アオイホノオ(1〜3) / 島本和彦

アオイホノオ 1 (ヤングサンデーコミックス) アオイホノオ 2 (少年サンデーコミックススペシャル) アオイホノオ 3 (少年サンデーコミックススペシャル)
島本和彦の描く、斜め上方向にどこまでも暴走する熱血ギャグ漫画の存在は、なんとなくは知ってましたが、ちゃんと読んだことがなかったんですよ。島本の漫画って基本的に"自分漫画"なんですよね。その楽屋落ち的な視界の狭さにイマイチ乗り切れなかったのと、近親憎悪とでもいいますか、あの逆上ぶりのウザさって自分を見ているようで、精神衛生上あまり積極的に近づかないほうがいいなあ、と思ってたんですね。作風も画風もユニークで嫌いじゃないんですが、あれを好きって言っちゃうのには抵抗があったというか。
そんな島本漫画ではありましたが、この『アオイホノオ』を何故か手にとってしまい、「相変わらずだなあ」とペラペラめくってたんですよ。例によって島本自身がモデルと思われる青年が、芸術大学に通いながら漫画やアニメを志し、膨らむだけ膨らんだ夢や希望や妄想が現実に追い付かずに持て余す、といった自伝的なお話なんですが、なんとこの漫画、途中からあの庵野秀明が実名で登場するんですね!?実際島本とは大学同期だったらしいですが、この大学時代の庵野がなにしろ怪しい!怪しすぎる!

作中の庵野は、普段の生活の細かい動作をいちいちアニメや特撮番組のキャラと被せなければ気が済まないタチみたいで、このマニア振りが何しろ凄い!そして変だ!やっぱり「庵野って本当にアニメ愛してたんだなー」というのがよく判ります。他にも学生時代のガイナックス関連の方も実名で多数出演。ホント、凄い学校だったんですねえ。
そういえば、この当時ってまだ《オタク》って言葉が無かったんじゃないかと思うんですが、彼らの情熱や愛情を見てると、単に《オタク》って言葉で括って自分の視野範囲の埒外にしちゃうのはマズイんじゃないかという気さえします。これはやっぱり未来あるワカモノたちの夢やら希望やら妄想やらの話だと思いますから。
しかし読んでいて気づいたんですが、島本和彦ってどうやらオレと殆ど同年代(歳が1個上みたい)で、体験しているTVや漫画や映画がまるで一緒なんだよなあ。ちょうどオレも高校卒業した後東京に出てセコイ美術学校に通ってたから、なんとなく島本の境遇が自分にかぶさっちゃって、読んでいてあの時代の自分にタイムスリップしてしまいました。しかしあの頃のオレといえば…ううう、やっぱり思い出すのはよそう…。