凄腕暗殺者が暴れまわるド派手なアクション小説『エージェント17』

エージェント17 / ジョン ブロウンロウ (著), 武藤 陽生 (翻訳)

エージェント17 (ハヤカワ文庫NV)

世界で最も恐れられているエージェント“17”。“15”までの暗殺者は、そのだれもが次の番号のエージェントたちによって殺されてきたが、“16”だけは殺されることなく姿を消していた。“16”の跡を継いだ“17”の次の任務は、とある作家の暗殺。どうやら、その作家の正体は“16”らしい。激しい戦いの末、“17”が“16”から聞かされた世界を揺るがす巨大な陰謀とは。CWA賞スティール・ダガー賞受賞作。

主人公は最強の暗殺者として恐れられているエージェント17。彼はある日、引退して現在行方知れずとなっているエージェント16の抹殺を命じられる。しかしエージェント16はエージェント17以上のスキルを持つ伝説の暗殺者であり、その任務は困難を極めた。そしてエージェント17は、次第にこの指令の背後に恐るべき陰謀が存在していることに気付き始める。

暗殺者の物語というと凄腕スナイパーやスニーキングを得意とするニンジャの如き存在の活躍を想像してしまうが、本作『エージェント17』で描かれるのは雨あられと飛び交う銃弾と景気よくぶちあがる爆炎、熾烈なカーチェイスで次々と破壊されてゆく車両といった、ハリウッドの大作アクション映画を彷彿させるド派手なシーンの連続だ。狙撃や隠密行動といった暗殺者らしい描写もあることはあるが、中盤からはエクストリームなアクションシーンのつるべ打ちとなってゆくのだ。

そういった意味で、暗殺者の物語なのにやたら大っぴらに殺しまくる映画『ジョン・ウィック』シリーズを思わせるものがあるが、戦闘ヘリがミニガンを撃ちまくりRPGが全てを瓦礫の山とする本作は『ジョン・ウィック』すら超えていると言っていい。作品内でも映画作品への言及が多く、そもそもが映画的であることを念頭に置いて描かれたに違いない。緊張感や緊迫感よりもけたたましい戦闘シーンの興奮を楽しむ物語なのだ。

映画的であると同時にコミック的な物語でもある。「世界最恐のエージェント」や「暗殺者たちの闇ギルド」といった設定はコミック的な荒唐無稽さだ。主人公を始めとする登場人物たちのライトでタフな話っぷりはコミックのキャラそのものだ。彼らが感傷的に語る残酷な過去の物語も紋切り型ではあるが、その分強烈なケレン味に溢れており、これもコミック的な親しみやすさを覚えさせる。リアリティは希薄だが、次から次へと話が転がってゆく軽快なドライブ感に満ちた快作だと言っていいだろう。