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『M3GAN ミーガン』

M3GAN/ミーガン (監督:ジェラルド・ジョンストン 2023年アメリカ映画)

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子供たちの友人となるべく作られたロボットが惨劇を引き起こしてしまうというサイコスリラー『M3GAN/ミーガン』を観たが、これが最初の印象を全て覆し想像を上まわるほど素晴らしい出来の作品だった。

人形あるいはロボットが事件を起こしてしまうホラーやSF作品は多々あるが、この『M3GAN ミーガン』はそれらと一線を画すものがあるのだ。そもそもミーガンは暴走などしていない。悪魔だの呪いだの未知の要素によるプログラムエラーによる惨劇というものではないのだ。ミーガンは少女ケイディを守り慈しみ愛情に似た行動を取るというプログラムに忠実に従ったまでであり、であればそれはプログラムした人間側の問題となる。

そしてもっと大きな問題は、両親を亡くし心の傷付いたケイディを登場人物の「人間」たちは誰一人として愛し守ろうとせず、ただマニュアルや義務に則って動いているだけだということだ。即ちケイディを愛し守ろうとした存在はこの世でAIロボットのミーガンだけだったのである。それが結果的に過剰過ぎる行動に繋がったのだとしても、他人任せの人間たちに一体どんな言い訳ができるというのだろうか?

つまりこの作品は「人間性の疎外」を描いた作品であると同時に、プログラムは愛をトレースできるのか?という物語であり、究極的には「愛とは何か?」という物語でもあるのだ。AIの発達により起こりうる未来の予言的な寓話であり、人間はどこまでテクノロジーに自己委譲すべきなのか?という問題提起にもなっているSF作品だったと思う。そこが素晴らしかった。これは続編作ってAI側からの落とし前をつけるべき。

それとミーガンはメイクした人間が演じていると思ったのだが、一部人間だが殆どがアニマトロニクスだったというのにも驚いた。あとミーガン踊り最高。ここは人間少女が演じたパートだということだが、演じた人間少女の体幹も凄いんですよ旦那!

CHASE/チェイス 猛追 (監督:ブライアン・グッドマン 2022年アメリカ映画)

コンビニに寄っている最中突然行方不明になった妻を探すため鬼の形相で「猛追」しちゃう旦那を描くサスペンススリラー。実の所物語の粗筋には惹かれなかったが、ジェラルド・バトラーが主演を務めているということで一応観てみた。途中でなんだか観た事あるなあと思ったら、これってジョルジュ・シュルイツァー監督による1988年のオランダ・フランス合作映画『ザ・バニシング -消失-』のリメイクじゃないっすか。『ザ・バニシング -消失-』はまあいわゆる「胸糞映画」なんだが、この『CHASE/チェイス 猛追』が違うのは、なにしろ主演がジェラルド・バトラーなんであたかもターミネーターの如く暴走しまくるってことですな!ってかジェラルド・バトラー後先考えずに暴走し過ぎで「いやあんたも犯罪者とどっこいどっこいじゃないか!?」とドン引きしまくりであり、こういう暴走野郎なので『ザ・バニシング -消失-』とも展開が違ってくるんだが、結末の胸糞悪かった『ザ・バニシング -消失-』と違い『CHASE/チェイス 猛追』はジェラルド・バトラーそれ自体が胸糞悪かったといえるかもしれませんな奥さん!

グッド・オーメンズ シーズン2 (Amazon Primeドラマ)(監督:ダグラス・マッキノン2023年アメリカ・イギリス製作作品)

現代の人間社会で天使と悪魔が世界終末にまつわる大騒動に奔走するというTVドラマ『グッド・オーメンズ(シーズン1)』は、原作がニール・ゲイマン(とテリー・プラチェット)ということもあり相当面白かった。で、このシーズン2、同じニール・ゲイマンの原作ではあったが、これがなんだか全然つまらなかった。今回のシリーズは「記憶を無くした天国の大天使ガブリエル」にまつわる物語なのだが、シーズン1からスケールダウンし過ぎで呆気にとられた。さらにお話それ自体に吸引力が乏しく、天国界と地獄界のドタバタもなにやらみみっちく、天使も悪魔も超自然的存在としての凄みがこれっぽっちもなく、クライマックスの悪魔界との戦いも行き当たりばったり過ぎて大いに白けさせられた。一番ゲッソリしたのがラストで、天国と地獄がそれでいいの?と思っちゃったし、なにより、なんでもかんでもLGBTに落とし込んじゃえばそれが正解なの?と思わせられて、ホントうんざりさせられたんだよおっ母さん!

オリエント急行殺人事件 (監督:ケネス・ブラナー 2017年アメリカ映画)

ケネス・ブラナー版のアガサ・クリスティー小説映画化作品は、2022年公開の『ナイル殺人事件』が思ったより面白かったのと、近々新作として『名探偵ポワロ ベネチアの亡霊』が公開されるということで、まだ観ていなかったこの『オリエント急行殺人事件』も観なきゃなあ!と思い視聴。ちなみに原作は読んでいないのだが、あまりにも有名なミステリのあまりにも特異な犯人像としてどこかでネタバレを踏んでいたから、犯人はとっくに知っていた。にも関わらず、こうして物語を追っていくと非常に研ぎ澄まされた構成とミステリ構造にひたすら感心させられてしまった。凄いな、本当に素晴らしいミステリは犯人を知っていてもやはりとんでもなく面白いのだ。物語の背景に存在する実際に起こったある凶悪事件の影がまた物語に深い悲劇性を持ち込む。こういったストーリー面は言うに及ばず、衣装の美しさ、セットの美しさ、豪華俳優陣の強烈な存在感など、ビジュアル面での素晴らしさも抜きんでていた。映画としての新しさはないものの、歳を食ってくるとこういった映画の方が観ていて落ち着くというのもあるな。なかなかよかったぜお父さん!