■オールド・ボーイ (監督:パク・チャヌク 2003年韓国映画)
去年はオレにとって「韓国映画開眼の年」で、ネット記事を参考にしながら傑作良作と呼ばれる作品を漁り、劇場のみならずレンタルやサブスクで山の様に韓国映画を観ていた。そんな中で必ず韓国映画ベストに挙げられるこの『オールドボーイ』は最後まで視聴をペンディングしていた。ボスキャラ的な作品に思えたので楽しみにとっておいたのだ。で、あらかた韓国映画良作は観たのでいよいよ、ということで挑んでみたわけである。すると「相当凄い」という噂だったこの作品、本当に噂に違わぬ凄さだった。
物語は何者かに誘拐され15年間監禁された男が脱出し、犯人の正体と誘拐監禁の理由を追い求める復讐譚である。謎に満ちた不条理劇的な物語が一瞬も目を離せなくさせる。いやこれは確かに凄い、これまで観た韓国映画の中でも群を抜いている。凄い韓国映画は沢山あるが、『オールドボーイ』の凄さは、日本のコミックを原作にしているせいか、ドメスティックな韓国事情、映画話法に殆ど依拠していない、つまりそこに頼らない、という部分だ。だからこそ普遍的な(復讐の)物語として楽しめるのだ。その後アメリカでリメイクされたというのも頷ける話ではないか。
ただし血生臭さにおいて韓国映画ど真ん中で、そこにアイデンティティを感じる。陰惨かつ残虐な映像は韓国映画の真骨頂だろう。とはいえこの作品は従来的な韓国映画リアリズムに拘泥していない。コミック原作らしいひたすらフィクショナルなキャラと作り物めいた物語で構成されており、それにより「映画という絵空事」として際立っているんだ。どこかデヴィッド・フィンチャーぽさもある。シリアスではあるが「こんなややこしい復讐するかよ!」という馬鹿馬鹿しさもあり、リアリズムの退屈さから巧妙に逃走しているのだ。そこがいい。
まあしかしこの作品に限らず、韓国ノワールはとっくに評価が定まっていて、今更わあわあ言うのも周回遅れな気がしてしまうな。それとやっぱり、ノワールは多く観ると食傷するんだよ。それよりも今観たいのは韓国コメディなんだよな。
■アシュラ (監督:キム・ソンス 2016年韓国映画)
悪徳政治家と冷酷な検事の謀略に翻弄される刑事の泥沼を描いた韓国映画『アシュラ』を観た!主人公含め出てくる連中がみんな下衆!クズ!蛆虫!この糞どもがお互いを潰し合い血塗れの地獄へと堕ちてゆく展開はあまりにも狂っていて途中からゲラゲラ笑いながら観てしまった!いやあひでえ映画だったなあゲラゲラ(褒めてる
■ブラザーフッド (監督:カン・ジェギュ 2004年韓国映画)
朝鮮戦争に駆り出された兄弟の強烈な愛憎を壮大なスケールで描く韓国映画『ブラザーフッド』を観た!朝鮮戦争版『プライベート・ライアン』+『遠すぎた橋』といった内容で戦闘シーンは十分に迫真的だが、泣かせを強調する為にシナリオがかなり無理矢理な上に、ウェット過ぎるしおまけに長かったなー。
■シティ・オブ・バイオレンス-相棒- (監督:リュ・スンワン 2006年韓国映画)
幼馴染の死の真相を追う刑事が知った衝撃的な事実を描くこの作品、いわば『チング』に『江南ブルース』を足してタランティーノの味付けをした週刊漫画ゴラクの喧嘩漫画てな雰囲気で、風俗の描き方は古いしリアリティは希薄だが、それでも苛烈さに先鋭化する以前の韓国映画であるにもかかわらず韓国映画のエキスは十分に詰まっていてそれほど悪くないんだよな。
■僕の妻のすべて (監督:ミン・ギュドン 2012年韓国映画)
口うるさい女房と離婚するためにジゴロをけしかけ、浮気させようと企むしょうもない旦那のお話。まず、奥さんは確かに口数が多いけど単に元気がいいだけだし、おまけに個性的で情緒豊かで、さらに旦那の事はとことん愛しきっていて、魅力的だし実にいい女性なんだよ。対する旦那はとことん退屈な奴で、こんなだったらさっさと別れて正解だろ!?と思えてしまったね。
■バトル・オーシャン/海上決戦 (監督:キム・ハンミン 2014年韓国映画)
1597年、豊臣秀吉による侵略に対抗する朝鮮水軍の戦いを描いた歴史作品。韓国映画歴代興行No.1ということで興味が沸き観てみることに。膨大な戦艦で襲い掛かる豊臣軍に対し朝鮮水軍たった12隻、その絶望的な戦いは『300/スリーハンドレッド』を思い出させるが、地(海)の利を生かした朝鮮水軍の戦略にはひたすら驚かされるばかり、物語後半は延々とこの戦闘を描いており、これがとことん興奮させられるんだが、それでも上映時間110分とそれほど長くない潔さがまたいい。
■レッスル! (監督:キム・デウン 2018年韓国映画)
レスリング競技に懸ける父子家庭親子が主人公となるコメディなんだが、この映画の面白い部分はスポコン展開ではなく恋愛模様。主人公青年には幼馴染の女子がいて恋をしているのだが、その女子が想いを寄せていたのはなんと青年のお父さん!?でもお父さんにはこれっぽっちもその気はない!お父さんに猛烈にアタックする女子!困惑するお父さん!苦しみ悶える青年!というどうにも可笑しな三角関係が大爆笑を生む、設定の大勝利なコメディなんだな!なによりお父さん役のユ・ヘジンの朴念仁ぶりが最高!これは良作だった。
■猟奇的な彼女 (監督:クァク・ジェヨン 2001年韓国映画)
さてオレの韓国映画探求の旅、一応の〆として選んだのは2001年に公開され日本でも一世を風靡したこのロマンチック・コメディ。行動と言動が滅茶苦茶過ぎる女子だけど、なんだか気になって付き従っちゃう弱気男子のお話だが、「猟奇的」とは言うけれども女子の自由闊達なキャラは嫌味が無く、男子もまた基本に優しさと思いやりがあって、 これはこれでいいカップルであり、だからこそユニークなラブロマンスとして完成している。女子は思うがままに甘えさせてもらうことに安らぎを覚えているのだし、一見弱気に見えて男子には包容力があるのだ。とはいえ女子のハチャメチャさには実は悲しい理由があって、それは……と真相が明かされる泣かせるクライマックスも巧い。ただし小さいエピソードが並列され過ぎて後半までの展開が平板に思えたという部分もあるな。