Miles In France 1963 & 1964 - Miles Davis Quintet: The Bootleg Series, Vol. 8
『Miles in France - Miles Davis Quintet 1963/64: The Bootleg Series, Vol. 8』は、マイルスの音楽的な変遷の中でも極めて重要な時期【第2期黄金クインテット】全5公演の記録であり、1963年7月、南フランスで行われたアンティーブ国際ジャズ・フェスティヴァル3公演(7月26日,27日,28日)と、1964年10月1日パリ・ジャズ・フェスティヴァル(ファーストとセカンド)の2公演を収録している。1963年の録音には、ジョージ・コールマン(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds)が、1964年の録音にはウェイン・ショーターがテナー・サックスで参加している。
ここ暫くずっと、マイルス・デイヴィスばかり聴いている。去年の今頃に突然ジャズに目覚め、1年掛けてジャズの名盤や良作を漁ってきたが、最終的に辿り着いたのはマイルス・ディヴィスだった。だからもう、ジャズを聴いているというよりも、マイルス・ミュージックを聴いているといってもいい。マイルスのオリジナル・アルバムは殆ど収集し、今はあれこれのライブ音源を漁っている最中だ。
どうもこういった「1ジャンル1アーチストにハマりそればかり徹底的に聴く」ということをオレは定期的にやってしまうようで、以前はプリンスのアルバムを全て集めてみたり、レゲエのリー・”スクラッチ”・ペリーの主要アルバムを殆ど収集してしまったことがあった。彼らはそのジャンルにおける天才であり巨人であり、同時にマイルス同様比すべき者のいない唯一無二の存在で、オレはそういったアーチストにとことん惚れ込んでしまうタイプなのらしい。
とはいえ、ジャズを聴きマイルスを聴いていても、それらに対する音楽的ボキャブラリーはまるで増えることがなかった。あまり文献や記述に当たらず、試聴して気に入ったら臆せずどんどんアルバムを購入してしまうからだ。一応ジャズベスト100とかマイルス名盤紹介などといったネット記事を参考にはしていたが、背景や歴史や人脈図といったものにあまり興味がなく、また演奏テクニックや音楽の構造といったものもよく分かっていない。ただ単純に感覚的に「これはいい」と思ったものを聴く、知識よりも自分の耳だけを頼りにこれら音楽を聴いていた。
だから今回購入した『Miles In France 1963 & 1964 - Miles Davis Quintet: The Bootleg Series, Vol. 8』にしても、それがマイルス・デイヴィスにとってどのような位置と歴史とにある部分で録音されたものなのかをオレはよく分かっていない。ただそれだとアルバムの紹介にならないので、ここはAIに頼ってアルバムの背景を探ってみた。以下はBingAIで検索した1963年から1964年にかけてのマイルスの動向となる。
マイルス・デイヴィスの1963年から1964年の活動は非常に重要な時期でした。この期間に彼は「モーダル・ジャズ」の一環として、いくつかの代表的なアルバムをリリースしました。
### 1963年
『Seven Steps to Heaven』: 1963年にリリースされたこのアルバムは、ベーシストのロン・カーターとドラマーのビリー・ハチントンが参加し、彼の音楽の新しい方向性を示しています。
『Quiet Nights』:このアルバムは、ブラジルのボサノヴァの影響を受けた作品で、ボサノヴァのスタイルを取り入れたモーダル・ジャズの一例です。### 1964年
『Miles Davis in Europe』:1964年に録音されたこのライブ・アルバムは、ヨーロッパツアー中のパフォーマンスを収録しており、彼のライブ演奏の一端を垣間見ることができます。
『My Funny Valentine』:このアルバムは、1964年のカーネギーホールでのライブ録音で、彼のバンドの即興演奏の素晴らしさを示しています。この時期のマイルス・デイヴィスは、ジャズの新しい地平を開拓し、多くのミュージシャンに影響を与えました。彼の音楽は、モダン・ジャズの発展において重要な役割を果たしました。
オレ的な物凄く大雑把な捉え方とすれば、マイルスの1963年から1964年というのは、1959年リリースの『Kind of Blue』以降、1969年リリースの『Bitches Brew』以前の、いわゆる「電化される前のマイルスの最も充実した期間の、そのど真ん中」ということになる。もっと音楽史的に言うならばマイルスの【第2期黄金クインテット】というのにあたるのらしい。
小川隆夫による著作『マイルス・デイヴィスの真実』によると「1960年代にマイルスが結成していた〈黄金のクインテット〉と呼ばれるグループは、1964年夏に最後のメンバーであるウエイン・シューター(ts)が加入したことで、全員が勢揃いする」とあり、それまでメンバー交代の相次いだクインテットがようやく落ち着きその真価を発揮した時期だということができるだろう。つまり、「モダン・ジャズのマイルス」が最も輝いていたのがこの時期だともいえるのだ。
とまあ、能書きはもういい。よく分かっていないことを書き並べるのはどうにも面映ゆいからだ。マイルス・デイヴィスの6枚組未発表ライブBOX『Miles In France 1963 & 1964 - Miles Davis Quintet: The Bootleg Series, Vol. 8』。6枚のCD、合計5時間47分にわたって響き渡るマイルスのトランペット、充実しきったクインテットの演奏、それを聴くことができればもう至福ではないか。聴けば聴くほどに味わい深く喜びを感じる、そんな音源だ。素晴らしい。そしてオレのマイルス探求の旅はまだ終わらない。
(なお「The Bootleg Series」とタイトルにありますが、SONY MUSICから発売されているきちんとした正規品で、音質も申し分ありません)