映画『M3GAN ミーガン2.0』:ホラーの殻を破り、SFアクションとして進化を遂げた愛すべき快作

M3GAN ミーガン2.0(Amazon Prime Video)(監督:ジェラルド・ジョンストン 2025年アメリカ映画)

最先端の子守りアンドロイド、ミーガンが殺戮を引き起こすSFホラー作品『M3GAN ミーガン』の続編である本作は、破壊されたはずのミーガンが軍事アンドロイド・アメリアの暴走を阻止するために再生され、前作の登場人物たちを巻き込みながら巨大な陰謀と対峙するという物語だ。

前作の「殺戮アンドロイドが暴れまわる」というSFホラーの枠組みから、本作はアンドロイド同士の対決を軸としたSFアクションへと見事に舵を切り、全く異なる魅力を放つ作品となっている。ホラー風味を期待するファンには戸惑いがあるかもしれないが、前作がすでに真摯なAIテーマのSF作品であったと考えるなら、この方向転換は非常に理にかなったものと映るだろう。

なぜなら、1作目のミーガンは実は暴走したのでも、人間に対する叛乱を起こしたのでもないのだ。彼女はプログラムに忠実に従ったばかりに結果的に殺戮を招いたのであり、それはテクノロジーの運用方法や、それを行う人間の倫理的な問題を描いた作品だったからだ。事実、この2作目においてミーガンは「前回は人間のプログラムに従っただけだ」と明確に言及している。だからこそ1作目は秀逸なAIテーマのSF作品として評価できるのだ。

さらに本作では、「人格データを多様な個体やネットワークに転移させ、物理的な身体(ミーガン筐体)に依存しないAIミーガンが活躍する」という、実に先鋭的なSFアイデアが盛り込まれている。この"ゴーストの領域"に踏み込む展開は、押井守監督のアニメ作品『攻殻機動隊』続編になる『イノセンス』にも通じるものがあり、先鋭的なSF作品として楽しめる大きなポイントとなっている。

そして何より、前作でユニークなホラーアイコンを確立したミーガンが、文字通り「やりたい放題」に大暴れする様こそが、本作最大のエンターテイメントだ。「どこのお嬢様だよ!」と思わせるミーガンの高ピーな態度と言動は実にコミカルでニマニマが止まらないし、ミーガンコスプレやミーガンダンスといったサービス精神旺盛なシーンも大いに楽しませてくれる。そしてなにより、ターミネーターさながらの「戦闘ロボ・ミーガン」のアクションには惚れ惚れとさせられる。

これらは一見「悪ノリ」にも映るが、実はこの「やりたい放題」こそが本作の根幹にあるテーマではないだろうか。製作サイドは、ホラー展開からSFアクションへの変換に際し、硬質なSF大作ではなく、ミーガンというキャラクターの魅力を120%活かしきった痛快な娯楽作品として本作を完成させたかったのだ。ストロング&タフに暴れまわるミーガンの雄姿からは、作り手の強いメッセージが伝わってくる。

というわけで大いに楽しめた『M3GAN ミーガン2.0』。本国での興行不振や日本での公開中止といったネガティブなニュースが喧伝されてはいるものの、本作はエンターテイメント作品としての魅力を最大限に詰め込んでおり、ネガティブな報道を吹き飛ばすほどの「愛すべき快作」に仕上がっていることは間違いない。オレは大好きだ。だから早く4KUHDソフトを出しなさい。絶対買うから。

※前作の感想はこちら

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