オスマン帝国兵30万人対神聖ローマ軍5万人の戦いを描く歴史ドラマ〜『神聖ローマ、運命の日 オスマン帝国の進撃』

■神聖ローマ、運命の日 オスマン帝国の進撃 (監督::レンツォ・マルチネリ 2012年イタリア・ポーランド映画


1683年――ハレー彗星が凶兆のしるし見せた翌年、神聖ローマ皇帝の居城にしてオーストリアの首都である城壁都市ウィーンを、30万のオスマン帝国軍が強襲した!狙いはオスマン帝国のヨーロッパにおける覇権を確固たるものにすること。絶対の包囲網を敷くオスマン帝国大宰相カラ・ムスタファ・パシャの軍勢に対し、神聖ローマ帝国の軍勢は僅かに6万、その勝算は限りなく低かった…。その後の中央ヨーロッパ国連軍神聖同盟とオスマン帝国との趨勢すら決定付ける、「第2次ウィーン包囲」を描いた歴史巨編、イタリア・ポーランド合作映画『神聖ローマ、運命の日 オスマン帝国の進撃』である!
…とまあ、派手に盛り上げてみましたが、実の所大変残念な映画でありました…。物語の中心的な視点となるのはまず神聖ローマ帝国側を"奇跡を成す"と謳われるキリスト教修道士マルコ。このマルコさんを『アマデウス』のサリエリ役で有名なF・マーレイ・エイブラハムが演じております。そしてオスマン帝国側は大宰相カラ・ムスタファ・パシャの視点から描かれます。これをイタリアの国際俳優エンリコ・ロー・べルソという方が演じております。この二人、子供の頃になにがしかの因縁があった、ということで設定されておりますが、まあ実際、あってもなくてもいい設定です。そもそも神聖ローマ帝国側の視点が修道士ということで、キリスト教イスラム教の信仰対決を盛り込みたかったのでしょうが、「神の名において!」と悲壮に盛り上げるマルコさんに若干うんざりさせられてしまいました。
なにより、これだけ大規模な戦闘を描く歴史映画にしては予算が相当少なかったであろう雰囲気が随所に見られます。総製作費16億円ということらしいですが、申し訳ないんだけれどもどこをとってもショボイんですよ…。30万とか6万とかいう軍勢を描くのに、寄った画面ではいつも2,30人ぐらいしか写っていないんです。引きの画面では見渡す限りの兵が描かれこそすれ、それがモロにCGと分かってしまう低クオリティで、なんだか映画作品というよりはTVの特番レベルなんですよね…。このCGのクオリティの低さはそこここで仇を成していて、砲弾飛び交い爆発と破壊が描かれる戦闘シーンですらなんだかプレステ2の画面を見せられているかのようなんです。
CGクオリティは置いといても、場面場面の構成と編集が急すぎて、あれよあれよと戦闘が続くのはいいとしても、予算の都合か細かい部分は無視してごり押しで派手に盛り上げようとしているように見えてしまうんですね。上映時間2時間程度の作品で、その短さの中に歴史の一コマとなった戦いを盛り込もうとしたのはある意味頑張ったとも言えるんですが、やはりどうしても大雑把になってしまっている。実際の戦闘は2か月間あったようなんですが、映画だと1週間ぐらいの時間経過にしか見えなかったりするんですよ。そういった部分でなにしろあれこれ残念な出来ではあるんですが、神聖ローマ帝国オスマン帝国の長きにわたる戦いの一端を映像でこうして見るのはそれはそれでお勉強のひとつになりましたし、当時の兵士の甲冑などの美術を見るのは楽しかったですね。