『槐と優』『黄昏ノ器神』など最近読んだコミックあれこれ

槐と優 / 諸星大二郎 (著)

諸星大二郎の新作は天才少年・槐くんと不思議少女・優ちゃんが怪奇現象を解決する!?というホラーコメディ『槐と優』。雑誌「怪と幽」に連載しているのでこんなタイトルなのらしい。諸星はこういったホラーコメディ作品をあれこれと描いているもかかわらず、どれも切り口が違っていて毎回新鮮な気持ちで読むことが出来る。今回の内容も変幻自在なハチャメチャさで、「ヴォイニッチ手稿」を主要テーマとしながら物語はどんどんと破天荒な方向に地滑りを起こし、新生物だの惑星直列だの予知夢だのを持ち出しながらも結局は荒唐無稽なドタバタへと逸れてゆき、最終的にあらゆるものがドロリンとした怪しい諸星ワールドへと収束する、といった塩梅である。この好き放題の自由闊達さがまた諸星作品の魅力だ。作者もお年のせいかグラフィックがこれまで以上に不安定で怪しくて、それすらもテイストになってしまう諸星コミック凄い。

黄昏ノ器神 (1・2)/ 山本 晋 (著)

山本晋の『黄昏ノ器神』は架空の中世日本を舞台に、罪人たちの末裔が住む「春原地下牢獄」から這い上がろうともがき回る賤民たちの死闘を描くダークファンタジー作品である。「器神」と呼ばれる憑依神を使役しながら繰り広げられる魔術的な戦いがメインとなり、虚無的な登場人物と残虐極まりない戦闘、夥しい血と死とが物語を暗く盛り上げてゆく。山本晋のコミックを読むのはこれが初めてなのだが、魅力的な世界観と美しく流麗なグラフィックに心惹かれた。沙村広明の『無限の住人』に近いテイストを持っているが、 「器神対決」という『無限の住人』よりもコマーシャルな展開がこの作品の大きな魅力となるだろう。

KRAKEN MARE(1)/ IZU (著), Hagane (著), 原正人 (翻訳)

西暦3933年の未来、ブラックホールから算出されるエネルギー源「ブラックエーテル」を巡って「腐肉漁り(スカベンジャー)」と「教会(エクレシア)」が熾烈な勢力争いを繰り広げるというSFコミック。フランス出身のバンドデシネ原作者IZUとイタリア生まれのコミックライターHaganeがタッグを組み、月刊アフタヌーンで連載している作品となる。バンドデシネ的なシナリオを日本のマンガテイストで描き、全体的にはその折衷のような仕上がりとなっている部分が特徴となる。ただし設定が少々分かりにくいのと、突き放したような展開に好き嫌いが分かれるかもしれない。

連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏 / 巻来 功士 (著)

ゴッドサイダー』『メタルK』といった作品で異彩を放った作家・巻来功士が、ジャンプ連載時の舞台裏を描く実録マンガ。巻来功士は名前こそ知っていたけれどもコミックをきちんと読んだことが無く、これが初となった。 地方出身の大学生が漫画家を目指し上京、あれよあれよと連載を持たされるが連載打ち切りや方向転換を強いられることも多かったのらしい。面白かったのは巻来氏は相当独立独歩な性格らしく、編集者に頼りながらも最終的には自分の意思を貫き通したいという意気に溢れていて、タイトルはネガティブな雰囲気だが内容自体は漫画愛に満ちた溌溂としたものであった。