BOOK

『三体』劉慈欣による絵本『火守(ひもり)』を読んだ

火守(ひもり)/ 劉 慈欣 (著)、池澤 春菜 (訳)、西村 ツチカ (絵) 人はそれぞれの星を持っている。病気の少女のため、地の果てに棲む火守の許を訪れたサシャは、火守の老人と共に少女の星を探す過酷な旅に出る--。世界的SF作家が放つ、心に沁みるハート…

アンディ・ウィアーの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は最高に面白い傑作SFなのでみんなも読むといいんだ!

プロジェクト・ヘイル・メアリー /アンディ ウィアー (著)、小野田 和子 (訳) 『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント!未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある…

2021年まとめ:今年面白かった本

今年読んだ本は50冊ちょっとでしょうか、去年のまとめ記事読んだらやはり50冊くらいで、まあオレが1年に読めるのは頑張ってこの冊数ってことみたいですね。 やはり今年一番衝撃を受けたのはフランスの文芸作家ミシェル・ウエルベックとの出会いでしょう。文…

『三体』の劉慈欣によるSF短篇集『円 劉慈欣短篇集』

円 劉慈欣短篇集 /劉 慈欣 (著)、大森 望 (訳)、泊 功 (訳)、齊藤 正高 (訳) 十万桁まで円周率を求めよという秦の始皇帝の命により、学者の荊軻は始皇帝の三百万の軍隊を用いた驚異の人間計算機を編みだすのだが……『三体』抜粋改作にして星雲賞受賞作「円」…

現代フランス文学を3作読んでみた

ミシェル・ウエルベックの作品は全部読み終わってしまったが、現代フランス文学というのもなかなか面白いものだなと思い、3作ほどセレクトして読んでみることにした。作者・タイトルはそれぞれオリヴィエ・ゲースの『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』、アントワー…

最近読んだSF:『時間の王』『ダリア・ミッチェル博士の発見と異変 世界から数十億人が消えた日』

時間の王 / 宝樹 (著)、稲村 文吾 (訳)、阿井 幸作 (訳) 時間の王 作者:宝樹 早川書房 Amazon 俺は時間の王だ――自分の人生のあらゆる時間を自由に通り抜けられる。些細な事故に遭ったせいで思い出した瞬間に戻ることができる能力を手に入れた主人公は、子供…

最近読んだSFやらなにやら:『ネットワーク・エフェクト マーダーボット・ダイアリー』『破滅の王』

ネットワーク・エフェクト マーダーボット・ダイアリー / マーサ・ウェルズ (著)、中原 尚哉 (訳) ネットワーク・エフェクト マーダーボット・ダイアリー (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ 東京創元社 Amazon かつて大量殺人を犯したとされたが、その記憶…

ミシェル・ウエルベックのすべての邦訳作品を読んだ

ミシェル・ウエルベック オレとミシェル・ウエルベック フランスの現代文学作家、ミシェル・ウエルベックの全邦訳作品を読み終えた(小説8作、評論2作)。 最初にウエルベック小説と出会ったのは池澤夏樹編集による世界文学全集の『短編コレクション2』だっ…

ミシェル・ウエルベックの評論『ショーペンハウアーとともに』を読んだ

ショーペンハウアーとともに / ミシェル・ウエルベック 《世界が変わる哲学》がここにある! 現代フランスを代表する作家ウエルベックが、19世紀ドイツを代表する哲学者ショーペンハウアーの「元気が出る悲観主義」の精髄をみずから詳解。その思想の最奥に…

ミシェル・ウエルベックの評伝『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』を読んだ

H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って / ミシェル・ウエルベック 『服従』『素粒子』で知られる《世界一センセーショナルな作家》、ミシェル・ウエルベックの衝撃のデビュー作、ついに邦訳! 「クトゥルフ神話」の創造者として、今日の文化に多大な影響を与…

