎の男、彼は自らを酔拳」のマスターであると名乗るのだ!

さて、どんだけオチャラケの限りを尽くしたZ級トンチキ映画だろうかと物見遊山のつもりで見始めたオレなのだが、なんとこれが、意外と見せるのだよ。全体の作りはいかにも低予算映画だし、ヒトラーとその配下の連中のキャラは悪ふざけ気味ではあるのだが、出てくるガーナ人俳優の皆様がなかなかに精悍で、素人臭さなど微塵もないのだ。驚かされたのはそのアクションだ。カンフーの動きをきちんと研究し、香港アクション俳優といったレベルではないにせよ、なかなかに魅せるアクションを披露してくれるのだ。少なくともアクションに関しては手を抜いていない、そして退屈させない、ここがまず好印象なんだ。

スグリとして挿入されるエログロなシーンも、拙いし馬鹿馬鹿しいとはいえ、結構いいアクセントになっている。ガーナアーリア人のアジトで腰をヘコヘコさせながら踊る女子の皆さんとか、切り株や肉体破壊を交えた流血シーンとか、意外とやってくれるんだよ。やるときはやる、それがガーナ映画なんだ!あと劇中いつもアフリカーンな音楽が流れていて、ガーナな雰囲気を盛り上げまくっているんだな!ガーナの明るい陽光もまた心地いい!それにしても日本語字幕がなぜか関西弁で、ガーナの皆さんはみんな関西弁喋ってるんだが、ガーナは実は関西だったのか……ッ!?

こうして物語は壮絶なラストバトルへと突入するわけなんだが、スケベ親父の東条英機も似てないヒトラーも見てくれに相反しガチで強力だ!主人公アデーは彼らを打ち倒し恋人を取り戻すことが出来るのか!?ガーナに平和はやってくるのか!?謎と驚異に満ちたガーナ・ドイツ映画『アフリカン・カンフー・ナチス』、君も目をかっぽじて観るがいい!

(↓監督インタビューが面白くて映画が2倍楽しめる記事です) 

アフリカン・カンフー・ナチス

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2020年:オレ的映画ベストテン!?+その他あれこれ

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今年は「例のアレ」であんまり劇場に行けなかったのだ

今年もいよいよ押し迫ってまいりました。という訳で今回は拙ブログ恒例の「今年の映画ベストテン!」を企画しようかと思ったんですが……。

皆さんご存知のように、今年は例の新型コロナの影響で映画館が一時閉館になる、さらに話題作だったものがどんどん公開未定になる、などの影響で、あんまり映画館で映画観ておりません。とはいえ実はオレ、これでも頑張った方で(なにを頑張ったんだ)、今年は劇場公開作を40本以上は観ているんですが(コロナ自粛っていったい!?)。

それにしたって、今年公開されていれば必ずランク内に入りそうなアレやコレが公開されず、結構地味なチョイスになってしまったことは否めません。だからちょっと無理矢理感のあるベストテンではありますが、それでも、なかなかオレらしいごった煮風のランキングになったのではないでしょうか。では行ってみよう!

2020年:オレ的映画ベストテン(の・ようなもの)!

第1位:テリー・ギリアムドン・キホーテ(監督:テリー・ギリアム 2018年スペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル映画

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もう今年のベストワンはこの作品で決まりでしょう。1月に観たんですが、これを超える様な作品は結局ありませんでした。

第2位:TENET テネット(監督:クリストファー・ノーラン 2010年アメリカ映画)

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第2位はコレ!今年の公開作の中では結構な話題作になったんじゃないでしょうか。コロナ禍にもめげず公開され奮闘した映画という事でも感慨深い作品ですね。 

第3位:1917 命をかけた伝令(監督:サム・メンデス 2019年イギリス・アメリカ映画)

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この辺からランクに迷いますが、2月に公開され、「今年もこんな凄い映画がいっぱい観られそうだな!」という期待がまだあった頃に話題になった映画として、何か思い出深いんですよ。 

