最近読んだコミックあれこれ

ベアゲルター(6)/沙村弘明

ドイツの世界的製薬会社による巨大なる陰謀は中国の売春街と日本の売春島において凄まじい殺戮の渦を巻き起こしてゆくが、その只中で何れ劣らぬ手練れの女たちが叛乱を企てる!という沙村弘明の「叛逆ズベ公アクション」第6巻。相変わらず沙村らしい陰惨・淫靡な展開がこれでもかと続いてゆくが、『無限の住人』と同様、どこか同じところで堂々巡りを始めているような気がしてきたので、そろそろガツンと新展開を持ち込んで欲しい。いやこれはこれで面白いんだけどね。

波よ聴いてくれ(9)/沙村弘明

深夜ラジオのDJに抜擢されたやさぐれ女主人公の斜め上に爆走する日々を描くコメディ作第9弾。コメディ作なのにもかかわらず沙村らしいシリアスで陰惨な展開が時折首をもたげるこの物語、この巻でもまたもやダーク極まりない犯罪が巻き起こり、サスペンスを盛りあげてゆくこととなる。とはいえ相変わらず細かいセリフが相当に可笑しい。

アオイホノオ(26)/島本和彦

遂に漫画家デビューのホノオ君だが、そのホノオ君の前に新たなる試練が!?とはいえ毎回試練を試練と思わないタフさというか前向きさというかあまり深く考えないホノオ君の性格が逆境をギャグに変えまくっていて清々しい。

アンダーニンジャ(7)/花沢健吾

ヤル気があるんだかないんだかよく分からない男が主人公で面白いのか面白くないのかよく分からない展開の続いていた本作だが、この7巻目でやっと本気出してきたのか話運びが面白くなってきたな。要は殺戮に次ぐ殺戮戦闘に次ぐ戦闘といった描写がとても楽しいということなのだが、もう一つこの巻では主人公が殆ど登場しないというのも功を奏したか(アレ?)。

雨と君と(3)/二階堂幸

人語を理解しフリップで意思疎通を図る不思議なタヌキと同居する謎めいた女性の物語である。このコミックは1巻目から徹底して主人公のキャラクターや人間関係が謎めいていて、さらに物語展開が奇妙に寂しげであり、常に密やかな孤独と気怠い倦怠に包まれている。その奇妙さが凡百の「動物コミック」と一線を画すのだ。なにより、女性主人公に男性の影が一切なく、それをあえて描こうとしない部分に独特さがある。孤独の喜び、そしてその孤独にひと時の暖かさをもたらす不思議なタヌキの存在、こういった構成の在り方がこの作品の強みだと思う。

川尻こだまのただれた生活 第7集: 「皮剥ぎババァの話」/川尻こだま

川尻こだまのTwitter漫画を無料でAmazon Kindleにまとめた作品集第7弾。例によって乱れた食生活と脱力100%の日々を描くその筆致は相変わらず冴えわたっており、もはや時代の寵児と呼んでいい漫画家だろう。内容にしても初期のジャンクフード三昧から徐々に日常生活で目撃する「変なエピソード」が盛り込まれるようになってきたが、それら切り口にしても新鮮であり徹底した馬鹿馬鹿しさを貫いている。やはり才能あるなこの人。