『ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ』は今は無き出版社トレヴィルから1995年から1997年までかけて出版された全10巻のアート全集である。取り上げられている画家は決して有名ではないが、どれも偏執的なまでの様式主義と耽美的な頽廃に彩られた作品ばかりが収められ、そのどこか【狂っている】とさえ思わせる異様さは、《【裏】近代西洋美術史》とでも表現したくなるような体裁となっているのが特徴的であろう。
出版当時は気に入った巻を5冊ほど購入し所蔵していたが、全巻購入までには至らなかった(高かったからなあ)。それがつい最近書棚を整理していた時に、ムラムラと全巻制覇の野望が頭をもたげ、現在古書でしか手に入らない残りの巻をポツポツと買い揃えていったのである。いやあ、どれもプレミア価格付いていて痛かったけど…。
というわけで全巻制覇の野望は達成され、ここに書影と簡単な紹介を記することにした。
■第1巻 モンス・デジデリオ画集 / 第2巻 ジョン・マーティン画集
《第1巻 モンス・デジデリオ画集》「世界の終りの画家」と呼ばれ、偏執狂的な緻密さで倒壊する聖堂や亡霊のような廃墟ばかりを描き続けた17世紀ナポリの謎の画家。
《第2巻 ジョン・マーティン画集》聖書等のテーマに基づいた壮大な構図と精緻な細部の中に、激烈な天変地異や悪魔の君臨する地下世界を現出させた19世紀英国の画家。
■第3巻 カルロ・クリヴェッリ画集 / 第4巻 フォンテーヌブロー派画集
《第3巻 カルロ・クリヴェッリ画集》澁澤瀧彦が溺愛した「マグダラのマリア」で知られる、過剰な装飾性と冷艶な官能性を湛えたイタリア・ルネサンスの異色の画家。
《第4巻 フォンテーヌブロー派画集》16世紀フランソワ一世の宮廷に一夜の夢の如く華開いた、優美な官能性と知的な寓意に満ちた、極めて洗練されて耽美的な独自の様式。
■第5巻 ティントレット画集 / 第6巻 リヨン派画集
《第5巻 ティントレット画集》ヴェネツィアで16世紀騒然たる注目の的であった巨匠が、劇画的なまでの大胆な構図と強烈な明暗表現で幻視させる奇跡譚の神秘。
《第6巻 リヨン派画集》19世紀フランスの古都リヨンで独自に展開した神秘的な象徴主義絵画、フランドラン、シャヴァンヌ等を含む、ラファエロ前派の先駆。