アニメーション精密背景原画集/高畑聡
本書はアニメーション制作現場における「背景原図」という素材に着目した書籍である。 背景原図とは、背景美術を制作するために必要な前段階の作業にて生まれる素材であり、背景原図の出来の善し悪しがそのまま背景美術の出来に影響を及ぼしてしまう、決して目立つことは無いが、作品世界を支える大切な素材だ。そんな背景原図を手がけるクリエイターのひとりが高畠聡である。 漫画『AKIRA』アシスタント時代に培った正確で緻密な線とデジタル技術を駆使して描かれた美しく複雑な背景原図の世界を楽しんで頂きたい。
Twitterのフォロワーさんが呟いていて知った作品集。著者である高畑聡氏はなんでも大友克洋『AKIRA』の背景画を担当していた方なのらしい。 その高橋氏が『AKIRA』以降に携わった様々なアニメーション背景を集大成したのがこの『アニメーション細密背景画集』となる。
もう本を開いて「うおっ」とうめいてしまった。「細密背景原画集」と言うだけあって、どこまでもひたすら緻密に描きこまれたビル群、その内装、そして街並みが描かれているからだ。その細かさは見ているだけで眩暈がしそうなほどだ。これほどまでにおびただしい正確な線を、息が詰まりそうになる程に、びっしりと描き込むことの労力と技術力と忍耐力、それを想像しただけで気が遠くなってしまう。
その「細密背景」の完成度は、なにしろ『AKIRA』に登場する様々なビル群、さらにその倒壊した有様など思い浮かべてくれるといい。巻末のコラムを読むと、『AKIRA』の背景画の多くを、当時アシスタントだった高畑氏が手掛けていたのだという。このコラムで指摘されている高畑氏担当のシーンを見ると、「え、このシーンも!?あのシーンも!?」と驚かされること必至だろう。
さて『AKIRA』に関する言及はこのコラムだけであり、画集に収められているのは『AKIRA』以降の高畑聡氏の仕事という事になる。全14作、その全てがアニメーション背景であり、アニメに疎いオレには知らない作品のほうが多かったが、それでも十分にその凄まじい仕事ぶりは堪能できた。
これら背景画は手書きのもの、CGを使ったもの、そしてその二つを融合させたものと様々だが、手書きの作品ですらCGではないかと思わせるほどに細密極まりない完成度でなおさら驚かされる(下に掲載した2枚目の図版、『FREEDOM』における背景画は手書きなのだという!)。確かに見比べるとCGでの背景画は緻密な線ながらスッキリとしており、手書きのものは重々しい存在感を感じさせる。また、CGで作成した後手書きで”汚し”を入れる作業をすることもあるのだという。
この画集で紹介されているアニメに興味がなくとも、『AKIRA』に登場した迷宮の如き緻密なビル群の描写に目を奪われた方なら、是非手に取って欲しい画集である。
収録内容
Chapter01『メトロポリス』
Chapter02『スチームボーイ』
Chapter03『FREEDOM』
Chapter04『鴉-KARAS-』
Chapter05『true tears』
Chapter06『鬼神伝』
Chapter07『青の祓魔師』
Chapter08『劇場版 BLOOD-C The Last Dark』
Chapter09『攻殻機動隊 新劇場版』
Chapter10『十二大戦』
Chapter11『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』
Chapter12『HELLOW WORLD』
Chapter13『ドロヘドロ』
Chapter14『Nyanster』(企業CM)
・SPECIAL COLUMN 「人生を変えた大友克洋との出会い」 txet by 鈴木淳也
・高畠聡インタビュー