バットマン:イヤーワン/イヤーツー / フランク・ミラー、マイク・W・バー、デビッド・マツケリー、アラン・デイビス、トッド・マクファーレン、秋友克也、石川裕人

バットマン イヤーワン/イヤーツー

バットマン イヤーワン/イヤーツー

バットマン:イヤーワン』はバットマンの誕生とその最初の一年の活躍をあのフランク・ミラーの手により"再話"した物語である。しかしむしろ、ゴッサム・シティに赴任してきたばかりのゴードン警部補を中心として描かれた物語のように読めた。腐敗しきった警察内部で仲間たちの悪質な妨害を受けながらも正義を貫こうとするゴードンだが、その道程は苦渋と困難に満ちている。"大人の読める"バットマン物語としてこのゴードンの姿はコミックファン以外にも共感を持って受け入れられることだろう。
『イヤーワン』続編『イヤーツー』そして『フル・サークル』は、バットマン/ブルース・ウェインの生い立ちと同じ道をたどりながらも魔道に堕ちた殺人鬼リーパーの姿を描くが、ユニークな発想ながらも物語自体は従来的なコミック・ヒーローの古臭いマチズモが支配しておリ、こちらはいささか退屈だった。この『イヤーツー』と『フル・サークル』にはフランク・ミラーは参加していない。
ただ、個人的にはこの"バットマン物語の再話"には少々飽きてきたのが本音だ。確かに刊行当時は今までにない視点で描かれた新鮮さがあったのだろうし、それが欧米人にとって幼少児から刷り込まれた"伝説のヒーロー"であるならなおさら大きな関心を持って取り上げられるのも分るが、それほどバットマン物語に拘りの無い自分としては、アメコミの現在形が今どうなっているのかのほうが気になったりもする。
まあ本国で有名な作品だからこそ日本でもこうやって翻訳され発売されるのだろうから、このバットマン・コミックが売れてそれに続く形でいろんなアメコミが翻訳されると嬉しいな。原書のコミックを買ったこともあるんだが、英語の不自由なオレとしてはやはり翻訳の方がありがたいんですよ。