2023年まとめ:今年面白かった音楽あれこれ

年の瀬も押し迫ってまいりました。今週は年末スペシャル(?)ということでオレが今年面白かった本やコミック、音楽や映画の総まとめをしていきたいと思いますのでよろしくお付きあいください。というわけで今日はその第1弾、今年面白かった音楽です。

【目次】

今年面白かったエレクトロニック・ミュージック・アルバム

今年もエレクトロニック・ミュージックばかり聴いていた1年でした。特に後半は、Spotifyの導入で聴くアルバムの数が増え、文字通り山ほどのエレクトロニック・ミュージック・アルバムを聴くことができました。しかし60過ぎてエレクトロニック・ミュージックばかりガンガン聴いてるオレも凄いもんだなオイ。その中で特に面白かったアルバムを並べてみたいと思います。

Soft Landing / Art School Girlfriend

Soft Landing

Soft Landing

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2017年から活動するArt School Girlfriendはウェールズ出身のミュージシャン、プロデューサー、シンガーソングライターであるPolly Louise Mackeyのプロジェクト名だ。アルバム『Soft Landing』は彼女の2枚目のアルバムとなり、エレクトロニックポップ、インディーロック、シューゲイザーといったジャンルに分類されるだろう。そのサウンドは透明感と浮遊感に満ち、往時のトレイシー・ソーンを思い出させる気だるげなヴォーカルと、シューゲイザーテイストの疾走感溢れるエレクトロニック・サウンドで構成されたものとなっている。今後の活躍が楽しみなアーチストだ。

Signals in My Head / DJ Manny

DJ Mannyはジューク/フットワークジャンルで活躍するアメリカ・シカゴ出身のDJ/プロデューサーだ。彼が2021年にPlanet Muからリリースしたアルバム『Signals in My Head』は160bpmの超高速ダンスミュージックであると同時に、甘くロマンチックなメロディも兼ね備えた異色作である。あたかもLTJブケム全盛期のドラムンベースにR&B要素を加味したようなそのサウンドからは、ジューク/フットワークジャンルを飛び越えた甘美で強烈な魅力を感じさせるだろう。

Gentle Confrontation / Loraine James

ロンドンを拠点として活躍するロレイン・ジェイムスはジャンルにとらわれない実験的なサウンドを作り出すミュージシャンだ。Hyperdubからリリースされた『Gentle Confrontation』は彼女の5作目のアルバムとなり、サウンドのトーンは水のようなアンビエントと変性したリズム、ASMRビートを交差させ、エモーションに満ちた包み込むようなエレクトロニック・ポップ・ミュージックとして完成している。

33 Tours Et Puis S’en Vont / Laurent Garnier 

80年代後半からキャリアをスタートさせ、現在も第一線で活躍するベテラン中のベテラン、ローラン・ガルニエが8年振りにリリースしたニューアルバムがこの『33 Tours Et Puis S’』だ。CDだと2枚組、全19曲が収録された本作は、4つ打ちを基本とするオーソドックスなダンスアルバムながらも、テクノハウス、エレクトロアシッド、ブロークンビーツ、ドラムンベースといった多彩な表情を持ち、その中でガルニエらしい熱狂的なピークを迎えることになる。絶妙なバランス感覚と高いクオリティでもって構築されたこれらの音は、お馴染みのガルニエであると同時に2020年代の新たなガルニエであり、曲のそこここに新しい喜びを発見することができるだろう。

Sus Dog / Clark 

Sus Dog

Sus Dog

  • Throttle Records
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常に多彩なEDMサウンドに挑戦し変幻自在な音を操る男Clark、毎回毎回表情の違うアルバムに驚かされるが、そこに彼の貪欲な創作意欲とそれを可能にする高い音楽性を感じさせる。今作ではレディオヘッドトム・ヨークがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、さらに収録曲「Medicine」ではヴォーカル&ベースで参加、全体的にもポップでありながら実験的な側面も見せつける凝ったサウンドでまたまた彼の新たな側面を見せる好アルバムとなっている。

AsOne² / As One

AsOne²

AsOne²

  • De:tuned
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様々な変名ユニットを使うKirk Degiorgioだが、その中でもAs Oneは最も有名なユニットだろう。そのAs Oneの待ちに待った新作アルバム『AsOne²』は共にライブを成功させたCatherine Siofra Prendergastと新たなデュオを結成し製作された作品となり、これまで以上にエモーショナルでメロディックなアルバムとして完成している。美しくメランコリックなメロディ、煌めくようなエレクトリック・サウンド、スペイシーな楽曲コンセプト、確実にキープされ畳み掛けてくるリズム、そしてアシッドなドライブ感が躍る、これぞエレクトリック・ソウルと言える至高のアルバムだ。

 

Release Spirit / Khotin

Release Spirit

Release Spirit

  • Ghostly International
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カナダ出身のプロデューサー、Khotinによる最新アルバムはレトロ・テイストのシンセを基調にしたアンビエント&ニュー・エイジなチルアウト・ミュージック。幻想的で柔らかなメロディは懐かしさと暖かさに満ち、ふわりとした落ち着きをもたらせてくれる。自然に抱かれて安らいでいるような、あるいは夜の寝室で少しずつまどろんでいくような、穏やかで満ち足りた安心感を覚えさせる素晴らしい曲の数々が並ぶアルバム。特に「You Look So Beautiful Today」と囁く「3 pz」の静かなポジティビティは心に豊かな温もりを感じさせてくれるだろう。

