あれこれ幅広く聴いたのだ
今年もあれこれと沢山音楽を聴きました。実は去年、唐突にそれまで聴いていたEDMに飽きてしまい、1年の前半をリー・ペリー作品探索の旅に費やし、後半をプリンス作品コンプリートに血道を上げていたりしていましたが、それが終わってしばらくあれやこれやのジャンルをつまみ食いし、殆どカオス状態だったんですよね。それが今年の3月になって再びEDMの世界に戻ってきて、以来またぞろEDMばかり聴いています(……とはいえここ最近ちょっとピンク・フロイドを聴き直すようになってきたが)。
そんな訳でEDMを中心に、今年聴いて面白かった作品を紹介してみたいと思います。
EDM部門
Fabric 100/Craig Richards, Terry Francis & Keith Reilly
テクノ/ハウス中心にリリースされてきた「Fabric」シリーズの栄えある100番目はCraig Richards、Terry Francis、Keith Reillyという3人のDJがそれぞれアルバム1枚づつを担当する豪華3枚組!やはりお祭はこうじゃなきゃ!3者ともオーソドクスな選曲とDJプレイで特別新規なものはないにせよ、むしろ安心して聴ける(踊れる)スムースなテクノ/ハウスを展開していると言える。
Craig, Terry & Keith's Meshy Meander with fabric 100
Fabric Presents Amelie Lens
ナンバリング100以降にリリースされたAmelie LensのMixはバッキバキにダーク&ハードコアなテクノ・チューンがゴリゴリ唸りガッツンガッツン刺さりまくる、これはもう相当の歯応えのDJ Mix。
Amelie Lens - Solitude Tool (Fabric presents)
Fabric 99/Sasha
80年代後半から活躍するUKのレジェンドDJ、Sashaが満を持してのFabric参戦だが、今まで参加してなかったんだ?と思ったほど。ミステリアスなアンビエント・ハウスから始まりその後も静謐さを湛えながらメランコリックなメロディが揺らぐ美しいMix。
Baile-Amae Feat. Felicia Douglass (Sasha Fabric1999 Mix)
■Tunes 2011-2019/Burial
UKダブステップ界の鬼才中の鬼才、burialがテン年代にリリースしたシングル全17曲を網羅した150分にわたる2枚組アルバム。葬送曲のようなアンビエントトラックから鬼火の様に仄暗く燃え上がるメランコリックなダンスナンバーまでが並ぶ陰鬱な名作。
■Anjunadeep 11 / Jody Wisternoff & James Grant
![Anjunadeep 11 - Mixed By Jody Wisternoff & James Grant Anjunadeep 11 - Mixed By Jody Wisternoff & James Grant](https://m.media-amazon.com/images/I/51zrTqwEzWL._SL160_.jpg)
Anjunadeep 11 - Mixed By Jody Wisternoff & James Grant
- アーティスト:Wisternoff, Jody / Grant, James
- 発売日: 2020/02/07
- メディア: CD
最初に聴いたAnjunadeepのMixアルバムはこの作品だった。憂いを帯びたメロディはどこまでも美しく包み込むようなエモーショナルさに満ち、一曲一曲が単にDJ Mixのパーツではなくそれぞれに完成度の高い楽曲なのである。まるでよく出来たエレクトリック・ミュージックのコンピレーションを聴かされているようだ。BPMも抑え気味で、リスニングに非常に適している。この曲なんか実にいいじゃないか。
Leaving Laurel - Through And Through
■Kern Vol. 5 / Helena Hauff
ドイツの名門テクノ・レーベルTresorの人気DJ Mixシリーズ最新作はマシン・ファンクの女王Helena Hauff!これぞTresorと思わせる凶悪にゴリゴリの重量級テクノサウンド! いやこういうの聴くとフロアで踊りたくなってきちゃうよね。CDだと2枚組全31曲132分というロングミックス、D/L版ではさらにUnmixのトラック31曲が追加されこれを含めると5時間22分という長大なボリュームだ。クオリティもコスパも高くてこれは買いだろう。試聴はこちら。
■Help / Duval Timothy
Duval TimothyはUK/シエラレオネを拠点に活動するマルチアーティストだという。この『Help』は彼の4枚目のアルバムとなるが、一聴してその繊細なピアノワークと電子音楽との見事な融合振りに聴き入ってしまった。ジャンル的にはエレクトリック・コンテンポラリー・ポップということになるのだろうか。全体的にメランコリックであり、殆どにおいてナイーブなピアノ演奏がリードし、幾つかの曲でたおやかなヴォーカルが聴こえる。そして時折巧みなサウンドコラージュが顔を覗かせ、ごく稀に力強いエレキギターの音が響く。技巧的でありつつ心に訴え掛けようとするソウルを感じる。非常にユニークなアーチスト精神によって製作された好アルバムだということが出来るだろう。
■BRONSON / Bronson
グラミー賞ダンス/エレクトロニック部門ノミネート・アーチストであるODESZAとシドニーで活躍するディープハウス・ユニットGoiden Featuresによる新プロジェクト、BRONSONのニューアルバム。エモーショナルで力強いメロディと、美しくドラマチックな曲展開、時としてダークにメランコリックに響き渡る電子音、どの曲を聴いても実にバランスが良く完成度の高い名作アルバムで、今年を代表するエレクトロニック・アルバムの1枚となるかもしれない。
■Transmissions / Global Communication
『76:14』がリマスターされ、豊かな音質へと蘇って再発されることとなった。さらにこのアルバムに加えて、Chapterhouseのリミックス作『Chapterhouse Retranslated by Global Communication - Blood Music: Pentamerous Metamorphosis』、これまでのシングル&リミックスを集めた『Curated Singles & Remixes』を加えた3枚組CDボックスセット『Transmissions』としての発売である。エレクトロニック・ミュージック・ファンにとってこれはもう必携のボックスセットだろう。
■Auraa / Ellen Allien
ハードコア・テクノの女王Ellen Allien、待望のニューアルバム!期待通りのひたすらにカッコよくゴリゴリにハードなフロア仕様テクノで、聴くほどに頭にダンス衝動が湧き上がって止まらない!これはコロナ禍でどんよりした世相とクラブ事情を叩き潰す為に鳴らされている音だ!殺っちめえ!殺っちまってください姐さん!あっしはどこまでも付いていきますよ!
■Silver Ladders / Mary Lattimore
今回もズコズコだブンブンだと散々騒いだオレだが、そんなオレでも静寂が欲しくなることがある。そこでこれ、アンビエント・ハープの才媛Mary Lattimoreのニューアルバム『Silver Ladder』。静謐と温もりの籠ったアコースティックハープの調べがオレをとことんリラックスさせてくれるのだ。ハープってこんなにいいものだったのか。最近聴いたアンビエント・サウンドの中でも白眉。これは今年のベストアルバムの1枚になるだろう。SlowdiveのNeil Halsteadがプロデュース。
その他あれこれと雑食していた