フレンチ・スプラッター『マーターズ』は美少女SM映画だった!

マーターズ (監督:パスカル・ロジェ 2007年フランス・カナダ映画)


なんかもーとんでもないくらい凶悪・残虐・陰惨極まりないというウワサに満ち満ちたフレンチ・スプラッター・ホラー『マーターズ』、劇場公開時は何を勘違いしたか「もうボクチン、スプラッターとか観ない真人間に更生したし。これからはやっぱラブ&ピースだよね!」とか柄にも無く気取ったことヌかしてスルーしてたんですが、DVD発売と聞いてそれまで抑えに抑えていた血に飢えた悪逆非道なサイテー魂がムクムクと首をもたげ、「スプラッター観たい!血塗れ映画をワシワシ観まくりたい!」と騒ぎつつ、涎垂らしながらレンタル、いつものドミノ・ピザをバクバク頬張りビールをガバガバと飲みながらワシワシ!と観てしまいました!

えーと物語は、虐待の跡も生々しい姿の少女が、どこかから命からがら逃げ出してくるシーンから始まるんですな。それから十数年後、福祉施設で大人に成長した少女リュシー(ミレーヌ・ジャンパノイ)は、ショットガン片手に民家に押し入り、「復讐するは我にありなんじゃあ〜〜〜!!」と喚きながら(あ、いや、喚いてはいなかったけど)、その家のとおちゃんかあちゃんガキ二人をブチ殺しまくるわけです!そしてそこにリュシーの福祉施設時代の親友アンナ(モルジャーナ・アラウィ)が現れ、「あなたは死なないわ!私が守るもの!」とか言いながら(あ、いや、別に言ってないんだけど)、死体の後片付けを手伝ったりするわけです。しかーし!リュシーは得体の知れない化け物の姿に怯え、自らの身体を傷つけ始めるんですな!いったいリュシーの身に何があったのか!?復讐とは何か!?得体の知れない化け物の正体は!?…とまあそんな物語が、画面を血しぶきで染めながら爆走してゆくんですよ!

はかなげな美少女が絶望を胸に秘めた表情でショットガンぶっ放しながら家族4人次々と血祭りにあげてゆく、この冒頭の物語展開がまずゾクゾクきますな!そしてそんな非道な行為に手を染めた彼女に何も訊かず手を貸すその友人である少女もまたグッとキます!そもそもこの二人の絆はなんなんでしょうか?やっぱ百合なのかなあと、とことん下品に身を落としたオレなんかは邪推した訳なんですが、あとで調べたらリュシー役のミレーヌ・ジャンパノイたんは、以前ダイ・シジエ監督による映画『中国の植物学者の娘たち』で「禁断の恋に目覚めたばかりに破滅に向かう少女」を演じていたではないですか!なんだ、やっぱ百合じゃん。そもそもこの映画、人をぶっ殺した家の中から何故か二人がなかなか出て行かなくて、その中で奇妙に二人の完結した世界が進行してゆくんですよ。というわけですっかりこの映画を百合映画認定したオレであります。

それにしても主演のこの二人、ホントに美少女ちゃんですな!右がモルジャーナ・アラウィたん。美人ちゃんです!左がミレーヌ・ジャンパノイたん。こちらもエキゾチックな美人ちゃんではないですか!ええですなあ!
 

しかし後半、物語の様相が一変するんですな!とりあえずリュシーは勝手にくたばり、その後アンナがかつてリュシーを監禁拷問したと見られる謎の組織に捕らえられ、リュシーがされた如く監禁拷問されまくるわけなんです!世間ではこの後半が「想像を絶するほどムゴイ」という評判だったんで、オレも固唾を呑んで観ていたんですが、いやこれが意外とどうでもよかった。確かに血塗れで惨たらしくはあったんですが、画面の作りがスタイリッシュで綺麗なんですねえ。現実世界でニュースになってるようなリンチ殺人の陰惨さと比べたら、こんなの税務署の事情聴取並みなんではないでしょうか。てかこれ観てその程度しか思わないオレの心のほうが病んでるの!?どうなの!?どうなの!?

そもそも"謎の組織"が少女を拉致監禁拷問する理由というのが、ハンパに小賢しい連中が頭でっかちなタワゴトを並べて高尚ぶってる、まあこの世の中でもよく見受けられるクダラネエ理由に基づいていまして、タイトルの「マーターズ/Martyrs=殉教」もそこから来ているらしいですが、実際の所この映画、そんなたいしたテーマ性なんて無いと思いますよ。そもそも「ダリオ・アルジェントに捧ぐ」なーんてエンドロールに出てたのを見ても判るように、ダリオセンセが『フェノミナ』で絶世の美少女ジェニファー・コネリーをゲロ壷に叩き落した如く、美少女を苛めて苛めて苛め抜くド変態の心意気を示しただけの映画なんですってば!監督のパスカル・ロジェは「ダリオセンセ!僕チンもやってやりましたよ!ハァハァ!ハァハァ!」とあれこれ汁を出しまくりながら思っていたでありましょうや!う〜ん鬼畜!!

■『マーターズ』予告編


マーターズ [DVD]

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