『諸星大二郎自選短篇集 幻』を読んだ

諸星大二郎自選短篇集 幻 / 諸星大二郎

諸星大二郎自選短篇集 幻 (ちくま文庫も-6-2)

土の中から現れた人びと、いにしえの中国の伝奇譚、謎の屋敷に囚われた少女、魔術で怪物を召喚する高校生たち、河童伝説を調査する妖怪ハンター、古書店に出現した奇態な本、エリック・サティへの幻想譜……古今東西の怪異譚を渉猟し、妖しくたゆたう異界への扉をひらく異能のマンガ家が、自ら選んだ傑作15篇。蠱惑的な「幻視の国々」へと読者を誘う招待状。

『諸星大二郎自選短篇集 幻』(以下『幻』)は2019年に出版された『諸星大二郎自選短篇集 幻妖館へようこそ』を底本に、収録作をいくつか差し替えて新たに編纂された短篇集となる。収録作は全15篇、カバー書き下ろし、約370ページの結構ボリュームのある文庫本である。

しかしこの『幻』を購入する前に、ちょっと考えてしまった。現在、諸星氏の短篇は『諸星大二郎短編集成』全12巻として小学館から随時刊行されている最中で、その中にはこの『幻』内の短篇も収録されているはずだ。私は『諸星大二郎短編集成』を全巻購入する予定なので、ダブりになると分かっていて今さら別の出版社(筑摩書房)から出た短篇集を買う必要はないのではないか、ということである。

とはいえ、その逡巡は秒速で停止した。なぜなら、ダブろうがなんだろうが、諸星氏の本は出たら買う、これで無問題ではないか、と思ったからである。そもそも『諸星大二郎短編集成』の短篇だって、これまで購入し続けてきた短篇集に収録されている作品がほとんどではないか。ただ入れ物が違うことを楽しみにして買う、それでいいではないか。

そんなこんなで読み始めた『幻』であるが、これはやはり購入して正解だった。多分読んだことがあるのだろうが内容を忘れている作品、おそらく読んだことのない作品などがちらほらとあったからだ。さらにこの『幻』には、『諸星大二郎短編集成』には収録されないであろう短篇シリーズ物——「諸怪志異」「グリムのような物語」「妖怪ハンター」「あもくん」「栞と紙魚子」——からの作品もちらほらと収録されているのだ。これらも実際に読んではいるのだが、こうして「自選短篇集」と銘打たれた書籍のなかにあるとまた趣が違う。結局、どの作品も実に楽しんで読み終えることができた。

そんなわけで、『諸星大二郎短編集成』を全巻購入するほど熱狂的なファンではないが、「自選短篇集」として1冊にまとめられた諸星氏の短篇を楽しみたい方には、ベストな作品集ということができるかもしれない。もちろん、オレのようなガチファンにとっては、迷わず購入の1冊であることに変わりない。

【収録作】
《Ⅰ 幻》
涸れ川  
異界録 (「諸怪志異」シリーズより)  
Gの日記 (「グリムのような物語」シリーズより)  
鏡島 (「妖怪ハンター」シリーズより)  
影の街

《Ⅱ 怪》
ことろの森 (「あもくん」シリーズより)  
魔術 (「栞と紙魚子」シリーズより)  
淵の女 (「妖怪ハンター」シリーズより)  
それは時には少女となりて  
鳥居の先 (「あもくん」シリーズより)

《Ⅲ 奇》
奇妙なおよばれ (「グリムのような物語」シリーズより)  
奇妙なレストラン  
遠い国から 第一信  
本の魚 (「栞と紙魚子」シリーズより)
(眼鏡なしで)右と左に見えるもの~エリック・サティ氏への親愛なる手紙~

あとがき 諸星大二郎