スタニスワフ・レムのSF長編『インヴィンシブル』を読んだ

インヴィンシブル / スタニスワフ・レム 『ソラリス』で知られるSF小説界の巨匠、スタニスワフ・レム。哲学的思弁を持った彼の作品はオレも大好きであれこれの作品を愛読していた。そのレムの選りすぐりの作品を国書刊行会が「スタニスワフ・レム・コレクシ…

フランスにイスラーム政権が誕生した近未来/ミシェル・ウエルベックの『服従』を読んだ

服従/ミシェル・ウエルベック 二〇二二年仏大統領選。極右・国民戦線マリーヌ・ル・ペンと、穏健イスラーム政党党首が決選に挑む。しかし各地の投票所でテロが発生。国全体に報道管制が敷かれ、パリ第三大学教員のぼくは、若く美しい恋人と別れてパリを後に…

ミシェル・ウエルベックの『セロトニン』を読んだ

セロトニン / ミシェル・ウエルベック 巨大化企業モンサントを退社し、農業関係の仕事に携わる46歳のフロランは、恋人の日本人女性ユズの秘密をきっかけに“蒸発者”となる。ヒッチコックのヒロインのような女優クレール、図抜けて敏捷な知性の持ち主ケイト、…

ミシェル・ウエルベックの『プラットフォーム』を読んだ

プラットフォーム / ミシェル・ウエルベック 男ミシェル、41歳独身。父が殺された。けれど不思議と悲しみが湧かない。女ヴァレリー、28歳。旅行会社のエリート社員。思春期に他人への関心を失ったまま成長した。南国タイで、二人は出逢う―何気ない運命のよ…

ミシェル・ウエルベックの『ランサローテ島』を読んだ

ランサローテ島/ミシェル・ウエルベック カナリア諸島のランサローテ島。地震と火山の噴火によって破壊された荒涼たる大地。赤、黒、薄紫の岩場に生える奇妙な形状のサボテン群。20世紀最後の年の1月、4人の男女がそこで出会う。自由とカルトをめぐる物語。…

ミシェル・ウエルベックの『ある島の可能性』を読んだ

ある島の可能性/ミシェル・ウエルベック 物語は世界の終わりから始まる。喜びも、恐れも、快楽も失った人類は、ネオ・ヒューマンと呼ばれる永遠に生まれ変われる肉体を得た。過去への手がかりは祖先たちが残した人生記。ここに一人の男のそれがある。成功を…

ええええッ!?なんとオレがライターデビュー、なのかッ!?/『ジョージ・A・ロメロの世界 映画史を変えたゾンビという発明』

ジョージ・A・ロメロの世界 映画史を変えたゾンビという発明 映画の歴史を変えた男、ジョージ・A・ロメロとは何者だったのか 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)、『ゾンビ』(1978年)、『死霊のえじき』(1985年)の「ゾンビ」三部作により、映画…

ミシェル・ウエルベックの『地図と領土』を読んだ

地図と領土/ミシェル・ウエルベック 孤独な天才芸術家ジェドは、個展のカタログに原稿を頼もうと、有名作家ミシェル・ウエルベックに連絡を取る。世評に違わぬ世捨て人ぶりを示す作家にジェドは仄かな友情を覚え、肖像画を進呈するが、その数カ月後、作家は…

ミシェル・ウエルベックの『闘争領域の拡大』を読んだ

闘争領域の拡大/ミシェル・ウエルベック 闘争領域。それはこの世界、自由という名のもとに繰り広げられる資本主義世界。勝者にとっては快楽と喜びが生まれる天国、敗者にとってはすべて苦しみ、容赦ない攻撃が続くシビアな世界。日々、勝者か敗者かの人生が…

西欧文明の終焉を描くフランス文学の極北:ミシェル・ウエルベック『素粒子』

素粒子/ミシェル・ウエルベック 人類の孤独の極北に揺曳する絶望的な“愛”を描いて重層的なスケールで圧倒的な感銘をよぶ、衝撃の作家ウエルベックの最高傑作。文学青年くずれの国語教師ブリュノ、ノーベル賞クラスの分子生物学者ミシェル―捨てられた異父兄…