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第4位:鬼手(きしゅ)(監督:リ・ゴン 2019年韓国映画

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今年はオレにとって、「韓国映画開眼の年」でもありました。劇場でもアレコレ観ましたが、レンタルでも80作近くの韓国映画を観たんですよ。そんな中で、「囲碁の映画だけど格闘しまくり!」というコンセプトの、突き抜けた馬鹿馬鹿しさが強烈に印象に残りましたね。

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第5位:きっと、またあえる(監督:ニテーシュ・ティワーリー 2019年インド映画)

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最近はインド映画もコンスタントに公開されるようになり、かつてのインド映画ファンとして嬉しい限りです。そんな中この作品は笑いと感動のバランスが良く、インド映画に興味の無い方にもお勧めできる作品だと思います。

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第6位:WAR ウォー!!(監督:シッダールト・アーナンド 2019年インド映画)

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またもやインド映画!全体的に見てしまうと物語に難がある作品なんですが、どこまでもフルスロットルで突っ走ってゆくパワフルさに捻じ伏せられるエンターティンメント作でしたね。

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第7位:悪人伝(監督:イ・ウォンテ 2019年韓国映画

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またもや韓国映画!今年公開された韓国映画の中でベストとは言えないかもしれませんが、なにしろマ・ドンソク兄貴がコワモテのドンを演じまくっている、でも可愛い、という点で着目すべきものがあるんではないでしょうか。

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第8位:アンチグラビティ(監督:ニキータ・アルグノフ 2019年ロシア映画

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そしてこれはロシア映画!しかもSF!今年はこれとは別に『ワールドエンド』というロシアSFが公開されており、ハリウッドSFとはまた違う味わいがしてオレはとても気に入ったんですよ。 

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第9位:劇場版 ダウントン・アビー(監督:マイケル・エンゲラー 2019年イギリス・アメリカ映画)

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この作品が2020年のベストなのかどうかという以前に、オレは、オレはね、『ダウントン・アビー』が大好きなんですよ!テーマソングが流れて来ただけで泣ける自信があります! 

第10位:イップ・マン 完結(監督:ウィルソン・イップ 中国・香港映画)

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いろいろ意見はあるかと思いますが、実は3作目よりも好きな作品でした。ドニーさんももちろんよかったですが、ブルース・リー役チャン・クォックワンの形態模写が結構ツボにはまったんですよねー。

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【2020年オレ的映画べストテン!?】まとめ

第1位:テリー・ギリアムドン・キホーテ(監督:テリー・ギリアム 2018年スペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル映画

第2位:TENET テネット(監督:クリストファー・ノーラン 2010年アメリカ映画)

第3位:1917 命をかけた伝令(監督:サム・メンデス 2019年イギリス・アメリカ映画)

第4位:鬼手(きしゅ)(監督:リ・ゴン 2019年韓国映画

第5位:きっと、またあえる(監督:ニテーシュ・ティワーリー 2019年インド映画)

第6位:WAR ウォー!!(監督:シッダールト・アーナンド 2019年インド映画)

第7位:悪人伝(監督:イ・ウォンテ 2019年韓国映画

第8位:アンチグラビティ(監督:ニキータ・アルグノフ 2019年ロシア映画

第9位:劇場版 ダウントン・アビー(監督:マイケル・エンゲラー 2019年イギリス・アメリカ映画)

第10位:イップ・マン 完結(監督:ウィルソン・イップ 中国・香港映画) 

その他:その1/デヴィッド・リーン監督作品を集中して観ていた

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なにしろコロナ自粛で家にいる事が多かったもんですから、DVDやらBlu-rayやらもよく観ていましたね。そんな中で、デヴィッド・リーン監督作品を集中して観たのは思い出深かったでした。

デヴィッド・リーンにハマってしまった【デヴィッド・リーン特集:序章】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

