デヴィッド・ボウイのボックスセット・シリーズ最終章『I Can't Give Everything Away (2002-2016)』

I Can't Give Everything Away (2002-2016) / David Bowie

【Amazon.co.jp限定】アイ・キャント・ギヴ・エヴリシング・アウェイ [2002-2016] - デヴィッド・ボウイ (メガジャケ付)

限定13枚組CDセット。1969年からのボウイのキャリアを網羅した、数々の賞を受賞したボックスセット・シリーズの最終弾。リマスターされたオリジナル・スタジオ・アルバム3枚、2002年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでの演奏を含む、初めて公式リリースとなるライブ・アルバム2枚、そしてリマスターとリシーケンスが施された「A Reality Tour Live」を収録。オリジナルEP2枚に加え、シングル・バージョン、B面曲、ライブ音源を収録したコンピレーション・アルバム「Re: Call 6」も収録。さらに、貴重な未発表写真やメモラビリア、そしてプロデューサーのトニー・ヴィスコンティによる新たなレコーディング・エッセイを掲載した美しいコンパニオン・ブックも付属。

ボウイのボックスセット・シリーズ最終章『I Can't Give Everything Away (2002-2016)』

デヴィッド・ボウイのボックスセット・シリーズは、彼のキャリアを年代順に集大成した、大規模で高い評価を受けているシリーズだ。 単にオリジナル・アルバムを収録するだけでなく、最新リマスター音源の使用、未発表音源やレアリティ集、そして別ミックスのアルバムなどをボーナスとして収録している点が特徴となる。

これまで5シリーズが発売されたが、いよいよ今回、その最終集となる6シリーズ目、『I Can't Give Everything Away (2002-2016)』が発売されることになった。つまり、既に物故したボウイの全アルバムがこれで網羅されたことになるのである。CD版では全13枚という圧倒的なボリュームのCDが収録、さらに美麗なブックレットが付属している。

ではその内容をざっくりと紹介。

スタジオアルバム&EP

Heathen(2002)

[2002-2016]と銘打たれているだけあってスタジオアルバムは2002年リリースの『Heathen』から収録される。この『Heathen』、実はリリース当時、オレがボウイから心理的に離れていた時期で、購入はしていたが多分退屈に感じていたらしく、まるで印象が無い。ところが今回このボックスセットを購入して聴いてみたところ、ボウイのベストアルバムの1つとして数えていいのではないかと思うほどに完成度が高かった。どれも粒ぞろいの曲が並び、キャッチーであると同時に技巧的であり、耳に残り易く、つい口ずさんでしまう曲も多いのだ。この良さはリマスターの影響も多々あると思う。

Reality (2003)
Reality

Reality

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このアルバムもリリース当時の印象が薄い。だが今聴くとおそろしく軽快でテンポの速い曲が並び、乗りがよく、分かり易い、よいアルバムではないか。これもリマスターがいい具合に曲の魅力を引き上げている。

The Next Day(2013年)
The Next Day

The Next Day

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『The Next Day』は『Reality』以来10年ぶりにリリースされたアルバムで、もはや引退したと思われていたボウイの復帰作として大いに話題となり、このオレも期待に胸を膨らませてアルバムを聴いた覚えがある。そしてこれが10年のブランクが嘘のような素晴らしい快作であり、「デヴィッド・ボウイが帰ってきた!」とこのオレを狂喜させたアルバムなのだ。曲もバラエティに富み、「2013年のロック」としてアップトゥデイトな新しさも兼ね備えており、当時とても好きなアルバムだった。いやあこれよく聴いたよなあ。

The Next Day EP(2013年)

その『The Next Day』からのEP。アルバム未収録曲を含む全8曲。

★ (Blackstar)(2016年)

そう、これがボウイの死によってラストアルバムとなった『★(Blackstar)』である。リリース当時ボウイはまだ存命だったが、このアルバムを聴いたときはなんだか奇妙な感じがしたのを覚えている。

アルバム自体は『The Next Day』をさらにシリアスに、テーマ性をより深くした内容に聴こえたが、内容が暗いとか以前に(いつもだいたい暗いので)、まず曲目が少ない。内ジャケットがひたすら黒い。ボーナストラックが存在しない。アルバムに対する説明が少ない。ボウイの露出も少ない。それと、曲によって過去の曲からの引用フレーズが聴こえてきて、なにかボウイが自身の集大成をしようとしているように感じた。

