怪しく楽しく愉快で不気味なアダムス一家。/アニメ映画『アダムス・ファミリー』

アダムス・ファミリー (監督:コンラッド・バーノン グレッグ・ティアナン 2019年アメリカ映画)

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小高い丘の上に建つ荒れ果てた屋敷に、なにやら不気味な一家が住んでいた!?という映画、『アダムス・ファミリー』。もともとは1937年から『ニューヨーカー』に掲載されていたチャールズ・アダムスによる一コマ漫画が原作なのだそうですが、その後TVドラマ化や映画化もされ、今回新たにCGアニメ化されたのが本作『アダムス・ファミリー』です。2019年製作、日本では2020年秋公開。ちなみに英語版の声優はオスカー・アイザックシャーリーズ・セロンクロエ・グレース・モレッツ、フィン・ウルフハードが務めております。

【物語】人里離れた山奥で結婚式を挙げたモンスターのゴメズとモーティシアは人間たちに故郷を追われ、丘の上の荒れ果てた屋敷にたどり着く。時は流れ、夫婦は長女ウエンズデーと長男パグズリー、執事ラーチとともに平穏な日々を過ごしていた。そんな中、パグズリーが一族にとって重要な儀式である「セイバー・マズルカ」を親戚たちの前で披露する日が近づいてきて……

アダムス・ファミリー : 作品情報 - 映画.com

物語的には映画版『アダムス・ファミリー』の1作目2作目を折衷したような内容となるでしょうか。まずはゴスでダークなアダムス一家の紹介、そんなアダムス一家と一般人との軋轢といった流れの中に、長男パグズリーの「セイバー・マズルカ」お披露目儀式に集まる親族、長女ウエンズデーととある少女との友情などが挟まれてゆきます。

とても楽しめる作品でした。もとがカートゥーンということもあってか、アニメとの親和性が高く、CGによる自在な動きや造形は、『アダムス・ファミリー』の持つ不気味な面白さをとても上手く表現していると感じました。映画版も悪くはなかったんですが、実写ということからか「そっくりショー」めいた演出に終始してしまい、物語的な飛躍が楽しめなかった部分を、この作品ではCGグラフィックの楽しさで盛り上げたといえるのではないでしょうか。

なにしろアダムス一家のフリークスなキャラクターや、常に良識の逆を行きたがるブラックなユーモア感覚がとてもいい。ハリウッドCGアニメはどれも完成度が高い反面、カラフル過ぎたり元気が良すぎたりして個人的に観ていて疲れるんですが、この『アダムス・ファミリー』では、暗く鬱蒼としたトーンと生気の無いひねくれた性格のキャラクターが、観ていてとても和むんですよ。やはりこれはオレ自身も暗くてひねくれた人間なせいだからでしょうか……!?

これは物語中盤の、「一般人と一般人の住む街」が描かれ始めてから対比が顕著になります。ここで描かれる「一般人と一般人の住む街」は、いかにもアメリカ人といった感じのマスプロダクツに塗れた生活と、明るく大雑把で我の強い無個性的な個性といった形で表現されます。要するに「つまらない連中の面白みのない生活」として登場するわけですよ。それとアダムス一家が対比した時に、一見薄気味悪い風貌と生活をしている彼らが、単に彼ら自身の彼ららしい生き方を尊重しているだけなのだ、ということが分かってくるんですね。

確かに「お化け一家」なんて呼び名まであるアダムス一家は、ホラー映画のモンスターをカリカチュアした、見るからに化け物っぽい面々で、その生活も奇矯を通り越して猟奇趣味の領域です。しかしそういった極端な誇張を取り払えば、実はこの一家が単なる東欧からの移民であり、その文化の違いや生活習慣の違いから、「怪しげで近寄り難いご近所」と周囲から見られていることを描いたものだと気付かされます。

つまり『アダムス・ファミリー』とは、アメリカ移民文化の多様性についての物語であり、国家としてのアメリカに容易く同化せず、故国の生活習慣を守り続ける人々の頑固さを描いたものなのだと思うんです。そしてこの物語が好かれるのは、こういった自らのアイデンティティーに対する揺らぎない確信、それが風変りだと他者から揶揄されても気にも留めない徹底的な自己肯定の在り方、そういった部分にあるのではないでしょうか。なにより、アダムス一家って、あんなにへんてこなのに、あんなに楽しそうで幸せそうじゃないですか。そう、人はへんてこでもいいんですよ、幸せならば。

参考: アダムス・ファミリー全集

アダムス・ファミリー(THE ADDAMS FAMILY)

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アダムス・ファミリー全集

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