時代に翻弄され数奇な運命を辿る男女の愛を描いた歴史ロマン/映画『ドクトル・ジバゴ』【デヴィッド・リーン特集その1】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

砂漠を愛し、アラブの民を愛した男/映画『アラビアのロレンス』【デヴィッド・リーン特集その2】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

戦争という名の虚無/映画『戦場にかける橋』【デヴィッド・リーン特集その3】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

引き続きデヴィッド・リーン監督作『ライアンの娘』『インドへの道』を観た【デヴィッド・リーン特集その4】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

デヴィッド・リーンの初期の作品『旅情』と『逢びき』を観た【デヴィッド・リーン特集その5】 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

その他:その2/ブルース・リー作品復活祭! 

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今年はブルース・リー生誕80周年という事で、全主演作品が劇場リバイバル上映された年でもあるんですよね。オレもオールコンプリートしました!

【ブルース・リー 4Kリマスター復活祭2020】で『ドラゴン危機一発』と『ドラゴン怒りの鉄拳』を観たッ! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

【ブルース・リー 4Kリマスター復活祭2020】で『ドラゴンへの道』を観たッ!アチョオウウウウウウ!!! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

【ブルース・リー 4Kリマスター復活祭2020】ファイナル作品『死亡遊戯』を観たぜッ!ウォオゥリャアアアアア!!! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

ブルース・リー生誕80周年記念ッ!『燃えよドラゴン ディレクターズ・カット』を観てきたアチョォオォオォ~~~ッ!!! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

その他:その3/韓国映画観まくりだった

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上のほうでも書いたんですが、今年はなにしろ韓国映画ばかり観ていた年でもありましたね。この韓国映画については来年まとめた記事を書こうかと思っています。 

在日コリアン家族と北朝鮮から帰国した兄/映画『かぞくのくに』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画などなど - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画などなど - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画あれこれ - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

韓国90年代、14歳女子の多感な日々。/映画『はちどり』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

奴は武闘派エクソシスト!?/映画『ディヴァイン・フューリー/使者』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画あれこれ - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

廃業寸前の動物園を建て直す奇想天外な珍作戦!?/映画『シークレット・ジョブ』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画あれこれ - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

売れない漫画家は死んだ筈の特殊工作員だった!?/映画『ヒットマン エージェント・ジュン』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

道しるべを無くした全ての者たちよ/映画『スタートアップ!』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

大いに笑わせ大いに泣かせる佳作コメディ映画『がんばれ!チョルス』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画などなど - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

最近ダラ観した韓国映画あれこれ - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

というわけで 

というわけで「2020年:オレ的映画ベストテン!?+その他あれこれ」 の終了となります。来年こそは、伸び伸びと、そして沢山のいい映画が観られる年になるといいですね!ではまた!

2020年:今年面白かった本やらコミックやら

今年はたくさん本を読んだのだ

今年はなにしろたくさん本を読んだ。実のところ数で言うと50冊ぐらいで、一日一冊は読んでいる読書家の方から見れば「それで沢山?」と思われるかもしれないが、これまで月2,3冊程度しか読んでいなかったオレにしては相当な数なのだ。週に一冊読んでいた計算かな。これは58年のオレの人生で最多の数かもしれない。

なんでこんなに読めたかというとKindle導入のお陰だろう。Kindle読み上げ機能で、あたかもラジオ番組を聴いているように本を読んでいた(聴いていた)のだ。

とはいえ「これからもこの調子でいっぱい本を読もう!」という気もあんまりなくて、それは紙の本とは別に「Kindle用の本」を毎回別途用意することが目的化してしまって、それがちょっと鬱陶しく感じて来たからなんだよな。なんだか「情報消化」のためにムキになって本読んでいたようなもんだったんだよ。来年はこの辺りをちょっと改めて、もっとのんびり本を読みたいと思ってる。

