怒らせた機長はジェラルド・バトラーだった!?/映画『ロスト・フライト』

ロスト・フライト (監督:ジャン=フランソワ・リシェ 2022年アメリカ映画)

嵐の中旅客機が不時着したのは反政府ゲリラが支配する島だった!?「ぐぅえへへへ、お前ら全員拉致して身代金に換えるんじゃあ!」血に飢えたゲリラ共に蹂躙される乗客たち!?しかーし!そこにある男が立ち上がった!?ある時はスパルタ王レオニダス、ある時は必殺のシークレットサービス、ある時は世界を滅亡から救う気象学者、ある時はロシアとタイマン張る原子力潜水艦艦長!その男の名は……

そう、我らがジェラルド・バトラー!!

《物語》悪天候のなか無理くり旅客機を飛ばすことになった機長のトランス(ジェラルド・バトラー)さん、案の定落雷を受け飛行困難となってフィリピンの謎の島に緊急着陸。しかしなんとこの島は、反政府ゲリラが支配する北斗の拳状態の島だった!?乗員をゲリラに拉致されたトランスさんは移送中の犯罪者ガスパールと手を組み、目をらんらんと輝かせて反撃を開始する!?「血を見るのはお前らじゃああ!」

はい、ジェラルド・バトラー主演のスリラー・アクション映画『ロスト・フライト』です。今回のバトラーさんの役柄は旅客機の機長です。でも操縦桿握っているよりも銃乱射している時の方が生き生きしているのはバトラーさんならではですね!「怒らせた奴は凄腕エージェントだった」という映画は多々ありますが、バトラーさんの場合「怒らせた奴はジェラルド・バトラーだった」という、一人一ジャンル状態です!

それにしても、テロ組織も十分怖いですが、映画冒頭の落雷を受けた旅客機が航行不能状態になる描写がホント怖いんです。暗黒の嵐の中を暗黒となった操縦室で飛行機の操縦をし、燃料はもうあと僅か、眼下には荒れ狂う海原が広がっているなんて光景、もう恐怖しかないですよ。落雷を受けて飛行機の電気系統が全てお釈迦になる、なんてことが実際にあるのかどうかは分からないんですが、この描写だけでも十分に緊張感たっぷり、まさに掴みはバッチリといったところでしょう。

バトラーさん一行が着陸したフィリピンのホロ島というのは実在する島なんですね。実際にもこの周辺の島々はイスラム主義テロ組織アブ・サヤフの拠点となっていた場所で、誘拐・殺人・軍事衝突が起こり、現在ではフィリピン政府により治安維持されたようですが、依然危険地帯なのは間違いないようです。映画はこのテロ組織に支配された島に着想を得て、「こんな場所に飛行機が不時着したら?」という物語をこしらえたわけですね。なにしろこの着想がとても素晴らしくて、この設定だけで映画の成功は確定したようなものでしょう。

今作で気になるのは「この旅客機には護送中の殺人犯が乗っていた」ってことですね。男の名は元傭兵のガスパール、最初こそこの男が信用できるのかできないのか?という葛藤こそありますが、結局さっさと手錠を外して一緒にゲリラ退治に乗り出すバトラーさんです。だいたい予告編の段階で「どーせ仲間になるんでしょ?」と誰もが思うでしょうから、予定調和というよりは予定通りという事なんですね!これが最初から「傭兵上がりの乗客がいてすぐさま仲間に!」ではお話がヌルくなるので、ちょっと怪しい男を登場させてクスグリを入れたという事なんでしょう。いや、全然構いません。

非常に優れたサスペンスとアクションを見せるこの作品ですが、決して完璧というわけではありません。航空会社側がある段階で非常に組織された救助隊を送る事になるんです。ですから、バトラーさん(とガスパール)が孤立無援の中、敵を次々と挽肉にしてゆく!というランボーみたいな物語では決してないんですよ。ここは一瞬「ん?」とは思ったんですが、結果的にその分戦闘がド派手になったので逆に大歓迎でしたね!その分ランボーというよりはジェラルド・バトラーダイ・ハードみたいなお話だと思えばいいんじゃないでしょうか。丁度クリスマスも近いしね!とっても面白かったので皆さんもご覧になってください!

ジェラルド・バトラーさん主演の名作の数々です!みんなも観よう!