深夜の森の中で狙撃手に襲われる恐怖を描くスリラー小説『夜明けまでに誰かが』

夜明けまでに誰かが / ホリー・ジャクソン (著), 服部 京子 (翻訳)

夜明けまでに誰かが (創元推理文庫)

高校生のレッドは、キャンピングカーで友人3人、お目付け役の大学生2人と春休みの旅行に出かけていた。だが人里離れた場所で車がパンク。携帯の電波は届かない。そして何者かに狙撃され、残りのタイヤと燃料タンクを撃ち抜かれてしまう。午前零時、サイドミラーにかけられたトランシーバーで、狙撃者から連絡が。その人物は6人のうちのひとりが秘密をかかえている、命が惜しければそれを明かせと要求してきた。制限時間は夜明けまで。閉ざされた空間で展開される極限の探り合いと謎解き。『自由研究には向かない殺人』の著者の新たな傑作!

大学生2人、高校生3人を乗せたキャンピングカーが、深夜の山道で立ち往生する。何者かにタイヤを狙撃されたのだ。犯人からの要求はただ一つ。「殺されたくなければ、お前たちの中の誰かが抱える秘密を白状しろ」──。突如として極限状態に陥った車内の5人は、疑心暗鬼に陥り互いを疑い始める。これは、閉鎖空間で展開されるスリラーサスペンスだ。

まず気になったのは、その不自然な状況設定だ。極限状態を作り出したい意図はわかるものの、作り上げられた状況があまりにも現実離れしている。そもそも、犯人が「秘密」を白状させるためだけに、これほど複雑で不確定要素の多い手段を用いるのは理解しがたい。計画全体が偶然に頼りすぎているように感じられ、リアリティを損なっているのだ。

また、登場人物の多くがティーンエイジャーということもあり、彼らの言動や危機に対する反応が終始幼稚に映る。感情吐露の在り方も紋切り型で、主人公の抱えるトラウマや、突如性格の豹変する友人の描写などがあまりに単純に思えた。作品がヤングアダルト向けだと後から知ったが、その前にこの点に辟易し、物語に没入しきれなかったのは残念だ。

しかし、評価すべき点も多い。状況設定には違和感があるものの、サスペンスの盛り上げ方は非常に巧みだ。「事件の真相」や、それに伴って急転する人間関係、そして驚愕の事実など、ストーリーの中核をなす部分は見事に描かれている。ベストセラー作家としての力量を随所に感じることができた。ラストはやや都合がよく、甘いと感じるが、読者層を考慮すれば妥当な着地と言えるだろう。全体として設定の粗さが目につくものの、真相解明までの緻密な展開は読み応えがあった。