部族化した人間社会の果てで〜『ウォーキング・デッド4』

ウォーキング・デッド4 / ロバート・カークマン

ウォーキング・デッド4
大河ゾンビコミック『ウォーキング・デッド』の第4巻である。4巻程度で大河?と思われるかもしれないが、コミック1冊1冊のボリュームと共にその内容が重量級の濃さであり、1冊読み通すだけでも相当しんどいのだ。

物語はゾンビ発生による文明の崩壊と、そのカタストロフから辛うじて生き残った人々の終わりなき逃避行を描いたものだが、これが現在4巻分の長さに渡って流浪に次ぐ流浪、漂泊に次ぐ漂泊を繰り返し、この物語とそして登場人物たちががどこに辿り着こうとしているのか洋として定かではない。むしろこれは起承転結の物語を備えたドラマというよりも、主人公を含む生き残りたちが絶滅した世界をただたださ迷い歩く、その地獄巡りの様を克明に描くことがテーマとなっているということなのだろう。

だからこの4巻でも何か新展開だとか特別なアクシデントが勃発するというわけではない。いや、ゾンビという名の「死」に追いつめられながら、薄氷を踏むような日々を生き続けなければならない者たちにとって、全ての日々は異常であり、アクシデントの連続でしかなく、そしてそれが「日常」となってしまっているのだ。異常も日々続くと日常になる、という言葉があるが、これは異常さが日常化した世界で生き、そして死んでゆく人々の物語なのだ。

そういった物語のせいで、実は3巻目を迎えるぐらいでこのコミックに若干飽きてきたのが正直なところではあった。絶望的な世界で過酷な生を生きその中でなんとか希望の兆しを見つけながらその希望はやすやすと費える。コミュニティに新たなメンバーが加入したかと思うと別のメンバーが悲劇的な死を迎える。これがもうただひたすらだらだらと繰り返されるだけの物語のように思えてしまったのだ。

しかしその繰り返しから見えてくるものは、過酷なサバイバルの中で疲弊し絶望し、人間性をじわじわと剥ぎ取られてゆく主人公の姿だ。その主人公の変節の様に注目するなら、この物語の辿り着く先も予想がついてくる。以前『ウォーキング・デッド』のレビューでも書いたが、この物語は文明社会崩壊後に原始的な部族社会へと逆戻りした人々の部族同士の対立を描いたものと見ることが出来るが、この物語の終局に待つのは誰一人信じることも出来ず小集団部族すらもズタズタに切り裂かれもはや一人獣のように生きるしかない主人公の姿なのかもしれない。それをじわじわと描くこの物語は相当マゾヒスティックな作品だと言うことも出来るだろう。特にこの4巻のラストはある意味今までで一番心胆寒からしめる終わり方と言えるかもしれない。

ウォーキング・デッド4

ウォーキング・デッド4

ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド

ウォーキング・デッド2

ウォーキング・デッド2

ウォーキング・デッド3

ウォーキング・デッド3