 という訳で今年読んで面白かった本とコミックをざっくりと紹介。新刊ではない作品も結構あります。

SF部門

今年も『三体』を始めとして中国SFが快進撃でしたね。そんな中珍しいイスラエルSFの傑作選『シオンズ・フィクション』が異彩を放っていました。それと、小松左京の『日本沈没』を今頃やっと読んで非常に衝撃を受けました。

三体Ⅱ 黒暗森林 (上)(下) / 劉 慈欣

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

 
三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

 

時のきざはし 現代中華SF傑作選 / 立原透耶・編

荒潮/陳 楸帆(チェン・チウファン)

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

荒潮 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

月の光 現代中国SFアンソロジー

シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

日本沈没小松左京

日本沈没 決定版【文春e-Books】

日本沈没 決定版【文春e-Books】

 

ホラー/ファンタジィ部門

キング親子の新作長編はガチでしたね。キング短編集も充実していました。ニール・ゲイマンの過去作にも大いに感銘を受けました。ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編集の寒々とした感触も忘れ難い。そしてなんといってもエリック・マコーマックの『雲』!これは今年読んだ本の中でも抜群の面白さでした。

眠れる美女たち(上)(下) / スティーヴン&オーウェン・キング

マイル81 (わるい夢たちのバザールI) 、夏の雷鳴 (わるい夢たちのバザールII) / スティーヴン・キング

雲/エリック・マコーマック

雲 (海外文学セレクション)

雲 (海外文学セレクション)

 

壊れやすいもの/ニール・ゲイマン

壊れやすいもの (角川文庫)

壊れやすいもの (角川文庫)

 

アメリカン・ゴッズ(上)(下)/ニール・ゲイマン

ボーダー 二つの世界/ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト

 

ミステリ部門

今年はオレにしては割とミステリを読んだほうですね。それにしてもジョン・ル・カレの訃報はとても残念でした。

スパイはいまも謀略の地に / ジョン・ル・カレ

スパイはいまも謀略の地に

スパイはいまも謀略の地に

 

影の子 / デイヴィッド・ヤング

影の子 (ハヤカワ・ミステリ1931)

影の子 (ハヤカワ・ミステリ1931)

 

拳銃使いの娘/ジョーダン・ハーパー

拳銃使いの娘 (ハヤカワ・ミステリ1939)
 

1793 / ニクラス ナット・オ・ダーグ

1793

1793

 

ブルーバード、ブルーバード / アッティカ・ロック

文学部門

文学小説ってあんまり読まない人間なんですが、この2作はオールタイムベストに入れてもいいほどに素晴らしい作品でした。いやあ文学って凄い。

グレート・ギャツビーF・スコット・フィッツジェラルド

グレート・ギャツビー

グレート・ギャツビー

 

ロリータ / ウラジミール・ナボコフ

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

 

コミック部門

コミック作品、こうして並べてみると結構「ガロ系」であったりオルタナ系な漫画家さんの作品であったりして、オレの好みが如実に分かりますね。

風水ペット (2)/花輪 和一

風水ペット (2) (ビッグコミックススペシャル)

風水ペット (2) (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者:花輪 和一
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: コミック
 

狂気の山脈にて(1)~(4)/田辺剛

死都調布南米紀行/斉藤潤一郎

死都調布 南米紀行 (torch comics)

死都調布 南米紀行 (torch comics)

 

そせじ (4) /山野一

そせじ(4)

そせじ(4)

 

西遊妖猿伝 西域篇 火焔山の章(1)/諸星 大二郎

西遊妖猿伝 西域篇 火焔山の章(1) (モーニング KC)

西遊妖猿伝 西域篇 火焔山の章(1) (モーニング KC)

 

