バットマン:ダムド/ブライアン・アザレロ (著), リー・ベルメホ (イラスト)
戦いの末、バットマンはゴッサムゲート・ブリッジから転落し、瀕死の重傷を負う。謎の男ジョン・コンスタンティンに救われたバットマンは、飛び込んできたニュース速報に耳を疑う。かの宿敵ジョーカーが何者かに殺害されたのだ。事件の真相を追うバットマンにつきまとうコンスタンティンと闇の世界の住人達。かくしてバットマンは悪夢の只中へと引きずり込まれていく…。
ジョーカーが謎の死を遂げた。いったい何が起こったのか?事件の真相を追うバットマンの前に、次々と超自然世界の住人たちが現れる。アメコミ『バットマン:ダムド』は衝撃的なオープニングから、オカルト・テイストの展開を迎える異色作だ。作画担当が名作コミック『ジョーカー』で知られるブライアン・アザレロ&リー・ベルメホだというのも頼もしい。
バットマンの前に現れる超自然世界の住人がまたいい。まずキアヌ・リーヴスの映画化作品でも知られるジョン・コンスタンティン。この『ダムド』でも煙草ばっか吸っている。そして映画『スーサイド・スクワッド』で不気味な魔女として登場したエンチャントレス。さらにこれも映画化されたことのあるスワンプシング。他にも(オレは詳しく知らないんだが)ザターナ、デッドマン、エトリガン、スペクターといったDCコミックのオカルトキャラクターが大挙して登場し、物語を不気味に盛り上げてゆくのだ。
物語展開はジョーカーの死の謎を追うバットマンが様々なオカルトキャラと遭遇しながら、あたかも地獄巡りの如き異様な体験に翻弄され、仕舞いには自らの幼少時の恐るべき秘密へと辿り着く、といった構成になっている。アザレロによる幻想怪奇な物語運びとベルメホによる暗く重いグラフィックは異様な物語をグロテスクに盛り上げる。それは映画『エクソシスト』や『セブン』を思わせる不安に満ち血に塗れた世界の表出だ。衝撃的なオープニングから始まった物語の、さらに衝撃的なクライマックスは唯一無二のバットマン・ストーリーと言えるだろう。