今年面白かったDJ-Mixアルバム

奇しくも全員女性DJになってしまいました。でも断然女性DJのほうが元気いいんだよなあ。

DJ-Kicks:HAAi / HAAi

人気DJミックスシリーズDJ-Kicksの第68弾をキュレーションするのはロンドンを拠点として活躍するオーストラリア人DJ/プロデューサーのHAAi。HAAiはTeneil Throssellのステージネームで、これまで「Baby, We’re Ascending」と「Systems Up, Windows Down」という2つのアルバムをリリースし、2018年のBBC Radio 1 Essential Mix of the Yearを受賞している。今作では彼女自身の新曲3曲とJon HopkinsやKAM-BUとのコラボレーションが含まれ、テクノ、エレクトロ、サイケデリックアンビエントなど幅広いジャンルをカバーし、フロアの熱狂を伝える高bpmのダンスチューンがつるべ打ちとなっている。

fabric presents Helena Hauff / Helena Hauff

「マシーン・ファンクの女王」ことHelena Hauffはドイツのハンブルクを拠点に活動するDJ/プロデューサー。彼女はアナログ機器を中心的に使用して録音する「シンプルなテクノとエレクトロトラック」で知られており、アシッドハウスEBM、インダストリアルミュージックから影響を受けている。その彼女がUK老舗レーベルFabricからリリースしたMixはテクノ、エレクトロ、インダストリアル・エッジのエレクトロニカを取り上げ、90年代初頭のものからエクスクルーシヴとなるMagda Rotの「Alter Simus」まで、それぞれのシーンのホットなトラックが並んでいる。

DJ-Kicks:Cinthie / Cinthie

!K7レーベルの人気DJ-MixシリーズDJ-Kicksから2022年にリリースされたCinthieのDJ-Mixアルバム。ベルリンを中心に活躍し20年以上のキャリアを持つ彼女が紡ぎ出すMixは、シカゴハウスやガラージ、レイヴやニューディスコといった幅広いジャンルを網羅し、クラブの楽しさを伝える非常にファンキーかつグルーヴィーなサウンドに満ち溢れている。

fabric presents Saoirse / Saoirse 

ロンドンの老舗クラブFabricのDJ-Mixシリーズ新作を担当するのはアイルランド出身のDJ/プロデューサーSaoirse。ディープ・ハウス/テクノを中心に4つ打ちのシンプルなビートで確信的に攻めてゆく王道のフロア・スタイル。

Global Underground #44: Amelie Lens - Antwerp / Amelie Lens

Global Underground #44: Amelie Lens - Antwerp

イギリスのGlobal Undergroudレーベルからリリースされている人気DJ Mixシリーズ新作はベルギー出身のテクノDJ&プロデューサーであるAmelie LensのMix。これがもう全篇潔いほどにゴリゴリのテクノが並び、ダーク&ハードな展開に打ち震えてしまった。Amelie Lensは以前にもUK老舗レーベルFabricからバッキバキなハードコアテクノMixをリリースしていたが、これもまた相当にクオリティの高いMixだったな。このヘヴィーな音響がたまらない。

今年面白かったリイシュー/ベストアルバム

プリンスとニュー・オーダーデヴィッド・ボウイ。もうオレにとって三題噺みたいなもんですね。これにペット・ショップ・ボーイズが加わったらもうオレは無敵です。

Diamonds and Pearls (Super Deluxe Edition) / Prince & The New Power Generation

怒涛のように続くプリンスのリマスター&未発表曲収録アルバムリリース、今回は1991年にリリースされたPrince & The New Power Generation名義によるアルバム『Diamonds and Pearls』。これが7CD+1BDというとんでもない重量級BoxSetで、特に未発表曲とライヴのボリュームがハンパ無く、聴けども聴けども汲みつくせない楽しさに溢れています。

Up All Nite with Prince: The One Nite Alone Collection / Prince

こちらは2002年にリリースされたプリンスの『Up All Nite With Prince: The One Nite Alone Collection』のリイシューで、4CD+1DVDの構成。CD1のピアノ弾き語り始まり、CD1,2で怒涛のライヴが展開し、CD4のちょっと寛いだアフターショウ・ライヴへと続く。もはやプリンス三昧!

Substance 1987 (2023 Reissue) / New Order

SUBSTANCE 1987 (4CD DELUXE EDITION)

SUBSTANCE 1987 (4CD DELUXE EDITION)

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1987年にリリースされたニュー・オーダーのベストアルバム『Substance』のリマスター・リイシュー盤。CD1にシングル曲A面、CD2にシングル曲B面、さらに今回のリイシュー盤の追加ディスクとしてCD3に「ALTERNATIVES & B-SIDES」、CD4に「LIVE FROM IRVINE MEADOWS AMPHITHEATRE, CALIFORNIA 1987」と銘打たれたライヴ音源が収録されている。リマスターで蘇るニュー・オーダーの輝き渡るエレクトロニック・ビートを聴け!

Smash - The Singles 1985-2020 / Pet Shop Boys

PSBがデビュー時よりリリースし続けていた全シングル曲55曲を一堂に会した完全シングル・コレクション集、3CD+2Blu-rayのBoxSet。デビューから近作までPSBの素晴らしいヒット曲が全網羅されているだけでも聴き応えたっぷりでが、本当の目玉は2枚のBlu-rayに収録された全66曲に渡るミュージック・ビデオ。PSBのMVがこういったまとまった形でリリースされるのは初めてで、大変貴重なものとなっています。

Space Oddity [2019 Mix] / David Bowie

デヴィッド・ボウイが1969年にリリースした2枚目のアルバム『スペース・オディティ』を、盟友トニー・ヴィスコンティがボウイの死後となる2019年にミックスし直したアルバム。このアルバムの特異な点は、単なるリマスターではなく、ヴィスコンティが再解釈した形で『スペース・オディティ』を蘇らせた音になっているという部分なんですね。そしてこれが様々な部分でオリジナルと違う印象のMixとなっており、大いに驚かされたんですよ。