水木先生とぼく/水木プロダクション

小犬のこいぬ/うかうか

小犬のこいぬ【電子限定特典付き】

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2020年:今年面白かった音楽

あれこれ幅広く聴いたのだ

今年もあれこれと沢山音楽を聴きました。実は去年、唐突にそれまで聴いていたEDMに飽きてしまい、1年の前半をリー・ペリー作品探索の旅に費やし、後半をプリンス作品コンプリートに血道を上げていたりしていましたが、それが終わってしばらくあれやこれやのジャンルをつまみ食いし、殆どカオス状態だったんですよね。それが今年の3月になって再びEDMの世界に戻ってきて、以来またぞろEDMばかり聴いています(……とはいえここ最近ちょっとピンク・フロイドを聴き直すようになってきたが)。 

そんな訳でEDMを中心に、今年聴いて面白かった作品を紹介してみたいと思います。 

EDM部門

Fabric 100/Craig Richards, Terry Francis & Keith Reilly  

Fabric 100

Fabric 100

 

テクノ/ハウス中心にリリースされてきた「Fabric」シリーズの栄えある100番目はCraig Richards、Terry Francis、Keith Reillyという3人のDJがそれぞれアルバム1枚づつを担当する豪華3枚組!やはりお祭はこうじゃなきゃ!3者ともオーソドクスな選曲とDJプレイで特別新規なものはないにせよ、むしろ安心して聴ける(踊れる)スムースなテクノ/ハウスを展開していると言える。


Craig, Terry & Keith's Meshy Meander with fabric 100

Fabric Presents Amelie Lens

Fabric Presents Amelie..

Fabric Presents Amelie..

  • アーティスト:Amelie Lens
  • 出版社/メーカー: Fabric
  • 発売日: 2019/11/22
  • メディア: CD
 

ナンバリング100以降にリリースされたAmelie LensのMixはバッキバキにダーク&ハードコアなテクノ・チューンがゴリゴリ唸りガッツンガッツン刺さりまくる、これはもう相当の歯応えのDJ Mix。


Amelie Lens - Solitude Tool (Fabric presents)

Fabric 99/Sasha

fabric 99: Sasha

fabric 99: Sasha

  • 発売日: 2018/06/22
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

80年代後半から活躍するUKのレジェンドDJ、Sashaが満を持してのFabric参戦だが、今まで参加してなかったんだ?と思ったほど。ミステリアスなアンビエント・ハウスから始まりその後も静謐さを湛えながらメランコリックなメロディが揺らぐ美しいMix。


Baile-Amae Feat. Felicia Douglass (Sasha Fabric1999 Mix)

■Tunes 2011-2019/Burial

TUNES 2011-2019 [輸入盤 / 2CD] (HDBCD048)_873

TUNES 2011-2019 [輸入盤 / 2CD] (HDBCD048)_873

  • アーティスト:BURIAL,ブリアル
  • 出版社/メーカー: HYPERDUB
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: CD
 

UKダブステップ界の鬼才中の鬼才、burialがテン年代にリリースしたシングル全17曲を網羅した150分にわたる2枚組アルバム。葬送曲のようなアンビエントトラックから鬼火の様に仄暗く燃え上がるメランコリックなダンスナンバーまでが並ぶ陰鬱な名作。

 
Rival Dealer - Burial

■Anjunadeep 11 / Jody Wisternoff & James Grant 

Anjunadeep 11 - Mixed By Jody Wisternoff & James Grant

Anjunadeep 11 - Mixed By Jody Wisternoff & James Grant

 

最初に聴いたAnjunadeepのMixアルバムはこの作品だった。憂いを帯びたメロディはどこまでも美しく包み込むようなエモーショナルさに満ち、一曲一曲が単にDJ Mixのパーツではなくそれぞれに完成度の高い楽曲なのである。まるでよく出来たエレクトリック・ミュージックのコンピレーションを聴かされているようだ。BPMも抑え気味で、リスニングに非常に適している。この曲なんか実にいいじゃないか。


