最近読んだコミックあれこれ

風水ペット(3)/花輪和一

お金渦巻く絶叫大人ファンタジー!! 世界金融も億万長者も、鄙びた山里でバッサバッサ切り捨てられる……風水で。痛快にして無二、意表をつきまくる読み切り連作の大人ファンタジー! 奇才・花輪和一の最新異境地、 ぐんぐん加速するその世界に、身を委ねる快感を味わう!

日本漫画界の極北、異端の中の異端である花輪和一が現在進行形で描いているらしいコミック『風水ペット』である。風水でペット、その時点でよく分からないのだが、内容はさらに奇々怪々、この3巻では風水もペットも背景と化し、花輪的な狂った世界へと突入している状態だ。

物語にはまず3つのセクトが存在する。一つは日本を忌み嫌う反日ババアとその孫で反日のふりをしてババアに話を合わせる主人公少女。もう一つは中共を憎み中国の崩壊と日本の復権を願う風水おばさん連合。最後にディープステートをはじめとする陰謀論にどっぷり漬かりながらデイトレードに精を出す女。そしてこれら狂ったキャラたちが田畑の広がる田舎の村で世界の命運について怪しげな談合を展開するというのである。

反日と反共との歪んだ言説は描くがそこに作者自身のイデオロギーが存在するのかは定かではなく、デイトレードの女にしても彼女の信奉する陰謀論の滑稽さだけが浮き彫りにされる。既に物語は破綻しつくし、ひたすら彼女らの妄念と情念と強迫観念だけがドロドロと汚泥のようにぶちまけられてゆくのだ。

これらは作者なりの現代社会への皮肉であろうとも言えるが、それよりも妄念それ自体を描くことが作品の目的のようにも思う。それは異様であり不気味であり醜悪であり、因縁と妄念の漫画家・花輪和一の面目躍如といったところだろう。さらにこのような物語を微細極まる描線これでもかとばかりに描く丹力に、花輪漫画の凄みがある。

 

ミラーマン 2D (1)/久正人

ある日、しがない探偵・櫛灘遊霧(くしなだ・あすむ)のもとに不貞調査の依頼が持ち込まれる。だが、その「よくある依頼」は侵略者(インベーダー)による罠だった──。“ヒーロー”ד探偵”、二人の男が横浜を舞台に繰り広げる、次元を超えたバディ・アクション!!円谷プロの伝説的特撮ドラマ『ミラーマン』が50年の時を超えて、今、リブート!!

久正人の新作はなんといにしえの円谷特撮ヒーロー、ミラーマンのリブート作である。ミラーマンはオレはリアル放送世代なのだが、観てなかったなあ、裏番組だったシルバー仮面のほうを観ていたなあ。とはいえどんな話かはなんとなく知っていて、出てくる怪獣もなんとなく覚えていたので、このコミックでのお話もなんだか懐かしく感じた。しかしそこは久正人、オリジナルを踏襲しつつ久正人的な呪術世界が展開しており、当然ながら絵もカッコよくて実に楽しめた。続きも読みたい!

 

きりもやびより(1)/みずしな孝之

いとしのムーコ』のみずしな孝之、最新作はいぬ×ねこ×煮詰まり系女子! いつも締め切りに追われる絵本作家のひよりさん。 でっかいいぬと賢げなねこと暮らしたら 今日も締め切り間に合いました。

みずしな孝之、『いとしのムーコ』終了の次もまたもや動物漫画である。今度は犬と猫と絵本作家のお話だ。とはいえそこはみずしな漫画、決してファンタジックになんぞ走らずいつものようにドタバタが繰り広げられることになる。お話はいつも暴れ回るペットたちに翻弄されながら絵本を描き上げちゃう主人公を描くが、描いた絵本もきちんと作中に登場するのがこの作品のポイントだろう。第1巻という事で主人公女性がいつもワアワア言っている以外キャラがまだ掴めないのだが、これから巻を追い登場人物とその人間関係が描かれることで明確になってゆくのだろう。

 

ツイッタでマンガ描いてたらアニメになった話 ツイッタでマンガ描いてたらアニメになった話のアレコレ Kindle版/川尻こだま

遂にアニメ化決定(既に放送中)し、今ノリにノッているTwitter漫画家、川尻こだまのAmazon Kindle版まとめコミックである(無料)。タイトル通り漫画がアニメ化するまでの様子を描いているが、それにしてもこのリリース速度やリリースタイミング、その「スピード感」の確かさはやはりネットで培ってきたものだろうし、無料リリースも含め「新しい」感覚を持った漫画家(本職ではないのらしいが)の気がガンガンする。