最近読んだコミック/【真の完結編】が描かれる『アイアムアヒーロー 完全版』とか

アイアムアヒーロー 完全版(22) / 花沢健吾

なんと、あの『アイアムアヒーロー』の、【真の完結編】が存在したとは知らなかった。この『アイアムアヒーロー 完全版』は電子書籍版としてカラーページ復刻を施し刊行されたものだが、その最終巻である第22巻に、書籍版のラストからさらに80ページの書下ろしが追加され、【真の完結編】を読むことができるのである。書籍版を読んだ方はご存じだろうが、『アイアムアヒーロー』のラストは「え?最終回がコレ?」と呆れかえる程に投げっぱなしの終わり方だった。オレ自身は全体的な部分で楽しめたのであのラストも作者なりの考えがあったのかな、と好意的に受け取とったが、それでも一般の評価は相当低かったと思う(書籍版『アイアムアヒーロー』22巻の感想はこちらに書きました)。

そして、この【完全版】である。これがもう、まごうことなき【真の完結編】として、きっちりと万感のラストを見せてくれているのである。これだ、これが読みたかったんだ!ZQNの謎をきちんと説明したとかそういう部分は無いにせよ、『アイアムアヒーロー』という大部の物語の、その中で主人公・英雄が至った精神的遍歴の最終章としての結末が、鮮やかに描き出されているのだ。今のところ電子書籍だけでしか読めないようだが、とりあえずファンだった方には是非とも読んでその【真の結末】を目撃してもらいたい。いやあ、いいですよ。これでいいんですよ。

アンダーニンジャ(8) / 花沢健吾

その花沢健吾の最新連載作『アンダーニンジャ』だ。オレはこれまでこの作品を「なんだかダルイ雰囲気でユルく忍者活劇を描こうとしたのかな」程度に思っていたのだが、この8巻で考えを改めさせられた。前巻から続くニンジャたちの戦いは想像を超える熾烈さを迎え、その無慈悲で残忍な描写は「これこそが『アイアムアヒーロー』の作者だ」と思わせるほどに濃厚極まりない。よく見てみるとこれまでばらまかれていた「最新テクノロジーによるニンジャ兵器」も、オチャラケなんかではなく実はしっかりとSFな雰囲気を持ち、世界観として申し分ない。そしてこの8巻におけるその展開は、大友克洋の『AKIRA』すら彷彿させ、さらに定石外しの選手交代劇まで飛び出しているではないか。まさかここまで化けるとは思わなかったが、これもそれも作者の卓越した構成があったからこそなのだろう。正直今までナメていた。作者の方どうもすいません!

ダンジョン飯 12巻 / 九井諒子

迷宮の魔王を倒してメデタシメデタシと思っていたらどうやらそうではなかったらしい。『ダンジョン飯』第12巻では、その「魔王を継ぐ者は誰か」を描くことにより、これまで描かれてきた深淵なファンタジー世界をなお一層重厚なものへと花開かせている。ファンタジーコミックを描かせたらピカイチの九井諒子がその卓越した世界造形をさらに深化させ、「ダンジョン」だけでは終わらない世界全体を轟かす物語へと変貌を遂げているのだ。いやホントに才能あるねこの方。

あたしゃ川尻こだまだよ(2) / 川尻こだま

Twitterコミックで人気を博する川尻こだま大先生の書籍版コミックである。書籍版は美麗な装丁とカラーページ、そして細かな「遊び」により、web公開作とはきっちり差別化しているところがなにより良心的だ。これまで「ただれた生活」の「ただれた食生活事情」を描いてきたこだま大先生だが、この2巻では「ただれた在宅ワーク」の様が描かれることになる。この辺りの、「ただれたテーマ」のシフトチェンジの在り方にも、こだま大先生の「細かな目端の利かせ方」を伺うことができるというものではないか。この人は本当に才能がある。そして今回の書下ろしは、こだま大先生が「就職対策用の一般常識問題集」を解いてゆくという「一般常識クイズ大会」だ!まあ結果は読んでのお楽しみとして、なんと困ったのは、これを読んでいたオレも出された問題が解けなかったという事だ!?オレ一般常識ないじゃん!?

アオイホノオ (27) / 島本和彦

遂に雑誌連載開始、一見順風満帆とも思えるホノオ君ではあるが、新人としてのプレッシャーにまたもやのたうちまわり、結局相も変わらず気の休まらない日々なのである。そう、セーシュンはのたうち回ってナンボ!併せてホノオ君の女性事情が中心的に描かれ出し、ここでもまた苦悩と煩悩にのたうちまわるホノオ君なのである。そう、セーシュンは、のたうちまわってナンボ!そしてこんな、常に全力投球のホノ君のセーシュンの道程が、眩しくてたまらないのだ。

鋼鐵の薔薇(1) / 久慈光久

おおっと、あの血塗れの歴史大作『狼の口〈ヴォルフスムント〉』の久慈光久の新作なのか~~ッ!?と超盛り上がった新作『鋼鐵の薔薇』の開幕だ。今回も歴史作品で、舞台は中世イングランド、テーマとなるのは「薔薇戦争」である。それはイングランド王朝の覇権争いから勃発した内乱だ(以上今ネットで調べて初めて知りました)。主人公となるのは甲冑に身を包んだ無敵の騎士たちであり、そして残虐を極めたイングランド貴族ヨーク公リチャードが今回の敵となるのらしい。冒頭から久慈漫画らしい人体損壊しまくりの戦闘シーンが描かれ、期待を大きく膨らませてくれるんだ。まだ1巻なのでどういう転がり方をするのかは分からないが、じっくり読んでいこう。