【ブルース・リー 4Kリマスター復活祭2020】で『ドラゴンへの道』を観たッ!アチョオウウウウウウ!!!

■ドラゴンへの道 (監督:ブルース・リー 1972年香港映画)

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ブルース・リー生誕80周年記念!ということでブルース・リー主演4作品を4Kリマスターで公開するという企画【ブルース・リー4Kリマスター復活祭】、『ドラゴン危機一発』『ドラゴン怒りの鉄拳』に続き今回は『ドラゴンへの道』を観てきた!ちなみにかつてブルース・リー・ブームの只中にいたオレについてあれこれ書いた記事はこちらにあるのでお暇な方は読むといいのだと思う。

ところで映画の内容と関係なく、ちょっと疑問に思ったことがあるのだが、例えば『ドラゴン危機一発』は「危機一発」だし、『ドラゴン怒りの鉄拳』は「怒りの鉄拳」だけれど、『ドラゴンへの道』は「への道」と呼んでいいものなのだろうか。「への道」、すなわち「へのみち」。なんだか気の抜けたような呼称である。そこん所ブルース・リー・ファンの方々はどう対処なさっておられるのか気になっていたのである。そんな事をTwitterで呟いたら、カンフー映画の師である侍功夫さんから「ドラ道じゃないかな?」という指摘が。という訳でここからは『ドラゴンへの道』を『ドラ道』と呼ばせていただくこととする。 

物語はイタリアで料理店を経営している女店主のチェン(ノラ・ミャオ)が、ギャングの陰湿な地上げに対抗するため、香港から用心棒としてタン・ロン(ブルース・リー)を呼び寄せることから始まる。タン・ロンは電光石火でギャングどもを退治するが、煮え湯を飲まされたギャング団ボスはアメリカから強力な空手の達人・コルト(チャック・ノリス)を呼び寄せ、そして壮絶なバトルが始まるのだ。今作でリーは主演のみならず製作・監督・脚本・武術指導・音楽監修まで一人で兼ねている。彼なりの「完全なカンフー映画」を目指したのが今作だったのではないか。

さてこの『ドラ道』、リー作品としては『燃えよドラゴン』の次に愛着のある作品だったりする。例によって年寄り自慢となるが、この作品も日本初公開時に子供の頃観に行っており、しっかりと楽しめた記憶があるのだ。前回のエントリでも書いたが、当時ガキンチョだったオレは『危機一発』と『怒りの鉄拳』の物語の暗さがどうも肌に合わなくて、それほど熱狂的に評価していなかった。しかしこの『ドラ道』は前2作の復讐譚と違い、雇われ用心棒の活躍という物語になっており、ラストもハッピーエンドの部類で、安心して観られたのである。

オレはこの『ドラ道』で、ブルース・リー映画、さらには映画全般の中でも相当気に入っているシーンがある。それは冒頭、ローマにやってきたばかりのタン・ロンが、腹を空かせてレストランに入るものの、メニューが読めずに適当に注文したらスープばかり何皿もやってきて途方に暮れる、というシーンだ。最高に可笑しいシーンという訳ではないのだが、「スープ皿が所狭しと置かれたテーブル」というビジュアルがなぜか強烈に印象に残っていて、『ドラ道』というと「スープ皿の映画」と思ってしまうし、レストランでメニューを見せられると「スープばかり頼んじゃったりして」などとついつい思ってしまうのである。こんなことを思うのは世界でオレ一人のような気がするのだが、そんな部分でも愛着のある映画なのだ。

『ドラ道』ではこのようなコメディタッチのシーンが幾つか挿入される。スープの飲み過ぎで腹を壊した主人公がその後頻繁にトイレに駆け込むのである。知らずにコールガールに着いて行きあわてふためくシーンも情けなさを醸し出し可笑しい。「ブルース・リーの最強なカンフーを堪能したい!」と鼻息荒くして劇場に足を運ぶと、トイレにばっか行ってるか神妙な顔しているリーさんの姿ばかり拝まされて呆然としてしまうだろう。しかしこんな茶目っ気は『怒りの鉄拳』でも垣間見られたので、リーは意外とこういった役柄が好きだったのかもしれない。

とは言え、もちろん中盤からはリーのアクションが目白押しだ。今作でのリーのアクションは、監督も兼ねているという事もあってか、非常に見易く、何をやり、何が起こっているのかが理解し易くなっている。その「見易いアクション」というのは、リーが己の鍛え上げられた肉体と必殺のカンフーファイトをいかに詳らかに映像として焼き付けられるか考え抜いた結果のものなのだと思う。相手も含めてスクリーンに全身像を必ず入れ、それはアクションシーンの興奮というよりも演武シーンの迫力を見せつけているかのようだ。それは作品内におけるリーのカンフーシーンだけを繋いでずっと眺めていたいぐらい美しくそしてエキサイティングなのだ。

その興奮が最高潮に達するのは言うまでもなく映画終盤のコロシアムでの死闘となる。しかもここで主人公と対峙する空手家をあのチャック・ノリスが演じているというのだから物凄い。ブルース・リーチャック・ノリス、これはもう用心棒対マフィアの刺客といった物語から離れ、地球最強、いや宇宙最強の男を決める頂上決戦の如き様相を呈しているではないか。ほぼ互角と思われる二人の戦いはそのすっきりしたアングルによる撮影により、実際の最強武闘家同士による他流試合を堪能させられているかのような迫真的な醍醐味がある。やはり美しくエキサイティングなのだ。オレはカンフー映画にそれほど堪能ではないので口幅ったい事は言えないが、このシーンだけでもカンフー映画史に残るような壮烈さを描き出していたのではないだろうか。

他に蛇足として、香港映画初と言われるローマのロケはかの地の史跡の映像がポストカードのように並べられ、監督であるリーの海外での高揚と楽しさが伝わってくるような微笑ましさがあった。また、物語では「カンフーは銃に対して無力か」という問いの答えが用意されており、この辺りも実に考え抜かれていたと思う。そして、この作品をひときわ豊かなものにしているのはヒロイン役で登場するノラ・ミャオの素晴らしさだろう。50年前の作品とは思えない今でも十分通用するファッショナブルさと華があり、同時に人懐こいキャラクターがあった。主人公とのロマンス展開が一切無い、という部分もリーの淡白さが伺えるような気がした。

それにしても映画を観ていたら「楳図かずおが出てる!?」と一瞬思ってしまった登場人物がいたんだが、ちゃんと調べたらウェイ・ピンアオという俳優さんだった……。

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映画『ブルース・リー 4K リマスター復活祭2020』予告編

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