■キャリー (監督:キンバリー・ピアース 2013年アメリカ映画)
苛められっ子の超能力少女が最後に大惨劇を引き起こすスティーヴン・キング原作のホラー映画です。1976年にもブライアン・デ・パルマ監督作品として映画化されていて、この時超能力少女役を演じていたシシー・スペイセクさんの、見るからに薄幸そうなルックスと、いつもおどおどした可愛そうな子って感じの演技がはまっておりました。対するこの2013年版『キャリー』、主演がクロエ・グレース・モレッツちゃん。しかし彼女が主演だったヴァンパイア・ホラー『モールス』の時も思ったんですが、クロエ・モレッツちゃんって健康的過ぎてホラーが似合わないんですよねえ。だから今作でまたホラーで、しかもあの『キャリー』だって聞いた時は、「また似合わない役を…」と思えて全然興味が湧かなかったんですが、レンタルで出たんでちょっと観てみました。するとこれが、思ったよりも面白く出来てたんですよ。
まあ確かに、デ・パルマ版と比べちゃうとあれこれケチも付けたくなるでしょうが、これはこれでデ・パルマ版には無い良さがあるんじゃないでしょうか。まずデ・パルマ版って、ホラー映画史にも残っちゃうであろう、とにかくどこまでもひたすら陰鬱でまるで逃げ場が無いキッツキツな《ホラー!》で、ホラー映画としては実に完成度が高いんです。対してこの2013年版『キャリー』は、それに肩を並べるような出来ではないにせよ、主人公をまだ17歳のクロエ・モレッツちゃんが演じることにより、思春期の女の子の不安や悲しみがより説得力のあるものとして描かれているんですよ。
シシー・スペイセクさんは凄いはまり役でありましたが、なんというか、最初っから最後までこの人自身が、怖いんですよ。この人自身がもう既にホラーなんですよ。それと役を演じていた時も、高校生というにはだいぶお年を召していたようですし。しかしそれに対し、クロエ・モレッツちゃんは、ホラー映画の中でも普通の女の子の顔をふと見せる、というか単に出てしまうだけかもしれませんが、その「普通の女の子」である部分に、デ・パルマ版にはない切なさ悲しさが見え隠れする。そしてプロムの時の可愛さは、このシーンの為にこの映画作ったんじゃないのかっていうぐらい可愛いんですよクロエ・モレッツちゃん。
そういった部分で、この2013年版は単にガッチガチのホラーというよりは、ヤング・アダルト向けのいわゆる青春ホラーの作りをしていて、当然ターゲットと言いますかマーケットもその世代の若者を考えているんでしょうし、クロエ・モレッツちゃんのアイドル映画、って言われ方もしてますが、しかしそれはそれで間違いのない作りをしているように感じた。そのかわりショッキングさも薄くて、特に豚の血を被って大爆発!になるはずのシーン以降は、クロエ・モレッツちゃんの持ち前の健康さがやっぱりどうしても透けて見えてしまい、スプラッタしているはずなのに全然映画から浮いちゃってる、なんてことになってしまってますが、少なくともそれ以前のシーンはそこそこによかった。だから全体的にはちぐはぐに見える部分もあったけれども、失敗作って印象は無かったな。
それにしてもラストにはびっくりしましたね。超能力大爆発してしまったキャリーの元に一人の車椅子の男が現れるんですよ。そしてその男に「君のような特殊能力を持ったミュータントが集まる学校があるから入らないか…」と持ち掛けられるんですね。そう、実はこの『キャリー』、続編は『X-MEN』の新作と繋がっている、という趣向になってるんですね!おおこりゃスゲエや!(すいません真っ赤なウソです)
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