『REBEL MOON - パート1: 炎の子』など最近ダラ観したDVDやら配信やら

『REBEL MOON - パート1: 炎の子』

REBEL MOON - パート1: 炎の子(Netflix映画)(監督:ザック・スナイダー 2023年アメリカ映画)

オレはザック・スナイダー作品がどれも大好きで、それがどんな賛否両論に曝されても、そのたびに味方に付いていたファンである。とはいえNetflix映画として公開されたこの『REBEL MOON - パート1: 炎の子』なあ、これはちょっといただけなかったなあ。

物語は銀河帝国の圧政に喘ぐ民衆を救うため、謎に満ちた過去を持つ女性主人公が6人の仲間を集めこれに反撃するというスペースオペラだ。要するに『スター・ウォーズ』と『七人の侍』を合体させた物語なのだが、確かにその通りではあれそれ以上のものでは全く無い、二つを足して10で割ったぐらいのお話なのである。お話もそうだが編集も凡庸でまるで物語を盛り上げる気概がない。大昔『スター・ウォーズ』が日本で公開された際、柳の下の二匹目のドジョウを狙って『スター・ウォーズ』と『里見八犬伝』を合体させた『宇宙からのメッセージ』という映画(深作欣二監督作)が作られたが、まだあちらのほうが馬鹿馬鹿しさといった部分で楽しめたぐらいだ。

結局『REBEL MOON』の何が駄目かって観る者の想像の遥か上を行くような世界を創出していない、驚きがない、新鮮さがない、という部分なのだ。ことそれはSFというジャンルにおいて致命的だ。ザックという人は毎回どんな映画でも「ボクの考えた最強の〇〇」を最強の映像で作り上げてきた男で、今回も「ボクの考えた最強のスぺオペ」を作りたかったのだろうが、それはむしろ「ボクの考えた最強のスター・ウォーズ」になってしまい、結果的にそれは『スター・ウォーズ』サーガで最もつまらないシークエルすら超えていないものとなってしまった。ザック、ひょっとしてSFに全く向いてない・実はよく分かってないのかもしれない。最初から荒唐無稽だった『エンジェル・ウォーズ』は最高だったんだがな。

とまあここまでクサしておいてなんだが、主演のソフィア・ブテラは意外と悪くなく、これまで観たソフィア・ブテラ作品の中で最良だったように思う。脇を固める仲間たちはぺ・ドゥナも含めどれも没個性的だったが……。それと期待を捨てて観ることにした後半はそれほど退屈しなかった。どうもオレはまだザックを信じたいのらしい。だからねー、『パート2』で巻き返してくださいよザック!あとキッチリ編集した映画版が出たら観てやるからな!(上から目線)

カンダハル 突破せよ (監督:リック・ローマン・ウォー 2023年イギリス映画)

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アメリカ国防情報局員のミッチェル・ラフォーチュンの実体験を元に製作されたジェラルド・バトラー主演映画。監督は『エンド・オブ・ステイツ』『グリーンランド-地球最後の二日間-』のリック・ローマン・ウォー。物語はイランで作戦行動中の主人公CIA工作員の正体がばれ、イラン政府とタリバンに命を狙われながら、イギリスの陸軍基地のあるアフガニスタンカンダハル地獄の逃避行を続けるというもの。ジェラルド・バトラー主演作ではあるが実録映画なので決してバトラーさんが無敵の鬼神となって敵をちぎっては投げちぎっては投げする物語になってはいない。逆に反米意識の強い中東で一人のアメリカ人工作員がどのように生き延びるのかを緊張感たっぷりに描くミリタリー・スリラー作品となっていて、これはこれで実に楽しめた。

コンパートメントNo.6 (監督:ユホ・クオスマネン 2021年フィンランド・ロシア・エストニア・ドイツ映画)

一人旅の留学生女子がモスクワ発の寝台列車に乗り込んだら同室になったのがなんと男!しかもガラは悪いは無神経だわでもうタイヘン!おまけに車掌に言っても客室を変えてくれない!もーどうなってんの!?というお話だが決してコメディではなく普通に人間ドラマ。お話の流れとしては次第に二人に心の交流が……とはなるのだけれど、日本じゃ有り得ないし心情的に受け入れ難いものはあるよな。とはいいつつ、日本みたいに何もかもきちんとしているわけではないであろう東欧辺りで旅をするというのはこういうものなのかもしれないし、こういった粗野な人間たちとインチキな状況の中でも顔をしかめつつなんとか受け入れやり過ごしてゆくバイタリティがあちらの国々の生き方なのかもしれないと思うと、これはこれで一つの世界の在り方なのだな、という妙な納得もしてしまった。そういった部分で、厳寒の地で終わる美しいラストも含め、決して観終わった後悪い印象の残らない映画だった。