最近ダラ観した韓国映画あれこれ

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■サスペクト 哀しき容疑者 (監督:ウォン・シニョン 2013年韓国映画

うおおおお韓国映画『サスペクト 哀しき容疑者』が滅茶苦茶面白かったぞ!脱北した北朝鮮最高の特殊工作員が巻き込まれた巨大なる陰謀!緊迫の逃走劇と白熱するアクション、迫真のカーチェイス!次々に巻き起こる危機を卓越した戦闘スキルで乗り越える主人公!これは韓国版「ジェイソン・ボーン」だ!緊張感と共にスピーディーな爽快感もあり、残酷な運命を描いたものだけれど決して陰鬱な作品じゃない。ラストまで楽しませきっちり満足させる娯楽アクションだ!アクション好きは観れ!ニヒルな主人公も良かったけど警官役のガサツなオッサンもよかったなあ!これもオレの中の韓国映画ベストになりそうだ!

親切なクムジャさん (監督:パク・チャヌク 2005年韓国映画 

誘拐殺人事件の犯人として投獄されたクムジャさんが計画した壮絶な復讐劇とは!?韓国映画親切なクムジャさん』は綿密に計画された復讐を遂行するクムジャさんの透徹した意思に捻じ伏せられる作品であると同時にキリスト教社会韓国における一つの贖罪の在り方を描いた作品だとも言えるな。さらに美しい美術と撮影にうっとりさせられる。 

■江南ブルース (監督:ユ・ハ 2015年韓国映画

江南ブルース  通常版 【Blu-ray】

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  • 発売日: 2016/03/30
  • メディア: Blu-ray
 

土地再開発に群がる政治家とヤクザの思惑の中でもがき回る兄弟の運命、韓国映画『江南ブルース』を観たけどウットリするぐらいいいじゃんかよ。俳優がいい、撮影がいい、音楽がいい。そして中盤、めくるめくような『ゴッドファーザー』オマージュが炸裂してるじゃんかよ!血みどろの抗争と腐敗した権力構造、やるせない家族関係を渇いた詩情で描き、高いドラマ性とロマンとを感じさせる傑作だった!オレはこういうのが好きなんだ!

■高地戦 (監督:チャン・フン 2011年韓国映画

停戦合意もままならないまま膠着する朝鮮戦争の泥沼を描いた韓国映画『高地戦』を観た!南北朝鮮軍が前線の”高地 ”を取ったり取られたりを繰り返し、そこで奇妙な交流が生まれる様はどこかシュールであり不条理劇めいたものも感じさせるが、それはこの戦争が「同胞同士の戦い」であり、だからこそ世界大戦やベトナム戦争とはまた違う悲劇性を帯びていたということなのだ。その一点において秀作戦争映画となっていると思う。 

■ビューティーインサイド (監督:ペク 2015年韓国映画

ビューティー・インサイド [Blu-ray]

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  • 発売日: 2017/07/04
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「朝目覚めると顔も性別も年齢も人種も違う人間になってしまう」 という青年が、一人の女性に恋をしてしまう。なにしろこの設定だけで秀逸なSF作品ともいえ、オレは名作SF短編『ここがウィネトカなら、君はジュディ』を思い出してしまったぐらいだ。「いつも違う人物になってしまう男」の恋は成就するのか?という前半は実にハラハラさせられたが、恋が成就してからの後半は飛躍も無く退屈なラブロマンスになってしまった部分が大変惜しい作品。 

友へ チング (監督:クァク・キョンテク 2001年韓国映画 

友へ チング Blu-ray

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  • 発売日: 2016/02/17
  • メディア: Blu-ray
 

幼馴染の4人の男たちがそれぞれヤクザと真っ当な人間へと分かれながらも友情を忘れない、という話なんだが、本来なら別々の道に分かたれ出会う事のなくなるであろう者同士が「幼馴染」という名の「呪縛」と「親友/チング」という名の「呪文」から逃れられずにもがき苦しむ、というある種の「強迫観念」の物語のように思えてしまった。女は殆ど重要な役割が無く、ただ男たちのホモ・ソーシャルな呻吟と喘ぎ声ばかりが響き渡る映画。

トンマッコルへようこそ (監督:パク・クァンヒョン 2005年韓国映画

トンマッコルへようこそ [DVD]

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  • 発売日: 2007/03/02
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朝鮮戦争の最中、山奥で道に迷った南北兵士たちが辿り着いたのは仙郷と見紛うばかりの美しい村だった……という物語。確執しあう南北兵士と戦争が行われていることすら知らぬ村人たちとの対比からはイデオロギーの無効化が描かれ、無原罪の地にある村は一つの理想郷として存在する。非常にアレゴリカルなファンタジーとして機能するこの作品は同時に冷徹なリアリティーをそこに差し挟むことで単なる夢物語として終わらせず、戦争の無意味さを鮮烈に浮き上がらせる。これもまたオレの韓国映画ベストに入る作品だな。 

母なる証明 (監督:ポン・ジュノ 2009年韓国映画 

母なる証明 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2010/04/23
  • メディア: Blu-ray
 

殺人で起訴された息子を救うため死に物狂いで奔走する母の姿を描いたドラマ。実はオレが永らく韓国映画を避けていたのは、昔この作品を観て最初の30分で辟易したからだった。その時は貧困家庭にある不幸な母子が巻き込まれた暗い犯罪というベタなリアリズムに観ていてうんざりさせられたのだ。同時に主人公たる母子にイライラさせられたのもあった。しかし今回観て、そんな最初のイメージが覆された。まず物語がどうこういう以前に、撮影に独特の美しさがある。そこにまず引き込まれる。そして一見「強烈な母の愛」をテーマにしているように思わせて、この作品は実はそんな母の「盲愛」をアイロニカルに描いたものだということが分かってくる。なるほど、この突き放し方は家族主義的な韓国映画では異色なのではないか。善悪の彼岸を描くように見せかけて善も悪も無い濁った灰色のような結末も絶妙だ。やはりポン・ジュノ監督はどこかひとつ頭抜けた感覚を持った監督であることが伝わってくる作品だ。