おばけ浮世絵とルドンの怪奇絵を見てきたのだ

金曜日は夏休みだったので、暑い中、おばけ浮世絵とルドンの怪奇絵を見てきたのだよ。

■《AYAKASHI 江戸の怪し−浮世絵の妖怪・幽霊・妖術使たち−》 浮世絵太田記念美術館 (8/26まで)
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/dis0708.html
おばけ浮世絵は七月にも一回行った、浮世絵専門に収集している原宿の太田記念美術館でやっておりました。鬼や妖怪が中心でしたが、結構楽しい絵も多かったですね。浮世絵は基本的に大衆芸術ですから、当時のマンガや雑誌のグラビアぐらいの位置付けで見るのが一番じゃないかと。庶民の為に大量生産されたものと、金持ちのパトロン付きで描かれたものとで分かれるとは思いますが、勿論マンガでもアートの域まで達するものがあるように、浮世絵も優れて芸術的な作品もあった、ぐらいの視点で見るほうが楽しめるんじゃないかな。それにしても画力のある絵師の筆のものは描線といい構図といい、緊張感と動きのある優れた一枚絵(というか版画ですが)として完成されていて、しかし題材は限りなく俗であったりするんですね。月岡芳年の「羅生門渡辺綱鬼腕斬之図」(↓参照)なんて凄い構図と構成だよ。あと歌川広重の「名所江戸百景 王子装束ゑの木大晦日の狐火」(↓参照)や「東都飛鳥山の図 王子道狐のよめ入」などは以前からどこかで目にしていた作品だったから、現物を見られたのは嬉しかったな。



■《ルドンの黒 眼をとじると目に見えてくる異形の友人たち》 Bunkamuraザ・ミュージアム (8/26まで)
http://www.bunkamura.co.jp/shokai/museum/lineup/07_redon/
太田記念美術館を出て歩いて渋谷へ。途中タワレコでレゲエのCDを買いつつ、Bunkamuraザ・ミュージアムに行きました。ここではルドンの真っ黒いリトグラフがいっぱい並べられていたよ。それにしてもホントに黒い。ポスターにもなっている黒い蜘蛛なんかそのまんま《真っ黒くろすけ》じゃないですか。展示の解説などをつらつらと読むと、ルドンは当時のフランスの世相、そして文学や博物学などに多く影響されて作品を作り出したということらしいけれど、むしろ現実世界からは目を背けて、心の中の小宇宙をコツコツと描き続けてきた人だったのだなあ、という気がした。展示コンセプトの為後期の色彩豊かなパステル画などはあまり無かったけれど、真っ黒な版画が老年になってから色鮮やかな絵に変わってゆく、というのも一人の人間の精神史を見るようで面白かったな。ただね、ず〜と真っ黒な絵ばかりだと段々飽きてきたのは確かだ!