諸星大二郎『彼方へ』他、最近読んだコミック

諸星大二郎短編集 彼方へ / 諸星 大二郎

諸星大二郎の最新短編集は、『マッドメン』『碁娘伝』『栞と紙魚子』『BOX』など往年の名作・名シリーズの番外編が目白押しで、十分楽しめたけどこれってどういうこと?と思ったら、「これまで単行本の《新装版》として発売され、それぞれに目玉作品として加えられていた書下ろし短編」を主に集めたものらしい。これは作者の意向らしく、「最初に発売された単行本を持っていて新装版を買わないファンへの配慮」ということなのだとか。確かに自分も同じことを考えていたので、作者のこの気配りに敬服した。それにしてもこの今『マッドメン』の番外編が読めるなんてなんと幸せなことか。また、今回の短編集には“幻のデビュー作”と呼ばれる作品『ジュン子・恐喝』も収録されている。なお諸星大二郎には『彼方より』という短編集もあるのでお間違えのないよう(まぎらわしい)。

#DRCL midnight children (4-5) / 坂本 眞一

坂本眞一がブラム・ストーカー版『ドラキュラ』を新解釈で再構成したホラーコミック。坂本らしいいつもの脱線もなきにしもあらずだが、今作はホラーであることをきっちり意識しまくった作りで、坂本の超絶技巧のグラフィックも相まって不気味でおぞましい恐怖表現が大炸裂しており、作者なりに上を目指していることをしかと確認できた。

スターウォーク (1) / 浅白優作

アルファ=ケンタウリ探索から地球への帰路に着いた宇宙船乗員が見たものは、軌道を外れ人類は滅亡し不気味な生物が徘徊している地球の姿だった、というSF作品。謎めいた物語や設定には光るものがあるが、登場人物が一人の可愛らしい女の子と可愛らしい人形ロボットってな部分が60過ぎのジジイの自分にはちょっと合わなかった。

くずりのジャム / 山上たつひこ(作)、和泉晴紀(画)

山上たつひこ原作、和泉晴紀グラフィックによる「ちょっと奇妙な物語」を集めた短編コミック集。山上は小説家進出後だと思うが、物語運びがしっかりしており、ちょっと不思議だったり怖かったり笑っちゃうような物語が並ぶ。和泉のグラフィックもそれに寄り添うように描かれていて悪くない。

ダークマスター オトナの漫画 完全版 / 狩撫 麻礼(作)、泉 晴紀(画)

こちらは狩撫麻礼原作、泉晴紀グラフィックによる短編コミック集。これも「奇妙な物語」を集めたものだが、狩撫の原作に難があり、オチの無い思いつきのような物語が多くて戸惑わされる。泉の絵も不安定だ。とはいえこのコンビの作品だというだけでも読んでしまうものがある。

がきデカ ファイナル / 山上たつひこ

がきデカは本当に好きなコミックで、小中学生の頃は神漫画だった。下品で。少年チャンピオンでの連載は1974~1980年で、その後大人になったこまわり君を描く『中春こまわり君』が2004年に発表されている。単行本は全部読んでいたと思っていたが、つい最近連載終了後の1989年に12回限定で連載されたこの『がきデカ ファイナル』が発表されたことを知り、早速読んでみた次第。やはり当時の山上ギャグの破壊力は相当なもので、とても楽しく読ませてもらった。