韓国産ホラー映画『クローゼット』を観た。

クローゼット (監督:キム・グァンビン 2020年韓国映画

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どうもクローゼットというところにはオバケが潜んでいるらしい。

海外のホラー作品を観たり読んだりしているとたまにそういった描写に出くわす。小さな子供が自分の部屋のクローゼットに何か潜んでいるんじゃないかと妄想を大きくし、いや単なる考え過ぎだよ、と思ったところでバーン!とオバケさん登場みたいな。いや、これはちょっと単純化し過ぎたが、なぜかクローゼットが恐怖の源流になっているらしい、ということはなんとなく見聞きする。

だが、そうは言われてもどうも実感が湧かない。なぜならオレはこの年までずっと日本家屋にばかり住んでおり、クローゼットなどという設備には無縁だからだ。クローゼットに代わるものと言えば箪笥や押入れになるのだろうが、子供の頃それが怖かったか?というと全くそういうことはない。まあ和製箪笥ホラー、押入れホラーというのもあることはあるのだろうが、海外におけるクローゼットの扱いよりはマイナーなのではないだろうか。

韓国映画『クローゼット』はそのままズバリ、クローゼットに潜む悪霊を描いたものである。物語の主人公は事故で妻を亡くした男サンウォンとその娘イナ。二人は人里離れた洋館に越すが、お互いの心には溝が生じていた。そんなある日イナが友達が出来た、と言い始め、さらにイナの部屋からは不気味な異音が響くようになる。そしてイナは突然姿を消してしまうのだ。必死の捜索を続けるサンウォンだったが、そんな彼の前に行方を知っているという謎の男ギョンフンが現れる。

まあなにしろ説明するまでもなくイナの失踪の原因はクローゼットに潜む悪霊であり、イナはその悪霊によって異界に連れ込まれたという訳だ。謎の男ギョンフンというのは度重なる児童失踪事件を追う退魔師で、異界からイナを救うために電子機器やら呪術道具を持ち込み、悪霊と対峙するという訳である。こういった形で物語はホラー作品としてはオーソドクスすぎるぐらいストレートに進行してゆき、その悪霊の正体にちょっとした悲惨な事件を絡め、サンウォンと悪霊との最終対決へと向かってゆくというわけである。

物語としてはトビー・フーパー監督作『ポルターガイスト』にJ・A・バヨナ監督作『永遠のこどもたち』を足してナ・ホンジン監督の韓国ホラー『哭声 コクソン』のおどろおどろしさをほんの少し振りかけたようなものとなっているが、こういった作品の既視感を感じはするにせよ、新鮮味と言った部分については残念ながら見当たらない。いや、悪霊が包丁を持って追い掛けてくるところがちょっと物珍しかったか。それと退魔師のギョンフン、最初はハイテクぽい機器で悪霊を探しつつ最後は祈祷に頼るのだけれども、最初からそうしていろよと思わないでもない。とまあそんな訳でそれほど楽しんで観られる作品ではなかった。

それにしても韓国において悪霊退散となると宗教的にはどうなってしまうのか。韓国における宗教人口は「仏教が22.8%、プロテスタント18.3%、カトリック10.9%、儒教0.5%、園(ウォン)仏教0.2%の順(韓国の宗教 | 社会全般 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」)」となっており、仏教とキリスト教でほぼ二分する形(無宗教が46.7%)だが、退魔師ギョンフンの祈祷はあれこれ美味しい所を折衷したものに見え、いわゆるウィルスに対する混合ワクチンみたいなものなのか、とちょっと思ってしまった。しかしそれでは決め手に欠けるので、いつか悪霊に憑りつかれた時のために、自分の宗教はちゃんと決めておくべきだというのが本作の教訓だろう。