いったいなんだろう?と思っていた矢先にボウイ逝去の報がやってくる。そして、ああ、そういうことだったのか、と理解できた。要するにボウイは自らの死それ自体もロック作品化したのだ。そういった部分で、究極的なまでに生涯いちロッカーであったとも、プロデューサーのトニー・ヴィスコンティがいみじくも語ったように、「ずるい」アルバムである、とも言える。

ボウイの死によって幕を閉じたラストアルバムということもあって、当時から聴くと辛くなってしまい、あまり聴けなかったりもした。そして今でも、最終曲である「I Can't Give Everything Away」を聴くと、その歌詞の内容も含めて、胸が張り裂けそうになってしまう。というか、どの曲も死の臭いが充満していて重い。とはいえ、そういった経緯があるからこそ、この今、このアルバムをもう一度手探りで聴いている最中だ。

No Plan E.P.(2017年)
No Plan -Ep-

No Plan -Ep-

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その『★(Blackstar)』からのEP。アルバム未収録曲を含む全4曲。死に瀕しながらあれほどの傑作アルバムを製作し、あまつさえシングル用のアルバム未収録曲も作っておくとか、あんたどれだけ周到なんだよボウイ。

ライヴ・アルバム

A REALITY TOUR (2010年)

2003年11月のダブリン公演の模様を収録したライヴ・アルバム。『Heathen』、『Reality』からの選曲を中心に、ボウイの代表曲を網羅している。パワフルで疾走感溢れる素晴らしいライヴ・パフォーマンスが聴けるが、このツアーがボウイにとっての最後のツアーとなった。なお、2010年に発売された同タイトルのライブ・アルバムとは一部曲構成が変更されているが、曲目・曲数は変わっていない。

MONTREUX JAZZ FESTIVAL (未発表ライヴ・アルバム)

2002年7月に開催されたモントルー・ジャズ・フェスティヴァル出演時のパフォーマンスを収録した未発表ライヴ・アルバム。ヒーザン ツアーの10回目の公演であり、毎年恒例のモントルー・ジャズ・フェスティバルの一部である。ボウイは2セットのパフォーマンスを披露しており、2セット目は1976年のアルバム『Low』を「Weeping Wall」を除いてほぼ全曲、しかも順不同で演奏している点が面白い。また、オフィシャルでは未発表であるが、ブートレグ版も出回っている。

レア音源集

RE:CALL 6

アルバム未収録曲やオルタナティヴ・ヴァージョン、Bサイド曲やサウンドトラックに提供していた曲などCD3枚、全41曲を収録したボックス・セット限定のレア音源集。

これまでもボウイのレア音源集は聴いたことはあるが、確かにレアとはいえボツ曲なりではあるなあとは感じていた。ところが今回のボックスセット収録の3CDに渡って聴けるレア曲が、どれも素晴らしい。なんならこの3CDだけで発売してもなんら問題ないほどにクオリティの高い曲が並んでいるのだ。

レア曲ではあるが、シングルバージョンであったり、録音のしっかりした別テイクであったり、他のミュージシャンとのコラボ曲であったりして、全体的にコマーシャルであり、なんだかボウイ後期のベストアルバムを聴いているような気になってしまう。実はこのボックスセットで一番聴いているのはこの『RE:CALL 6』だったりする。

そしてこのレア音源集の、さらにはボックスセット・シリーズ最終章の最後が「I Can't Give Everything Away(Radio Edit)」で締めくくられ、有終の美を飾るのである。こんなの泣くに決まってるだろ……。

まとめとして

というわけでボウイのボックスセットシリーズはこの第6作目で終わりとなるようなのだが、実はこのシリーズに収録されていないボウイのオフィシャルアルバム(EP)が幾つかあるのは確かなのだ。それはボウイの出演した映画『ラビリンス/魔王の迷宮』のサントラだったり、TVドラマ『バール』のサントラだったり、ボウイの朗読アルバム『ピーターと狼』だったりする。さらにあのボウイ・バンド、ティン・マシーンがこのボックスセットでは全く黙殺されている。

確かにボウイ自身やボウイ楽曲がメインとなったアルバムではないにせよ、これらが最後の最後にまとめてボックスセット化されるということはあり得るのだろうか。とはいえ、これらのアルバムはボウイ・ファンのオレとしてもあまり興味のないものばかりで、アルバム自体手にしたことが無く、妄想だけで終わるとは思うのだが。

また、このボックスセットの解説本として、「CROSSBEAT PRESENTS デヴィッド・ボウイ 21世紀の男」というムック本が発売されているので、興味のある方は手にとってみられるとよいかも。