ルーカス・ウォーズ エピソードⅡ / ロラン・オプマン (著), ルノー・ロッシュ (イラスト), 原 正人 (翻訳), 河原 一久 (監修)
大傑作『帝国の逆襲』完成までの壮絶なドラマを描くフランス版コミック、待望の第2弾! シリーズ屈指の名作『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』の制作の裏側と、映画監督ジョージ・ルーカスの知られざる苦闘を描く。 世界中で記録的ヒットを記録した一方で、その制作の裏側では、ジョージ・ルーカスにとって過酷な試練の連続だった。 膨大な資料を基に制作された本書は、これまで語られてきた『スター・ウォーズ』の伝説的エピソードを、ビジュアルとして体験できる注目の内容。
前作『ルーカス・ウォーズ』は、予想をはるかに超える一冊だった。ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』第1作をゼロから作り上げるまでの挫折と情熱を、コミックならではのダイナミックな作画と繊細な表情描写で描き切った傑作だ。フランス発のグラフィックノベルがこれほど深く人間ドラマに肉薄するとは思わなかった。
その続編がついに届いた。今作『エピソードⅡ』は、『スター・ウォーズ / 帝国の逆襲』の制作過程に完全フォーカスした続編である。オールカラー208ページ、徹底した資料に基づく人間ドラマ。読み終えた瞬間、またしても胸を熱くさせられた自分がいた。
物語は、第1作の大ヒット直後から始まる。激務に懲りたルーカスは続編の監督をアーヴィン・カーシュナーに委ね、自分はプロデューサーとして後方支援に回る。だが、独立資金調達という新たな重圧が待っていた。銀行とのシビアな交渉、予算の逼迫、スタッフ増大による内部混乱。「成功したはず」のルーカスが、再び破滅寸前の崖っぷちに立たされる皮肉な構図が、本作の通奏低音となっている。
この外部圧力が極限まで高まるのが、ノルウェーの氷河ロケだ。ホス星の雪原を再現するため、本物の吹雪の中で撮影を敢行する。「本物から始めると残りも本物になる」という信念が、文字通り命がけの現場を生み出していく。そこに重なるのが、撮影前にマーク・ハミルが交通事故で顔面を負傷していたという事実だ。冒頭のワンパ攻撃シーンとの連動を知ったとき、映画の「偶然と必然」について改めて考えさせられた。
そうした重圧の中でこそ、現場の人間ドラマは輝きを増す。セットの不具合に業を煮やしたハリソン・フォードが、元大工のスキルを活かして自ら修理するくだりは、彼の職人肌を象徴する場面として微笑ましい。カーシュナー監督との信頼関係、ローレンス・カスダンによる脚本作業、妻マーシア・ルーカスの支え。個々のエピソードが、巨大プロジェクトを支えた人間の網目として浮かび上がってくる。
さらに興味深いのが、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』誕生との並行ストーリーだ。スピルバーグが持ち込む荒唐無稽なアイデアをルーカスがことごとく却下しつつ、互いの情熱をぶつけ合う様子が描かれる。資金稼ぎのための商品化戦略、玩具ビジネス。ルーカスが「映画の夢」と「ビジネスの現実」の間で引き裂かれる姿は、外部との交渉場面と鮮やかに呼応している。
製作のクライマックスでは、外圧・人間ドラマ・創造的奮闘のすべてが収斂していく。ILMの特殊効果陣が革新的な技術で限界に挑み、ジョン・ウィリアムズが壮大な音楽で作品に魂を吹き込む。そして、ハン・ソロとレイアの別れのシーン。脚本にあった台詞をハリソン・フォードが「愛してる」「分かってる」に変えたことによるルーカスとカーシュナー監督との対立は、カーシュナー監督に軍配が上がる。あの名台詞は、崖っぷちの制作現場から生まれた即興だったのだ。
本作の核心は、「成功の後にこそ孤独は深まる」という逆説にある。第1作がゼロからの挑戦を描いていたとすれば、今作は達成の重さに押しつぶされそうになりながら走り続ける人間の姿だ。史実への忠実度は高く、読み終えると『帝国の逆襲』をもう一度観ずにはいられない。映画制作やクリエイティブの裏側に興味があるすべての人に、迷わず手に取ってほしい一冊だ。次巻エピソードⅢが今から待ち遠しい。

