旅する小舟/ペーター・ヴァン・デン・エンデ (著)、岸本佐知子(訳)
ショーン・タンが驚愕し、岸本佐知子が大激賞! ゴーリー編集者・田中優子が編集した子どもから大人まで、誰もが楽しめる文字なし絵本。 オランダ発、英語版はNYタイムズとWSジャーナルのベストブックに選ばれた話題の1冊。 ブライアン・セルズニック(「ユゴーの不思議な発見」著者)も「ティム・バートンやサルバドール・ダリやジャック・クストーの血を脈々と受け継ぎ、ショーン・タンとエドワード・ゴーリーを両親にもつ水棲の子供……とでも言えば、この本の素晴らしさを少しでもわかってもらえるだろうか。」と絶賛。
ベルギー生まれのアーチスト、ペーター・ヴァン・デン・エンデが描く『旅する小舟』は言葉が一切ない絵本である。ショーン・タンが驚愕、岸本佐知子が大激賞となれば内容はもうお墨付きと言っていいだろう。
それは一艘の折り紙の小舟が、世界の海を、そして海中を旅してゆくという物語である。その中で小舟が出会うのは、夥しい数の海の生命だ。彼らは暗く冷たい海中に息苦しくなるほどにひしめき、身を寄せ合い、群れを成して潜み、小舟の到来を冷え冷えとした視線で凝視する。
彼らは皆瞳から妖しく光を放ち、その思考の裡に何が存在するのかは杳として知れない。そして最初海の生物の体を成していた彼らの姿は、旅が続くにつれ、次第に奇怪な異形の生命たちへと変化してゆく。全てが謎めいていて、不気味であると同時に、不思議さに満ち溢れている。
これらを通し絵本『旅する小舟』は、生命の豊かさと、その不思議さと、そして美しさとを描きつくす。そして世界には、海には、まだまだ人の知らない驚異が満ち溢れていることを示唆する。これはファンタジーを描く絵本であるが、生命そのものが、実はファンタジックであるということなのだ。
素晴らしい作品でした。全てのグラフィックは見開きで描かれ、細微に渡って描かれる描線は、海の冷たさ、暖かさ、生き物たちの皮膚の肌触りまで伝わってきそうで、デフォルメされているにもかかわらず迫真ともいえる世界がそこに展開しています。開いたページにその都度吸い込まれるように見入ってしまった。いつでも好きなページを開き、そこで起こっている物語を自由に想像する、言葉が無いからこそそんなことも可能な作品でした。