アンディ・ウィアーの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は最高に面白い傑作SFなのでみんなも読むといいんだ!

プロジェクト・ヘイル・メアリー /アンディ ウィアー (著)、小野田 和子 (訳)

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 プロジェクト・ヘイル・メアリー 下

『火星の人』で火星でのサバイバルを描いたウィアーが、地球滅亡の危機を描く極限のエンターテインメント!未知の物質によって太陽に異常が発生、地球が氷河期に突入しつつある世界。謎を解くべく遥か11.9光年の彼方へ飛び立った男は、たったひとりの冴えた相棒と、謎の解明に挑む!2021年アメリカでの発売以来、NYタイムズをはじめ様々なベストセラー・リストに挙がり、ライアン・ゴズリング主演で映画化が進行中の、ファースト・コンタクトSFの新たな金字塔。

2021年暮れ、あたかも彗星のように登場し全SFファンを熱狂の渦に包んだ傑作SF長編『プロジェクト・ヘイル・メアリー』、これがもう、とてつもなく面白かった。2021年のSFは『三体Ⅲ』が全部持ってくかと思ったらとんでもない伏兵が待ち構えていたという感じだ。作品自体は去年の暮れに読み終わっていたが、年末の忙しさになかなか紹介文が書けず、今回やっと紹介することができる。

作者はアンディー・ウィアー、SF小説ファンには火星サバイバルSF『火星の人』でお馴染みであろうし、映画ファンにはマット・ディモン主演、リドリー・スコット監督によるSF映画『オデッセイ』の原作者と言えば通じるだろうか。小説にしても映画にしても傑作であり、まだ未体験の方は是非体験していただきたい。

さて『プロジェクト・ヘイル・メアリー』である。物語は一人の記憶喪失の男が目覚めるところから始まる。僕は誰だ?ここはどこだ?自分はなぜここにいるんだ?そしてそこからの物語は怒涛の一言、次々に明らかになる事実、事実が明らかになるにつれさらに膨れ上がる謎、これらがページを繰る毎にまるで波のように寄せては返し、その「事実と謎の追い掛けっこ」に目が離せなくなってしまうのだ。

だからこそ、一体この作品はどんな物語なのか、ということを書くことができないのだ。この「次々と明らかになる事実に驚嘆する」という部分にまずこの作品の面白さがあるためだ。これはもう読んでもらって、そのとてつもない面白さを体験して欲しい、としか言いようがない。

しかしそれでは「なにがなんだかわからない!」とおっしゃる方のために付け加えるなら、まず表紙の通りこれは「宇宙を舞台にしたSF」である。さらに本の惹句にあるように「地球滅亡の危機を扱ったSF」である。けれども、実はそれは物語の構成要素の下地に過ぎない。本書はこの下地に「あんなSFジャンル」や「こんなSFアイディア」が山のようにぶち込まれ、それらを徹底的に描きつくす。それは驚異に満ち、興奮に満ちている。確かに「どんなSF?」と聞きたくなるだろうが、「これこそがSF!」と答えてしまいたい程に充実した作品なのだ。

そして後半では恐るべき危機が怒涛の如く主人公を襲い、それに対し主人公は逐次対策を講じて回避するのだが、そこにまたしても新たな危機が主人公に立ちはだかる。こうして今度は「危機とその打破との追い掛けっこ」がこれでもか!と続いてゆくのだ。このめくるめくような物語展開に常にハラハラさせられ、読む者は主人公と共に絶望と希望の狭間をピンポンのように行き来することとなるのだ。

この物語には作者の出世作『火星の人』と同様の、たとえどんな危機的な状況においても常に前向きで希望を捨てない楽観主義と、それらの危機をあらゆる科学知識でもって乗り越える科学への大いなる信頼がある。そしてそれらは実にアメリカ的な不撓不屈の精神に裏打ちされているのだ。また物語構成はポンポンと「危機→解法」が続きリアリティ不足に感じるかもしれないが、むしろこの物語全体が「最新科学知識を用いた究極のパズル」として読むこともでき、ある意味「性格の明るいグレッグ・イーガン」という言い方もできるのだ。

というわけであのビル・ゲイツが「2021年に読むべき本5冊」の1冊にも選んだという超弩級の名作SF、アンディ・ウィアーの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』はSF史に残っちゃうような最高に面白い作品なのでみんなも読むといいんだ!下のリンクでは冒頭部分の試し読みができるよ!