再会の物語〜映画『スターウォーズ / フォースの覚醒』

スターウォーズ / フォースの覚醒 (監督:J・J・エイブラムス 2015年アメリカ映画)

I.

スターウォーズ / フォースの覚醒』を観てきました。今回は特に内容に触れないことにして、SW旧6作とこの新作との関わり合いについて思いついたことをあれこれ書き散らかしたいと思います。ネタバレはしてないと思いますが、物語の構造上のことには触れているので、情報は一切遮断したい!という方は本編を楽しまれてから読んだ方がいいかもしれません。

さて、SWの4〜6作、いわゆる「ルークの物語」はヒロイック・ファンタジーの王道的な作品で、それはそれこそヒーローの登場による「新たなる希望」がテーマでした。それに対する1〜3作、いわゆる「アナキンの物語」は終局において徹底的な絶望を用意された悲劇の物語です。そしてこの悲劇があるからこそ、「ルークの物語」による「新たなる希望」が必要とされたわけです。この「アナキンの物語」は、続く「ルークの物語」が先行して物語られていたため、構成上最後に物語がどこに結実するのか予め定められているという避けられないネックが存在していましたが、「ルークの物語」の明快な痛快さとは真逆の、陰鬱さと複雑さを持ち込むことで見事に対比的な3部作として完成していました。この明暗のトーンを綺麗に分けて描ききった、という部分において、自分は「アナキンの物語」3部作を「ルークの物語」3部作と同等に評価するべきであると思います。

II.

さてそれではこの新たなる3部作の1作目である「フォースの覚醒」は何なのか、旧6作に対して何であるのか、というと、これはもう【再開の物語】である、と言い切っていいでしょう。誰もが知るようにこの『フォースの覚醒』には「ルークの物語」で登場した主要人物たちが総出演しています。彼らが今どこでなにをしているのか?そしてそんな彼らが今回はどのように関わるのか?が今作の焦点です。当然新たなキャラも登場し、物語自体はそんな彼らが中心となって動きますが、彼らの今後の活躍はまだまだ未知数であり、とりあえずはお披露目の形となっています。これらの新キャラにどのように旧キャラがバトンタッチするのかも今後の展開でしょう。

そしてこの作品は、多くのSWファンとの、10年ぶりともなる【再開の物語】としても構成されています。物語のそこここに、SWとはこういう物語だったよね?というキーワードがあらん限り詰め込まれ、ある意味これまでの6作のおさらいのような体裁ですらあります。これまでさんざん待たされ、もう新しいSWは作らないとまでルーカスに宣言されたSWファンにとって、『フォースの覚醒』はあたかも走馬灯の如く目の前に展開するはずです。実のところ、そのために相当に既視感の強い作品となっている感は否めませんが、これはもう「久しぶりに会ったんだから景気よく飲もうや!」という【お祭】である所が今作の目論見だったのでしょう。むしろ、最初から全く新しい物語が始まるよりも、とっかかりとして非常に正しいのかもしれません。

それと同時に、これは『フォースの覚醒』で初めてSWを観る方が、これから旧作を振り返って観ようとした時に、「あれはこういうことだったのか!」と楽しめる仕掛けでもあるというわけなんですよ。シリーズ未見の方がこの『フォースの覚醒』を観るときに、旧作の予習は必要か?と思われるかもしれませんが、この作品を最初から観ちゃって全然構わないでしょう。そしてもし気に入ったなら、旧作を振り返ってみてみるといいでしょう。そうすると、『フォースの覚醒』で散りばめられたキーワードを様々なシーンから発見できると思います。いいなあ、これから初めてスターウォーズ旧6作を体験できるなんて!

III.

個人的に言うならば、この『フォースの覚醒』を観て思ったのは、自分にとってSWというのはルーカスのヴィジュアル・センスとその作家性を楽しむ作品だったのだなあ、ということでした。自分はなにしろ、面白さの差はあるとしてもSW作品は1〜6すべて好きで、例えば「4〜6はいいけど1〜3はいまひとつ」みたいな評価の仕方など有り得ません。なぜなら1〜6作にはルーカスの連続した拘り方を感じるからです。ルークの物語、アナキンの物語、それぞれは真逆のトーンであるにもかかわらず、むしろ真逆であろうとしながらもルーカスのセンスは一定しており、そこにはルーカス独特の難点もあるにせよ、オレはそれもひっくるめたルーカスの連続性が好きだったのだと思えるんですよ。

しかしこの『フォースの覚醒』はSW製作総指揮からルーカスが離れることで当然ながらルーカスの作家性とは断絶している、全然違うのだな、というのがはっきりと分かります。この作品にはSWの外見はあってもルーカス的なものは感じません。これはルーカスSW原理主義者としてはけしからんことではありますが、しかしなにしろ、あの人はもうSWを作ってくれないわけです。要するにルーカス的なSWは既に終焉を迎えてしまってるんですね。であるなら新しく作ってくれる者に期待するしかないんですよ。この『フォースの覚醒』はとりあえずSW再始動の【お祭】であり旧作のおさらいであり、さまざまなことが未知数で、まだまだ新章のとっかかりのさらにプロローグでしかないようにすら思えます。つまり、まだ物語は始まっていないんですよ。この新3部作は次作からその真価を発揮するのでしょう。


スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック(初回スリーブ仕様)

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アート・オブ・スター・ウォーズ/フォースの覚醒

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