籠城アクション『炎のデス・ポリス』はなんだか食い足りない作品だったなあ。

炎のデス・ポリス (監督:ジョー・カーナハン 2021年アメリカ映画)

「今宵小さなポリス・ステーションに悪党たちが大集合!」という謳い文句のサバイバル・アクション映画『炎のデス・ポリス』です。いやーなかなかにアホアホなタイトルですね。アホアホなオレはググッとガブリ寄りしちゃいましたね。しかも主演はジェラルド・バトラー、監督が『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』のジョー・カーナハンだというじゃあーりませんか。これは!と思ってちょっと期待して観てみたのですが。

ある夜、砂漠地帯にたたずむ小さな警察署に、暴力沙汰を起こした詐欺師テディが連行されてくる。マフィアのボスに命を狙われているテディは、避難するためにわざと逮捕されたのだ。しかし、マフィアに雇われた殺し屋ボブが泥酔した男に成りすまして留置所に入り込んだ。新人警官ヴァレリーの活躍によってボブのテディ抹殺計画は阻止されるが、さらなる刺客としてサイコパスのアンソニーが現れ、署員を次々と血祭りにあげていく。大惨事となった小さな警察署で、孤立無援のヴァレリーと裏社会に生きる3人の男たちによる殺し合いが繰り広げられる。

炎のデス・ポリス : 作品情報 - 映画.com

まず詐欺師テディが留置所に入れられ、彼を追っている殺し屋ボブが酔っ払いを装い留置所に入ります。そこにやはりテディを追う殺し屋ボブがやってきて、警察署内で署員たちを皆殺しにしてしまいます。それに応戦するのが女性熱血警官ヴァレリーですが、彼女は負傷し留置所に立て籠もることになります。三つ巴ならぬ四つ巴となった状況の中、ヴァレリーは悪党どもを撃退し生き延びられるのか!?というのが物語の流れです。

警察署内での籠城アクションと言いますとジョン・カーペンター監督の『要塞警察』(76)や最近公開されたインド映画『囚人ディリ』(19)なんて映画を思い浮かべますし、警察署ではありませんがガイ・リッチー監督による『キャッシュトラック』(21)も同工の匂いのする作品でした。基本は「アラモ砦」のような籠城戦にあります。知力を尽くした攻防とそれをどう覆し相手の裏をかくのかが面白さに繋がります。

とはいえこの『炎のデス・ポリス』では、一度留置所に籠った段階でアクションにも物語にも動きが無くなってしまうんです。なにしろロックされた留置所にいるだけですから、攻撃もされませんが応戦もできません。主人公であるヴァレリーは負傷でうずくまってるだけだし、二人の悪党は檻の中でブツクサ言っているだけです。このシークエンスにおいて事件の真相が説明されることになるのですが、それにしても間延びし過ぎです。

で、敵であるアンソニーは裏切者の警察官と共に留置所扉の反対側の壁を破壊し侵入しようと試みますが、随分悠長ですし、そもそも「留置所扉とは反対側に敵がいる」のなら留置所から出て応戦すればいいんです。ところがなにしろヴァレリーは怪我で動けないし、テディとボブも信用ならないので檻から出せない……でも結局出しちゃうんですが!この辺りのもたついた描写が興醒めしてしまうんですよ。

でまあ結局はあれやこれやでヴァレリー無双!な戦いが繰り広げられ、ようやく溜飲が下がるのですが、派手なアクションはあったにせよ結局は力任せで、全体的にサスペンス不足だったのは否めません。それと、せっかくジェラルド・"狂犬"・バトラーが出演しているのに、活躍場面が少なくて「これ別にジェラルド・バトラーじゃなくていいじゃん?」と思えてしまった部分も食い足りない作品でしたね。