ゾンビ・コミック2作読んだ〜『ウォーキング・デッド』『マーベルゾンビーズ』

ウォーキング・デッド(1)(2) / ロバート・カークマン


TVドラマ『ウォーキング・デッド』の原作コミックスです。存在は知ってたんですが、TV版のほうを先に観てしまっていたので、「わざわざ3000円も出して同じ内容の物語読む必要も無いかな」と思ってスルーしてたんですけどね。でもTV版のシーズン1を観たきりで、シーズン2はまだ未見だったし、うだうだしているうちに2巻も出てしまって、で、この2巻の表紙というのがTV版では見た事のないキャラじゃないですか。いったいどういう展開になってるんだろう、と思って遂に2巻合わせて買ってしまいましたよ。トータル6000円はイタかったですけど…。しかし読んでみると、設定等はTV版とだいたい同じなんですが、それでも登場人物など若干の違いがある。展開も最初のほうは一緒なんだけれども、1巻後半の生き残り農場や刑務所占拠の物語はTV版には無いもので、要するにどんどん違う展開になっている。特に、本来受刑者を外界から隔絶させるために作られた刑務所の立地性を巧く利用して、そこをゾンビの立ち入ることの出来ない人間たちの居留区とした設定は、ゾンビ物ドラマとして実に新鮮だった(まあ数あるゾンビ映画探せばどこかにあるのかもしれませんが)。この刑務所でようやく生き残った人々は安心して暮らせるのか…と思いきや、またも様々な事件が起こり、悲劇が繰り返す、という絶望に絶望を重ねてゆく展開が実に美味しいですねえ。
ゾンビ物の物語でいつも思っていたのは、ゾンビの登場で人々が食物連鎖の下層へと追いやられ、狩られる側となって、どんどんと屠られて行く、そして文明は崩壊し、社会は消滅してゆく、という物語がゾンビ物の基本ではあるけれども、その状況がどんどん推し進められてゆくと、生き残った人間はどうなるのか?ということについては、90分程度の映画ではなかなか語られない、ということだったんですね。まあ自分もそんなに沢山ゾンビ映画観ているわけではないのですが、そういった「その後の人類」をきちんと描いたのがロメロの『ランド・オブ・ザ・デッド』だったのではないかと思うんですよ。『ランド・オブ・ザ・デッド』では、ゾンビ出現によって崩壊した社会が、おそろしく歪な形で再編成されている、というのが見所でしたが、そういった、社会も文明も崩壊したあとに、人々はどう生活してゆくのか?どのようにもう一度社会を構成してゆくのか?という部分が、この『ウォーキング・デッド』では描かれていて、その辺が、長編ドラマとしての面白さだと思いますね。
我々はいわゆる「国家」の庇護の下に生きていて、そして国家の庇護の下で生きるということは、その中で「法」や「倫理」などの様々な決まりごとの中で生きるということでもあるんですが、国家が崩壊した後には、その国家を成り立たせていた法も倫理も同時に崩壊し、そして国家社会を成立させていた人間単位も存在しなくなる、するとどうなるのか?というと、人間は、原始的な部族社会に逆戻りする、そして法や倫理は個々の部族社会単位のものに縮小されてしまう、そういったことが、実はこの『ウォーキング・デッド』で描かれていることなんだと思うんですよ。生き残った人々はそれぞれのコミュニティ単位でのみ社会を構成し(部族社会の発生)、それ以外のコミュニティとは、共闘を目指しながらも結局離反してしまう、それはそれぞれのコミュニティの「生き残るための方法」が食い違ってくるからで、そしてその食い違いとは、かつて存在した法と倫理の不在にあるからなんですよね。この『ウォーキング・デッド』では、後半どんどん人間同士の諍いが中心となってゆく、それは、社会が崩壊したからだけなのではなく、人類全てが部族社会へと還ってしまったからでもあるんですね。つまりこの『ウォーキング・デッド』は、人類史をもう一度1からやり直さなければならなくなった人間たちの物語でもあるんですね。

ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド2

ウォーキング・デッド2

ウォーキング・デッド Blu-ray BOX

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ウォーキング・デッド  ガバナーの誕生 (角川文庫)

ウォーキング・デッド ガバナーの誕生 (角川文庫)

■マーベルゾンビーズ / ロバート・カークマン


あのスパイダーマンが!アイアンマンが!キャプテン・アメリカが!マイティ・ソーが!ウルヴァリンが!ハルクが!その他諸々のアメコミ・ヒーローたちが!ゾンビになって「肉クワセロ!」と暴れまわるというとんでもないキワモノ・コミック、それがこの『マーベルゾンビーズ』であります。初っ端からゾンビとなったヒーローたちに「齧ラセロ!」とばかりに取り囲まれるマグニートとか、肉食いたさに醜い仲間割ればかり起こしてるヒーローとか、展開がもう狂ってます!キャプテン・アメリカなんて頭半分無いし、スパイダーマンはお腹に穴開いてるし、アイアンマンなんて胴体真っ二つにされたまま動き回ってるし、ページを繰るごとにどんどんグチャグチャになってゆくヒーローの哀れな姿に爆笑必至、「ここまでやっていいのか?…いやもっとやれ!」と思わせるやりたい放題のメチャクチャさ、馬鹿馬鹿しさ、頭の悪さ、ヒーローへ陵辱ぶり、ヒーロー物コミックとしてもゾンビ物コミックとしても最高でしょう。しかもこのコミック、原作がなんと『ウォーキング・デッド』のロバート・カークマンなんですよ。こういう世界になってしまった発端の物語も読んでみたい気がしました。

マーベルゾンビーズ (MARVEL)

マーベルゾンビーズ (MARVEL)

ゾンビになったスパイダーマンのフィギュアも出ています。これいいなあ。

Marvel - Milestone Statue: Marvel Zombies Spider-Man & Mary Jane

Marvel - Milestone Statue: Marvel Zombies Spider-Man & Mary Jane