『短篇コレクション 2 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)』を読んだ

「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 短編コレクション」は以前第1集を読み、その想像力豊かな粒揃いの作品群に非常に感銘を覚えた。短編と言いつつどれも濃厚で重量級の作品ばかりで、いつもはSF小説ばかり読んでいるオレが「文学スゲエ……」と心打ちのめされ…

『不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選』を読んだ

不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選 / J・J・アダムズ(編)、佐田千織・他(訳) 広大無比の銀河に版図を広げた星間国家というコンセプトは、無数のSF作家の想像力をかき立ててきた。オースン・スコット・カード、ロイス・マクマスター・ビジョルド、G・R・R・マー…

『AKIRA』の世界観を支えたクリエイターの初作品集『高畑聡 アニメーション精密背景原画集』

アニメーション精密背景原画集/高畑聡 本書はアニメーション制作現場における「背景原図」という素材に着目した書籍である。 背景原図とは、背景美術を制作するために必要な前段階の作業にて生まれる素材であり、背景原図の出来の善し悪しがそのまま背景美…

最近読んだSF/『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける』『量子魔術師』

こうしてあなたたちは時間戦争に負ける/アマル・エル=モータル&マックス・グラッドストン (著)、山田 和子 (訳) 〔ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/英国SF協会賞受賞〕時空の覇権を争う二大勢力〈エージェンシー〉と〈ガーデン〉の工作員レッドと…

《未来の文学》最終巻『海の鎖』は粒揃いのSF短編集だった

海の鎖/ガードナー・R・ドゾワ他 (著)、伊藤典夫 (訳) 最後の危険なアンソロジーがついに登場! 〈異邦の宇宙船が舞い降りた……何かが起こる、 誰も逃げられない……少年トミーだけは気づいていた〉 破滅SFの傑作として名高い表題作のほか、 日本を代表するSF翻…

京極夏彦の『遠巷説百物語』を読んだ

遠巷説百物語 / 京極夏彦 「遠野は化け物が集まんだ。咄だって、なんぼでも来る」 盛岡藩筆頭家老にして遠野南部家当主の密命を受けた宇夫方祥五郎は、巷に流れる噂話を調べていた。 郷が活気づく一方で、市場に流れる銭が不足し困窮する藩の財政に、祥五郎…

ドン・ウィンズロウ中編集『壊れた世界の者たちよ』 を読んだ

壊れた世界の者たちよ / ドン ウィンズロウ (著)、田口俊樹 (訳) ニューオーリンズ市警最強の麻薬班を率いるジミーは、ある手入れの報復に弟を惨殺され復讐の鬼と化す―。壊れた魂の暴走を描く表題作をはじめ、チンパンジーが銃を手に脱走する「サンディエゴ…

中国SFアンソロジー『中国史SF短篇集-移動迷宮』を読んだ

中国史SF短篇集-移動迷宮 / 大恵 和実 (編・訳)、上原 かおり (訳)、大久保 洋子 (訳)、立原 透耶 (訳)、林 久之 (訳) 孔子は時空を越え、諸葛亮孔明はコーヒーの栽培に成功し、マカートニー伯爵は乾隆帝の迷宮に閉じ込められ、魯迅は故郷でH・G・ウェルズ…

風間賢二の『スティーヴン・キング論集成: アメリカの悪夢と超現実的光景』を読んだ

スティーヴン・キング論集成: アメリカの悪夢と超現実的光景/風間賢二 スティーヴン・キング研究の第一人者、風間賢二によるキング論の集大成! 「関心のあるパートから読んでいただいて一向にかまわないが、冒頭から順番に読み進めることで、キングの作家…

ジョー・R・ランズデールの魔界西部劇『死人街道』を読んだ

死人街道 / ジョー・R・ランズデール (著)、牧原勝志(編集)、植草 昌実 (訳) 神を疑い、呪い、畏れながらも、神の命ずるまま、邪悪なるものを滅ぼすために荒野を旅する無頼の牧師、ジェビダイア・メーサー。彼の行く手を阻むものはその最期に、聖句ではなく…