Leaving Laurel - Through And Through

■Kern Vol. 5  / Helena Hauff

Kern, Vol. 5: Mixed by Helena Hauff

Kern, Vol. 5: Mixed by Helena Hauff

  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

ドイツの名門テクノ・レーベルTresorの人気DJ Mixシリーズ最新作はマシン・ファンクの女王Helena Hauff!これぞTresorと思わせる凶悪にゴリゴリの重量級テクノサウンド! いやこういうの聴くとフロアで踊りたくなってきちゃうよね。CDだと2枚組全31曲132分というロングミックス、D/L版ではさらにUnmixのトラック31曲が追加されこれを含めると5時間22分という長大なボリュームだ。クオリティもコスパも高くてこれは買いだろう。試聴はこちら

soundcloud.com

■Help / Duval Timothy

Help [日本限定CD]

Help [日本限定CD]

  • アーティスト:Duval Timothy
  • 発売日: 2020/08/07
  • メディア: CD
 

Duval TimothyはUK/シエラレオネを拠点に活動するマルチアーティストだという。この『Help』は彼の4枚目のアルバムとなるが、一聴してその繊細なピアノワークと電子音楽との見事な融合振りに聴き入ってしまった。ジャンル的にはエレクトリック・コンテンポラリー・ポップということになるのだろうか。全体的にメランコリックであり、殆どにおいてナイーブなピアノ演奏がリードし、幾つかの曲でたおやかなヴォーカルが聴こえる。そして時折巧みなサウンドコラージュが顔を覗かせ、ごく稀に力強いエレキギターの音が響く。技巧的でありつつ心に訴え掛けようとするソウルを感じる。非常にユニークなアーチスト精神によって製作された好アルバムだということが出来るだろう。

■BRONSON / Bronson 

BRONSON [解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC642)

BRONSON [解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC642)

 

グラミー賞ダンス/エレクトロニック部門ノミネート・アーチストであるODESZAとシドニーで活躍するディープハウス・ユニットGoiden Featuresによる新プロジェクト、BRONSONのニューアルバム。エモーショナルで力強いメロディと、美しくドラマチックな曲展開、時としてダークにメランコリックに響き渡る電子音、どの曲を聴いても実にバランスが良く完成度の高い名作アルバムで、今年を代表するエレクトロニック・アルバムの1枚となるかもしれない。

■Transmissions / Global Communication

Transmissions

Transmissions

 

『76:14』がリマスターされ、豊かな音質へと蘇って再発されることとなった。さらにこのアルバムに加えて、Chapterhouseのリミックス作『Chapterhouse Retranslated by Global Communication - Blood Music: Pentamerous Metamorphosis』、これまでのシングル&リミックスを集めた『Curated Singles & Remixes』を加えた3枚組CDボックスセット『Transmissions』としての発売である。エレクトロニック・ミュージック・ファンにとってこれはもう必携のボックスセットだろう。

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■Auraa / Ellen Allien

Auraa

Auraa

  • 発売日: 2020/06/12
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

ハードコア・テクノの女王Ellen Allien、待望のニューアルバム!期待通りのひたすらにカッコよくゴリゴリにハードなフロア仕様テクノで、聴くほどに頭にダンス衝動が湧き上がって止まらない!これはコロナ禍でどんよりした世相とクラブ事情を叩き潰す為に鳴らされている音だ!殺っちめえ!殺っちまってください姐さん!あっしはどこまでも付いていきますよ!

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■Silver Ladders / Mary Lattimore

Silver Ladders (ボーナス・トラック1曲収録/解説付き) [ARTPL-138]

Silver Ladders (ボーナス・トラック1曲収録/解説付き) [ARTPL-138]

  • アーティスト:Mary Lattimore
  • 発売日: 2020/10/09
  • メディア: CD
 

今回もズコズコだブンブンだと散々騒いだオレだが、そんなオレでも静寂が欲しくなることがある。そこでこれ、アンビエント・ハープの才媛Mary Lattimoreのニューアルバム『Silver Ladder』。静謐と温もりの籠ったアコースティックハープの調べがオレをとことんリラックスさせてくれるのだ。ハープってこんなにいいものだったのか。最近聴いたアンビエントサウンドの中でも白眉。これは今年のベストアルバムの1枚になるだろう。SlowdiveのNeil Halsteadがプロデュース。

