■宇宙からのメッセージ (監督:深作欣二 1978年日本映画)
ちょっと調べたいことがあり、日本で『スター・ウォーズ(エピソード4/新たなる希望)』の1978年初公開前に、便乗で制作されたSF映画2作を観ることにした。
『スター・ウォーズ』は本国で公開され大ヒットしながら、日本で公開されるまでになんと約1年を要し、その間に映画会社がちゃっかりと便乗映画を製作したというわけだ。タイトルはそれぞれ『宇宙からのメッセージ』(東映)、『惑星大戦争』(東宝)。自分は『SW』の公開を今や遅しと待っていたが、これら便乗作品には全く興味が湧かず今回初めて観ることになった。特にこの『宇宙からのメッセージ』はいちSFファンとしてイメージが悪かった。「無重力空間なのに水泳のように手足をばたつかせて宇宙遊泳する」「酸素マスクだけの姿で宇宙空間に出る」等、芳しくない噂を耳にしていたのだ。それになによりも、「里見八犬伝」が元ネタっていうのが、なーんかダサくてさあ…。
そんな『宇宙からのメッセージ』を、しかも公開から40年近く経ってから観るわけだから、つまらないのは覚悟、もうネタ扱いということで観始めたのだが、なんとこれが、それほど悪い作品ではないことに気付かされてしまったのだ。いや、確かに今観ると古臭いし稚拙だが、悪し様に罵るような作品ではない。娯楽作としてきちんと体を成しているし、SWブームに乗って作られた便乗作品、という言い方も、こうして今いい年のオヤジになって考えると、興業というのはもともとそういうものだろう、という気すらする。
これはなにより監督である深作欣二の職人気質ということなのではないか。自分は深作監督の作品をたいして観ていないので知った口は利けないのだが、少なくともこの『宇宙からのメッセージ』に関してはSFがどうとかSWがこうとかいう以前に、活劇として観客に満足してもらえる作品を作ろうという気概を感じた。それは物語の展開の早さ、エピソードの盛り込み方の充実からうかがわれる。なにしろあれよあれよと話が進んでいくので、疑問を感じたり余計なケチをつけたりする余裕がないのだ。よく考えれば変な部分も(まあ、確かに変なんだが)、とりあえず映画を見ている間は気にならない。この辺が、実に巧いもんだなあ、と感心した。
それと合せ、出演陣が充実しており、しかもどうにも懐かしくて、それもひとつの見応えとなった。宇宙の姫エメラリーダ演じる志穂美悦子はひたすら凛として美しく、ヒーローとなる真田広之は最初どこのジャニーズかと見紛うばかりの若々しさだった。千葉真一は猛々しく、丹波哲郎は怪しげで、小林稔侍はずっこけていた。天本英世などは宇宙の怪奇ババア役だ。悪の親玉を演じる成田三樹夫はひたすら時代劇演技で、可笑しいことは可笑しいのだが、これは深作監督がこの作品をどう理解しているのかを知るきっかけとなった。また、特撮に関しても、特に戦闘機などの造形は今見てもよくできているもののように感じた。
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■惑星大戦争 (監督:福田純 1977年日本映画)
この『惑星大戦争』は『宇宙からのメッセージ』に先駆けた1977年の公開となる。『SW』の便乗作品としてはこちらのほうが早かったようだ。しかしこの作品、オレは存在自体忘れていたし、そもそも観てもいない。公開当時たいした話題にならなかったのかもしれない。
物語自体は映画『海底軍艦』(これは良い特撮映画だ)の宇宙版リメイクということだが、これは当時のSFブームに便乗したいがための間に合わせ企画といった感もあり、Wikipediaによると正月映画にするためにクランクインは公開の2か月前、特撮の幾つかは『ノストラダムスの大予言』の流用という、非常に急ごしらえの作品であったという。『惑星大戦争』というタイトル自体、最初は『SW』の日本公開時の仮タイトルだったのだ。
こういった前情報込みで、あまり期待せずに観たのだが、実際観てみると作品の出来不出来以前になんだか懐かしい感触のする映画だった。この懐かしさはなんなのだろうなあ、と思って監督の福田純氏を調べたら、どうやら往年のゴジラシリーズを多く手掛けていた監督なのらしい。それと小松左京原作のSF映画『エスパイ』も監督しているという。子供の頃これらの作品を観ていた自分にとって、この監督の作風に懐かしさを感じたのかもしれない。それとは別に、当時の東宝特撮映画の持つその雰囲気に懐かしさを感じたのかもしれない。
この作品でも出演俳優たちに面白さを感じた。なにしろ主演を演じるのは森田健作ではないか。その後いろいろあっただろうが、個人的に森田健作はTVドラマ『おれは男だ!』の主演として非常に慣れ親しんでいたタレントだ(ええ、そういうのをリアルタイムで観ていた年代なんです…)。そしてその相棒役が沖雅也。彼の非業な最期を知るとこの映画が奇妙に感慨深い。それよりもヒロインの浅野ゆう子だ。彼女の全盛期にもオレは全く興味が無かったのだが、こうして今見ると非常に魅力的なお嬢さんではないか。調べると当時17歳だったそうな。映画でも何の脈歴もなく突然露出度の高い衣装にさせられて可笑しかったが、まあそういう要望があっただろうことは想像がつく。
物語展開や特撮に関しては確かに急ごしらえだなあと思わせる寂しさはある。敵の宇宙人は数名しか出ないし、チューバッカを真似たような敵の家畜生物もなんだかゲンナリさせられる。しかし「金星での宇宙戦争」という着想は面白く、また人類の宇宙防衛艦「轟天」のリボルバー銃シリンダーを思わせるギミックもなかなかに楽しかった。また、物語の在り方は『SW』というよりも当時爆発的な人気を誇っていたTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』との類似点が多く見られるような気がした。
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