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その他あれこれと雑食していた  

韓国産ホラー映画『クローゼット』を観た。

クローゼット (監督:キム・グァンビン 2020年韓国映画

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どうもクローゼットというところにはオバケが潜んでいるらしい。

海外のホラー作品を観たり読んだりしているとたまにそういった描写に出くわす。小さな子供が自分の部屋のクローゼットに何か潜んでいるんじゃないかと妄想を大きくし、いや単なる考え過ぎだよ、と思ったところでバーン!とオバケさん登場みたいな。いや、これはちょっと単純化し過ぎたが、なぜかクローゼットが恐怖の源流になっているらしい、ということはなんとなく見聞きする。

だが、そうは言われてもどうも実感が湧かない。なぜならオレはこの年までずっと日本家屋にばかり住んでおり、クローゼットなどという設備には無縁だからだ。クローゼットに代わるものと言えば箪笥や押入れになるのだろうが、子供の頃それが怖かったか?というと全くそういうことはない。まあ和製箪笥ホラー、押入れホラーというのもあることはあるのだろうが、海外におけるクローゼットの扱いよりはマイナーなのではないだろうか。

韓国映画『クローゼット』はそのままズバリ、クローゼットに潜む悪霊を描いたものである。物語の主人公は事故で妻を亡くした男サンウォンとその娘イナ。二人は人里離れた洋館に越すが、お互いの心には溝が生じていた。そんなある日イナが友達が出来た、と言い始め、さらにイナの部屋からは不気味な異音が響くようになる。そしてイナは突然姿を消してしまうのだ。必死の捜索を続けるサンウォンだったが、そんな彼の前に行方を知っているという謎の男ギョンフンが現れる。

まあなにしろ説明するまでもなくイナの失踪の原因はクローゼットに潜む悪霊であり、イナはその悪霊によって異界に連れ込まれたという訳だ。謎の男ギョンフンというのは度重なる児童失踪事件を追う退魔師で、異界からイナを救うために電子機器やら呪術道具を持ち込み、悪霊と対峙するという訳である。こういった形で物語はホラー作品としてはオーソドクスすぎるぐらいストレートに進行してゆき、その悪霊の正体にちょっとした悲惨な事件を絡め、サンウォンと悪霊との最終対決へと向かってゆくというわけである。

物語としてはトビー・フーパー監督作『ポルターガイスト』にJ・A・バヨナ監督作『永遠のこどもたち』を足してナ・ホンジン監督の韓国ホラー『哭声 コクソン』のおどろおどろしさをほんの少し振りかけたようなものとなっているが、こういった作品の既視感を感じはするにせよ、新鮮味と言った部分については残念ながら見当たらない。いや、悪霊が包丁を持って追い掛けてくるところがちょっと物珍しかったか。それと退魔師のギョンフン、最初はハイテクぽい機器で悪霊を探しつつ最後は祈祷に頼るのだけれども、最初からそうしていろよと思わないでもない。とまあそんな訳でそれほど楽しんで観られる作品ではなかった。

それにしても韓国において悪霊退散となると宗教的にはどうなってしまうのか。韓国における宗教人口は「仏教が22.8%、プロテスタント18.3%、カトリック10.9%、儒教0.5%、園(ウォン)仏教0.2%の順(韓国の宗教 | 社会全般 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」)」となっており、仏教とキリスト教でほぼ二分する形(無宗教が46.7%)だが、退魔師ギョンフンの祈祷はあれこれ美味しい所を折衷したものに見え、いわゆるウィルスに対する混合ワクチンみたいなものなのか、とちょっと思ってしまった。しかしそれでは決め手に欠けるので、いつか悪霊に憑りつかれた時のために、自分の宗教はちゃんと決めておくべきだというのが本作の教訓だろう。